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質量/物語
2004年発売の空の軌跡からかれこれ13年。軌跡シリーズとしては8作目となる。
続編物なので閃の軌跡1〜2のプレイは必須。ストーリー重視のゲームなので、3からやるのは明らかに無謀。漫画や小説を途中の巻から読むようなものなので。
主人公リィンも続投なので、過去作をやっているかどうかで感情移入度が全然違うと思う。
空の軌跡、零&碧の軌跡のキャラがたくさん登場するのもファン感涙。
特に零&碧の舞台となったクロスベル市も大きく関わってくるので、あちらもできればプレイしておきたい。空の軌跡1〜3も、思ったより関わって来るのでできれば。
トールズ士官学院を卒業したリィンは、新設された分校の教官として赴任することになる。
中心となるのが新VII組の生徒達5人であり、感覚は閃1に近い。同じことを繰り返している感はあれど、マンネリ感の漂っていた閃2よりも新鮮に遊べるようになっている。
とはいうものの、登場人物の大半が既存キャラなのも事実。主要の新キャラ4人や学院関係のキャラを除けば、ほとんどが再登場だと思ってもよいくらい。
再登場組では、生徒となるアルティナやオーレリア分校長など前作で掘り下げの薄かったキャラにも大きくスポットが当てられている。アルティナに至っては、ほとんどメインヒロイン級の扱いだったのが驚き。
個人的によかったのは、過去作のサブイベントに関連した生徒達が社会人となって再登場したこと。『個性のあるモブ』くらいのポジションだった彼らが、声付きのイベントシーンで登場してくる。
過去作で会話をしっかり聞いていたプレイヤーなら、感激できると思う。そうでないプレイヤーにとっては「こいつ誰だっけ?」状態になる可能性もあるけど……。
キャラクター同士のやり取りは相変わらず充実しており、掘り下げも丁寧。
新しい環境で四苦八苦している主人公が、過去の仲間達と再会するシーンはとても感慨深いものがある。
学院や町での会話も、いつも以上に細かく作り込まれている。マップを一通り回って、主要人物の会話を聞くだけで数時間が過ぎていたり。
ストーリーが進行したらまたサブイベントが刷新されたりで、これまた相当な量になっている。
サブイベントの大半をこなすようなプレイスタイルで、クリアまで丁度100時間(難易度はノーマル)もかかった。※ただし、料理などは面倒だったので放置。
閃1〜2はそこまでかからなかったので、ボリュームが増してるかもしれない。
……で、そこまではよかったのだけど、ストーリーの本筋には色々と問題も。
まず気になったのはテンプレ描写の異様な多さ。散々突っ込まれた閃の軌跡2を上回る勢いである。
閃の軌跡3テンプレの数々
- ピンチになると毎度助っ人が来てくれる。
「リィン、助けに来たぞ!」
- 敵キャラはまず最初から本気を出さない。
戦闘でどれだけフルボッコにしても、敵キャラは余裕しゃくしゃく。
「少しはやるようだが、その程度で俺は倒せん」
- 敵であろうと名前付きのキャラが死ぬことは滅多にない。
敵キャラを何度倒しても退場してくれない。神速のデュバリィとか何回目よ?
- 人間での戦いが終われば騎神を召喚。とってつけたようにロボ戦が始まる。
「来い、ヴァリマール!」
- ただし、騎神召喚と見せかけて助っ人が入るパターンも多数。
「来い、ヴァリマール!」「その必要はない」
- 第三者が遠くから高みの見物をしている。
「あれが噂にあったVII組の連中か……。少しは楽しませてくれそうだな」
- 実力者はその第三者の気配を感じ取れる。
「フッ、どうやら観客が来ているようだね」
- やたらと察しがよい登場人物。基本的に「察しのよさ=キャラの格」である。
「君達はトールズ士官学院の者だね?」「えっ、どうしてそれを!?」
- 会話が気まずい時は「あ……(察し)」が基本。
「俺の親父は五年前に死んだんだ」「あ……」みたいな感じで使う。
他にも意表を突かれた時など、様々な場面で多用する。
- 主人公リィンはとりあえずモテる。好意を寄せるキャラは一桁に留まらない。
特に妹・皇女・ミュゼの三人娘の描写はかなりクドい。
ここまでくると、もはやネタとしてやっているのかもしれない。
なお、実際のイベントは↓こんな感じになる。
ボス「よく来たな。かかってこい」
主人公「みんな、行くぞ!」
(ボス戦)
ボス「まだまだだな。そろそろ本気を出すとしよう」
(ボス第二形態)
