【RPGレビュー】英雄伝説 閃の軌跡3

2017年11月08日


発売元日本ファルコム(公式)
機種PS4
発売日2017/09/28
質量物語システムバランス快適性美術音楽平均クリア日
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質量/物語


 2004年発売の空の軌跡からかれこれ13年。軌跡シリーズとしては8作目となる。
 続編物なので閃の軌跡1〜2のプレイは必須。ストーリー重視のゲームなので、3からやるのは明らかに無謀。漫画や小説を途中の巻から読むようなものなので。
 主人公リィンも続投なので、過去作をやっているかどうかで感情移入度が全然違うと思う。

 空の軌跡、零&碧の軌跡のキャラがたくさん登場するのもファン感涙。
 特に零&碧の舞台となったクロスベル市も大きく関わってくるので、あちらもできればプレイしておきたい。空の軌跡1〜3も、思ったより関わって来るのでできれば。

 トールズ士官学院を卒業したリィンは、新設された分校の教官として赴任することになる。
 中心となるのが新VII組の生徒達5人であり、感覚は閃1に近い。同じことを繰り返している感はあれど、マンネリ感の漂っていた閃2よりも新鮮に遊べるようになっている。
 とはいうものの、登場人物の大半が既存キャラなのも事実。主要の新キャラ4人や学院関係のキャラを除けば、ほとんどが再登場だと思ってもよいくらい。
 再登場組では、生徒となるアルティナやオーレリア分校長など前作で掘り下げの薄かったキャラにも大きくスポットが当てられている。アルティナに至っては、ほとんどメインヒロイン級の扱いだったのが驚き。

 個人的によかったのは、過去作のサブイベントに関連した生徒達が社会人となって再登場したこと。『個性のあるモブ』くらいのポジションだった彼らが、声付きのイベントシーンで登場してくる。
 過去作で会話をしっかり聞いていたプレイヤーなら、感激できると思う。そうでないプレイヤーにとっては「こいつ誰だっけ?」状態になる可能性もあるけど……。

 キャラクター同士のやり取りは相変わらず充実しており、掘り下げも丁寧。
 新しい環境で四苦八苦している主人公が、過去の仲間達と再会するシーンはとても感慨深いものがある。
 学院や町での会話も、いつも以上に細かく作り込まれている。マップを一通り回って、主要人物の会話を聞くだけで数時間が過ぎていたり。
 ストーリーが進行したらまたサブイベントが刷新されたりで、これまた相当な量になっている。
 サブイベントの大半をこなすようなプレイスタイルで、クリアまで丁度100時間(難易度はノーマル)もかかった。※ただし、料理などは面倒だったので放置。
 閃1〜2はそこまでかからなかったので、ボリュームが増してるかもしれない。

 ……で、そこまではよかったのだけど、ストーリーの本筋には色々と問題も。
 まず気になったのはテンプレ描写の異様な多さ。散々突っ込まれた閃の軌跡2を上回る勢いである。

閃の軌跡3テンプレの数々

  • ピンチになると毎度助っ人が来てくれる。
    「リィン、助けに来たぞ!」
  • 敵キャラはまず最初から本気を出さない。
    戦闘でどれだけフルボッコにしても、敵キャラは余裕しゃくしゃく。
    「少しはやるようだが、その程度で俺は倒せん」
  • 敵であろうと名前付きのキャラが死ぬことは滅多にない。
    敵キャラを何度倒しても退場してくれない。神速のデュバリィとか何回目よ?
  • 人間での戦いが終われば騎神を召喚。とってつけたようにロボ戦が始まる。
    「来い、ヴァリマール!」
  • ただし、騎神召喚と見せかけて助っ人が入るパターンも多数。
    「来い、ヴァリマール!」「その必要はない」
  • 第三者が遠くから高みの見物をしている。
    「あれが噂にあったVII組の連中か……。少しは楽しませてくれそうだな」
  • 実力者はその第三者の気配を感じ取れる。
    「フッ、どうやら観客が来ているようだね」
  • やたらと察しがよい登場人物。基本的に「察しのよさ=キャラの格」である。
    「君達はトールズ士官学院の者だね?」「えっ、どうしてそれを!?」
  • 会話が気まずい時は「あ……(察し)」が基本。
    「俺の親父は五年前に死んだんだ」「あ……」みたいな感じで使う。
    他にも意表を突かれた時など、様々な場面で多用する。
  • 主人公リィンはとりあえずモテる。好意を寄せるキャラは一桁に留まらない。
    特に妹・皇女・ミュゼの三人娘の描写はかなりクドい。

 ここまでくると、もはやネタとしてやっているのかもしれない。
 なお、実際のイベントは↓こんな感じになる。
 ボス「よく来たな。かかってこい」
 主人公「みんな、行くぞ!」
 (ボス戦)
 ボス「まだまだだな。そろそろ本気を出すとしよう」
 (ボス第二形態)
 主人公「くっ、手強い……!」
 (ノーダメージの楽勝でも膝をついて苦戦した雰囲気)
 ボス「なかなかやるな。だがこれで条件はそろったぞ! 来い神機!」
 (敵のロボ登場)
 主人公「くっ、このままではやられる」
 助っ人「助けに来たぞ!」
 主人公「みんなありがとう。今だ、騎神召喚!」
 (味方のロボ登場で騎神戦)
 ボス「思ったよりやるが、想定の範囲内だ。ところでそこに誰か隠れているな?」
 主人公「なに!?」
 (どこからともなく現れる謎の第三者)
 第三者「ふっ、私の存在によくぞ気づいた」
 主人公「いったい何者なんだ!?」
 第三者「相手をしてやりたいところだが、今日は顔見せなので、この辺にしておいてやろう。さらばだ」
 ボス「俺も用事は済んだので、さらばだ」
 主人公「待て、質問に答えろ!」

 やや極端に書いたけど、全体的にこんな感じのイベントが多め。一イベントに詰め込んでいる上に、展開がテンプレかつ決着もつかない、しかも謎は明かさないのでグダグダしている印象を受けた。

 序盤は敵味方ともに怒涛の勢いで人物が登場。多人数の入り乱れる派手なイベントが展開する。……のだけど、冷静になれば、みんな思わせぶりなことを言っているだけで、ロクに話が進んでないなんてことも。
 話を引っ張りまくるシナリオの都合上、すっきりとした解決がなされることが少ない。
 そうやって、後半まで同じような展開を繰り返す。何をやっても、誰かの手の平の上という感覚も否定できない。

 脇の会話はよくできているのに、肝心な部分が色々とまずい。ライターの得意不得意があるのか、分業しているせいなのか……。随分と出来不出来に差がある印象。

 そして、軌跡シリーズといえば、半端な終わり方をすることで悪名高い。
 本作はどうかというと――今までにも増して酷いの一言。

 上記のように何十時間にも渡って「進んでいるような、いないような展開」を繰り返すが、後半になってようやく話が進み出す。閃1〜2で広げた風呂敷を、少しずつ畳む兆候が見えてきて、盛り上がってくる。
 ラストダンジョンで全てが明かされるのか――と、半信半疑に期待したが、案の定そうはならなかった。
 まさしくぶった斬り。
「100時間かけてこれか!」と、中途な終わりを覚悟していた僕ですら唖然となった。
 閃1,2も酷かったけど、今回はそれを軽く上回るレベル。
 起承転結で言えば、転で終わる。DQ11で言えば、本編中盤ぐらいの山場で突如終わるような感じ。
 というか、中盤までのダラダラした展開を省けば一息に終わりまで持っていけたんじゃないだろうか。

 キャラは魅力的だし話の先も気になる分、実にタチが悪い。

システム/バランス/快適性


 ロードに悩まされることはほとんどなく、特に戦闘開始は本当に一瞬。戦闘アニメーションのスキップなども旧作同様に完備されている。
 今回は多くの場面で□ボタンによって移動をショートカットできる。街道を行ったり来たりさせられることは少なくなった。

戦闘システム

 見てくれは閃1〜2と大差ないものの、主に三つの新システムがある。

 一つ目はサブのマスタークオーツ。
 強力な効果を持つマスタークオーツを、一人につき二つまで装備できるようになった。二つ目のマスタークオーツは効果が下がるものの、組み合わせによって今までよりもカスタマイズに幅ができる。
 他のゲームに時折あるサブ職業的なものと思って頂ければ。

 ……で、これまたここまではよかったのだけど、問題は残り二つ。これらが恐るべきバランスブレイカーになっている。

 二つ目は『ブレイク』。
 敵にダメージを蓄積すると、動きが止まってフルボッコにできるようになる。要するにまんまFF13。
 このブレイク状態の敵に攻撃すると、戦術リンク(追撃)が確実に発動する。また、この時にBPというポイントが溜まる。