主人公「くっ、手強い……!」
(ノーダメージの楽勝でも膝をついて苦戦した雰囲気)
ボス「なかなかやるな。だがこれで条件はそろったぞ! 来い神機!」
(敵のロボ登場)
主人公「くっ、このままではやられる」
助っ人「助けに来たぞ!」
主人公「みんなありがとう。今だ、騎神召喚!」
(味方のロボ登場で騎神戦)
ボス「思ったよりやるが、想定の範囲内だ。ところでそこに誰か隠れているな?」
主人公「なに!?」
(どこからともなく現れる謎の第三者)
第三者「ふっ、私の存在によくぞ気づいた」
主人公「いったい何者なんだ!?」
第三者「相手をしてやりたいところだが、今日は顔見せなので、この辺にしておいてやろう。さらばだ」
ボス「俺も用事は済んだので、さらばだ」
主人公「待て、質問に答えろ!」
やや極端に書いたけど、全体的にこんな感じのイベントが多め。一イベントに詰め込んでいる上に、展開がテンプレかつ決着もつかない、しかも謎は明かさないのでグダグダしている印象を受けた。
序盤は敵味方ともに怒涛の勢いで人物が登場。多人数の入り乱れる派手なイベントが展開する。……のだけど、冷静になれば、みんな思わせぶりなことを言っているだけで、ロクに話が進んでないなんてことも。
話を引っ張りまくるシナリオの都合上、すっきりとした解決がなされることが少ない。
そうやって、後半まで同じような展開を繰り返す。何をやっても、誰かの手の平の上という感覚も否定できない。
脇の会話はよくできているのに、肝心な部分が色々とまずい。ライターの得意不得意があるのか、分業しているせいなのか……。随分と出来不出来に差がある印象。
そして、軌跡シリーズといえば、半端な終わり方をすることで悪名高い。
本作はどうかというと――今までにも増して酷いの一言。
上記のように何十時間にも渡って「進んでいるような、いないような展開」を繰り返すが、後半になってようやく話が進み出す。閃1〜2で広げた風呂敷を、少しずつ畳む兆候が見えてきて、盛り上がってくる。
ラストダンジョンで全てが明かされるのか――と、半信半疑に期待したが、案の定そうはならなかった。
まさしくぶった斬り。
「100時間かけてこれか!」と、中途な終わりを覚悟していた僕ですら唖然となった。
閃1,2も酷かったけど、今回はそれを軽く上回るレベル。
起承転結で言えば、転で終わる。DQ11で言えば、本編中盤ぐらいの山場で突如終わるような感じ。
というか、中盤までのダラダラした展開を省けば一息に終わりまで持っていけたんじゃないだろうか。
キャラは魅力的だし話の先も気になる分、実にタチが悪い。
システム/バランス/快適性
ロードに悩まされることはほとんどなく、特に戦闘開始は本当に一瞬。戦闘アニメーションのスキップなども旧作同様に完備されている。
今回は多くの場面で□ボタンによって移動をショートカットできる。街道を行ったり来たりさせられることは少なくなった。
戦闘システム
見てくれは閃1〜2と大差ないものの、主に三つの新システムがある。
一つ目はサブのマスタークオーツ。
強力な効果を持つマスタークオーツを、一人につき二つまで装備できるようになった。二つ目のマスタークオーツは効果が下がるものの、組み合わせによって今までよりもカスタマイズに幅ができる。
他のゲームに時折あるサブ職業的なものと思って頂ければ。
……で、これまたここまではよかったのだけど、問題は残り二つ。これらが恐るべきバランスブレイカーになっている。
二つ目は『ブレイク』。
敵にダメージを蓄積すると、動きが止まってフルボッコにできるようになる。要するにまんまFF13。
このブレイク状態の敵に攻撃すると、戦術リンク(追撃)が確実に発動する。また、この時にBPというポイントが溜まる。
そして三つ目は『ブレイブオーダー』。
上述のBPを消費して、全体へ補助をかけるというもの。
これがとんでもなく凶悪で……
- 敵のあらゆる攻撃を反射する。
- 素早さ三倍強に加速。
- ブレイク率を+300%強化。
- 即時に全員へターンが回る。
- EP消費1/5。
といったとんでもない効果になっている。
効果時間はそれほど長くないのだが、それでも凄まじいバランスブレイカー。
具体的にこれでどんな戦術が成り立つかというと……
- ブレイク強化のオーダーで敵を一気にブレイクする。
- 動きが止まった敵を加速のオーダーでフルボッコ。消費したBPもすぐ回復。
- ようやく立て直した敵をブレイク強化のオーダーで(略)。
このような流れで「ずっと俺のターン」ができてしまう。