 そして三つ目は『ブレイブオーダー』。
 上述のBPを消費して、全体へ補助をかけるというもの。
 これがとんでもなく凶悪で……

  • 敵のあらゆる攻撃を反射する。
  • 素早さ三倍強に加速。
  • ブレイク率を+300%強化。
  • 即時に全員へターンが回る。
  • EP消費1/5。

 といったとんでもない効果になっている。
 効果時間はそれほど長くないのだが、それでも凄まじいバランスブレイカー。

 具体的にこれでどんな戦術が成り立つかというと……

  1. ブレイク強化のオーダーで敵を一気にブレイクする。
  2. 動きが止まった敵を加速のオーダーでフルボッコ。消費したBPもすぐ回復。
  3. ようやく立て直した敵をブレイク強化のオーダーで(略)。

 このような流れで「ずっと俺のターン」ができてしまう。
 というか、大抵のボス戦は2.の時点で終わってしまう始末。

 味方の強化に対抗するためか、今作の敵は少し強めに設定されている。そのため、序盤は意外と苦戦させられたりする。
 もっとも、それは序盤だけ。中盤からは味方の強化がそれを遥かに上回る。
 中盤以降の戦闘は、ザコ戦はもちろんボス戦もノーダメージに近い楽勝がほとんどだった。
 というか、ラスボス(騎神戦じゃないほう)がノーダメージで楽勝できてしまった。
 それでいて、HPが減れば強力な攻撃をしかけてくるボスが多い。半端な攻撃をすれば反撃で一気にやられることも。
 そのため、なおのこと敵にターンを回さずハメ殺す戦術が定石となってしまう。

 閃2も極端だったけど、今回はそれ以上。もはや難しいとか簡単とかいう次元ではなく、「これもうバランス取る気ないよね?」というレベル。

  • 敵が動く前にフルボッコ。敵の個性も全然分からない。
  • 属性も気にせず無属性でフルボッコ。
  • 敵の攻撃に対して対処を考える必要もない。防御も回復もいらない。
  • BPが溜まらないのでアーツ(術)も不要。クラフト(技)だけでよい。

 お陰でただ突き進むだけの場面が多くなってしまう。戦闘システムは凝っているはずなのに、実際のプレイ感覚はなんだか単調。
 なんというか、RPGのよさってゲームシステムとストーリーの相乗効果にあると思うわけでして。

  • ストーリー上の宿敵はやはり手強い。
  • 嫌らしい性格のボスは、嫌らしい攻撃をしてくる。
  • 敵は炎の使い手なので、水魔法で対抗すべき。

 ……というようなゲーム性とストーリーの一体感が得られないのは、もったいなく思えた。
 どんな鳴り物入りで現れたボスも、一方的にボコれるのだから盛り上がらない。継ぎ足し過ぎたシステムが返って遊びの幅を狭めていると感じた。

 ストーリー重視のゲームだし、ヌルゲーならヌルゲーでも構わないと思う。けれど、敵の個性すら感じられないバランスは、ちょっと違うんじゃないかと。


 その他で気になったこと。

  • 戦術リンクの重要性が大幅に増加した結果、演出テンポの悪さも無視できなくなった。
  • 騎神戦は相変わらず地味。一応、閃2よりもよくなっている気がするけれど、それでも面白いかと言われれば……。
  • わりと早いうちに色々と頭打ちになってしまう。
    マスタークオーツのレベルがクリアよりかなり早くMAXに。中盤で覚えた技が、そのまま最後の技とは……。
  • カスタマイズが複雑なシステムなのに、イベントでパーティ強制変更を強要される。それなりの長期間だったらいいのだけど、後半はわりと頻繁にある。
    愛用していたキャラがラスダンで抜けたのには困った。
  • 戦闘中、画面右側の文字表示(HP、EP、CPなど)が妙に小さくて困る。FF15もそうだけど、これでなんでOKを出してしまったの。大画面で至近距離からやる想定なんですかね?