というか、大抵のボス戦は2.の時点で終わってしまう始末。
味方の強化に対抗するためか、今作の敵は少し強めに設定されている。そのため、序盤は意外と苦戦させられたりする。
もっとも、それは序盤だけ。中盤からは味方の強化がそれを遥かに上回る。
中盤以降の戦闘は、ザコ戦はもちろんボス戦もノーダメージに近い楽勝がほとんどだった。
というか、ラスボス(騎神戦じゃないほう)がノーダメージで楽勝できてしまった。
それでいて、HPが減れば強力な攻撃をしかけてくるボスが多い。半端な攻撃をすれば反撃で一気にやられることも。
そのため、なおのこと敵にターンを回さずハメ殺す戦術が定石となってしまう。
閃2も極端だったけど、今回はそれ以上。もはや難しいとか簡単とかいう次元ではなく、「これもうバランス取る気ないよね?」というレベル。
- 敵が動く前にフルボッコ。敵の個性も全然分からない。
- 属性も気にせず無属性でフルボッコ。
- 敵の攻撃に対して対処を考える必要もない。防御も回復もいらない。
- BPが溜まらないのでアーツ(術)も不要。クラフト(技)だけでよい。
お陰でただ突き進むだけの場面が多くなってしまう。戦闘システムは凝っているはずなのに、実際のプレイ感覚はなんだか単調。
なんというか、RPGのよさってゲームシステムとストーリーの相乗効果にあると思うわけでして。
- ストーリー上の宿敵はやはり手強い。
- 嫌らしい性格のボスは、嫌らしい攻撃をしてくる。
- 敵は炎の使い手なので、水魔法で対抗すべき。
……というようなゲーム性とストーリーの一体感が得られないのは、もったいなく思えた。
どんな鳴り物入りで現れたボスも、一方的にボコれるのだから盛り上がらない。継ぎ足し過ぎたシステムが返って遊びの幅を狭めていると感じた。
ストーリー重視のゲームだし、ヌルゲーならヌルゲーでも構わないと思う。けれど、敵の個性すら感じられないバランスは、ちょっと違うんじゃないかと。
その他で気になったこと。
- 戦術リンクの重要性が大幅に増加した結果、演出テンポの悪さも無視できなくなった。
- 騎神戦は相変わらず地味。一応、閃2よりもよくなっている気がするけれど、それでも面白いかと言われれば……。
- わりと早いうちに色々と頭打ちになってしまう。
マスタークオーツのレベルがクリアよりかなり早くMAXに。中盤で覚えた技が、そのまま最後の技とは……。
- カスタマイズが複雑なシステムなのに、イベントでパーティ強制変更を強要される。それなりの長期間だったらいいのだけど、後半はわりと頻繁にある。
愛用していたキャラがラスダンで抜けたのには困った。
- 戦闘中、画面右側の文字表示(HP、EP、CPなど)が妙に小さくて困る。FF15もそうだけど、これでなんでOKを出してしまったの。大画面で至近距離からやる想定なんですかね?
美術
PS3→PS4に機種が変わったとはいえ、大きく変わった印象はない。
ただ比べてみると明らかに綺麗になっている。頭身の上がった仲間達を見れば、成長を実感できるかもしれない。
また表情の表現も進歩している。よく使われるジト目が印象的。
ただ相変わらず、(汗)(!)などのアイコンによる感情表現を、多用しているのが気になった。SFC時代じゃあるまいし、時には表情とセリフだけで見せてもよかったんじゃないかなと。
音楽
個人的には、要所で碧の軌跡や閃の軌跡2などのボス戦曲(アレンジ?)が使われていたのが嬉しかった。もっとも肝心のボス戦内容がアレなので、相乗効果が足りないかもしれない。
戦闘以外だとオープニングの海上要塞とか。ファルコム節の炸裂するラストダンジョンなどが良曲。
総評
- 長いのになかなか進まないストーリー。
- 必要性のよく分からないダンジョン(主にアインヘル小要塞)。
- 重要度の低いサブクエスト。
- 地味な削り合いになりやすい機甲兵教練。
- 戦闘周りの過剰なシステム。
この作品に関しては、削るところを削れば、もっと面白くできたんじゃないかと感じる。DQ11のように『引き算』のできる開発者がいれば――とつくづく。
色々と不満はありながらも楽しめたのは事実。個人的には神ゲー要素も多いと思っているので、次に期待もしています。
けれど、終わり方だけは擁護できず。1レビュアーとしては、とても万人には勧められない。
ただエンディングの表示によれば、次の4こそがようやく帝国編の最後になりそう。半端に終わるのが嫌な人は待ったほうがいいと思う。かなりモヤモヤする終わり方なので。