美術


 PS3→PS4に機種が変わったとはいえ、大きく変わった印象はない。
 ただ比べてみると明らかに綺麗になっている。頭身の上がった仲間達を見れば、成長を実感できるかもしれない。

 また表情の表現も進歩している。よく使われるジト目が印象的。
 ただ相変わらず、(汗)(!)などのアイコンによる感情表現を、多用しているのが気になった。SFC時代じゃあるまいし、時には表情とセリフだけで見せてもよかったんじゃないかなと。

音楽


 個人的には、要所で碧の軌跡や閃の軌跡2などのボス戦曲(アレンジ?)が使われていたのが嬉しかった。もっとも肝心のボス戦内容がアレなので、相乗効果が足りないかもしれない。

 戦闘以外だとオープニングの海上要塞とか。ファルコム節の炸裂するラストダンジョンなどが良曲。

総評


  • 長いのになかなか進まないストーリー。
  • 必要性のよく分からないダンジョン(主にアインヘル小要塞)。
  • 重要度の低いサブクエスト。
  • 地味な削り合いになりやすい機甲兵教練。
  • 戦闘周りの過剰なシステム。

 この作品に関しては、削るところを削れば、もっと面白くできたんじゃないかと感じる。DQ11のように『引き算』のできる開発者がいれば――とつくづく。

 色々と不満はありながらも楽しめたのは事実。個人的には神ゲー要素も多いと思っているので、次に期待もしています。
 けれど、終わり方だけは擁護できず。1レビュアーとしては、とても万人には勧められない。
 ただエンディングの表示によれば、次の4こそがようやく帝国編の最後になりそう。半端に終わるのが嫌な人は待ったほうがいいと思う。かなりモヤモヤする終わり方なので。
posted by 砂川赳 at 23:04 | RPGレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【RPGレビュー】ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて

2017年08月08日

発売元スクウェア・エニックス(公式)
機種PS4
発売日2017/07/29
質量物語システムバランス快適性美術音楽平均クリア日
1009080807010080862017/08/07

 3DS版との同時発売だが、筆者はPS4版でプレイ。ちなみに、前作に当たるオンラインのDQ10は未プレイで書いているので、前提として注意を。

質量/物語


 クエストを全てこなしながら、本編クリアまで66時間。
 さらには裏ボス撃破まで90時間と、シリーズではDQ7以来のプレイ時間だった。サブイベントを全てこなせば、100時間は遊べるかもしれない。マップが広大ということもあるけれど、同系統のDQ8を凌駕する質量がある。
 本編が呆気なく終わったDQ9と比較して、その倍ぐらいの規模はあるかも。正直言って、ここまで作り込んでくるとは思わなかった。

 ストーリーとしては、久々となる主人公が勇者のドラクエ。それも今回は、序盤から主人公が勇者であることが明示されている。この種の設定は何気にファミコンのDQ4以来となる。

 DQ6以降、起伏の控えめなストーリーが続いていた本シリーズだけど、今回は印象の強いイベントが多かった。
 特に仲間達に関わるイベントが充実しており、魅力的な仲間達との冒険を演出してくれている。主人公の頼れる相棒カミュ、それぞれ重要な役割を果たすベロニカとセーニャの姉妹、オネエキャラながら芯の強いところを見せるシルビア。
 ……などなど、キャラクター性は過去のドラクエのどれよりも高い。王道のドラクエにしては珍しく、先が気になるストーリーになっている。

 ネタバレを徹底的に避けていた甲斐もあって、本編後半の展開には驚かされた。本作ではこの辺りのストーリーが最も強く印象に残った。

 クリア後の裏面も相当な量がある。物語的に大きな伏線回収がなされるため、クリア後も実質的な本編と言えるかもしれない。
 ただし、そこからは急激に水で薄めたような内容になるのが難点。一度クリアしたダンジョンを再度もぐらせるようなものが多く、イベント内容も急に味気なくなる。
 ネタバレになるので詳しく書けないけれど、充実した本編との落差で少しばかり寂しい気分になった。裏面突入時は展開の壮大さもあって、ワクワクしたのだけど……。

 何はともあれ、真エンドの演出はシリーズファンをうならせるものがある。性質上、今回は裏ボスまで倒さない限りストーリーを終えたことにはならない。

システム/バランス/快適性


戦闘

 進化してはいるけれど、いつものドラクエ。昔ながらのコマンド式。
 古臭いという意見もあるけれど、ドラクエはこれでよいと思う。

 例えば、アクション式だと主人公一人しか操作できないことが多い。
 対して、コマンド式は仲間全員へ指示できるため、細かい戦術も可能となる。仲間を操作するために、愛着が湧きやすいことも利点となる。
 また、リアルタイム性がないため、気を抜いて気楽にできることも大きい。作戦を指示してAIに任せるも、自分で操作するも、プレイスタイルは自由。
 そう考えてみれば、古典的でありながら、意外と今の時代に合っているような気もしないでもない。
 ……というように、コマンド式を愛好する側から擁護してみた。

 変わったところでは、コマンド入力と行動がターンでまとめてではなく、一人ずつ実行されるようになった。
 どうやらPS4版だけの仕様らしく、最初はこれにとまどった。
「まさか、CTBか何かになって、ターン制ではなくなったのか?」
 と、疑って検証してみたけれど、やっぱり行動順序はターン制のままだった。
 相変わらず行動順序にランダム性があるため、運が悪いと連続でボスの攻撃を喰らってしまうことも。この辺りのルールは少し分かりにくいと感じた。

 また、ダメージを受けてターンが回ってくると、確率でキャラが『ゾーン』という強化状態になる。
 さらに複数人がゾーン状態になれば『れんけい』が使える。……が、これらはランダム性が高く戦術に組み込みにくい。ボス戦のような過酷な場面で狙って発動するのは至難の業。戦術に組み込めるとしても、かなり終盤になるのではないだろうか。

 今回からは、レベルアップ時にHPMPが全快する仕様になっている。
 また、フィールドやダンジョンの要所にはキャンプ地点があり、そこでも回復が可能になっている。キャンプではセーブなどの施設も使用できるのでとても便利。
 そのため、パーティの消耗は今までのシリーズ作品よりかなりゆるい。ありがたいといえばありがたいけれど、戦闘の度に大技をぶっ放すような大味なプレイになる傾向も。

 DQ8の錬金に代わって今作には『不思議な鍛冶』がある。それで装備を作成できることもあって、お金も不足しにくい。

 それらもあって、序盤〜中盤と難易度は低め。今回はボス戦の経験値が多めなので、レベル上げをせずとも問題なく進めた。
 もっとも、難易度は比較的低いという程度でSFC版DQ3やDQ9よりは難しいはず。
 さらには、本編後半からはボス敵の攻撃が激しくなってくる。三回攻撃や全体状態異常を当たり前に繰り出してくるためなかなか厳しい。特にドラクエの場合、異常を完全に防ぐことは難しいので運ゲーになることも。

 今作の不満点の一つとして、戦闘テンポが挙げられる。
 今時のRPGにしては戦闘がゆったりしていて、DQ8の時代から余り進歩が見られない。

  • 戦闘開始まで7秒。PS3以降のRPGとしてはやや長い。
  • 敵と距離があると、攻撃する度にノロノロと敵へ近づく。
  • 呪文や特技には微妙な溜めのモーションがある。特に『ぶんまわし』のような単純な技にまで、数秒程度の溜めモーションは過剰では?
  • 防御して次ターンが回ってきた時にいちいち「守りをといた」のメッセージ。
  • HP・MP自動回復だと毎ターンメッセージを待たされる。
  • 全体的に、いちいち行動が終わるまで待つのは時代遅れ感が否めない。

 例えば、通常攻撃の速度を比較すると、こんな感じ。

  • SFC版DQ3 :1.5秒
  • PS2版DQ5 :1.0秒
  • PS2版DQ8 :3.0秒
  • PS4版DQ11:2.5秒

 システムは古いままでよいと言ったけれど、ここは頑張って欲しかった。今はグラフィックの綺麗なRPGでも、これよりテンポの優れたものはいくらでもある。
 というか、PS2版DQ5の時点ではテンポ良すぎて気持ち悪いレベルだったのに、なんで退化してるんでしょうか……。

 余談。ここまで検証していて気づいたけれど『フリー移動バトル』モードのほうがテンポが若干早いような気がする……。なぜか「守りをといた」や「HP・MP自動回復」のメッセージが飛ばせるようになった。並行して処理を行うようにプログラムされているせいかもしれない。

 ともあれ、昨今のゲームはあれこれと複雑なシステムを組み込んだ結果、逆に面白さが迷子になっていることが多い印象がある。それと比較すれば、ドラクエの面白さはとても明快。本作ももちろん堅実に楽しめる仕上がりになっている。

 その他ゲームバランスについて細かいこと。

  • メラ・ヒャド系呪文が微妙に弱い。敵の耐性の関係もあってか、単体攻撃のメラゾーマより全体攻撃のイオナズンのほうが期待値が高い気がする。消費MPは大差ないのに……。
  • 敵の強さと経験値が釣り合ってないことが多い。基本的に少数で出現する巨大な強敵より、群れを作るザコを狙ったほうが効率がよい。これは今までのシリーズにもあったことだけど、今回は大型の強敵が多いので特に気になった。
  • 主人公の最強剣技が案外弱く、中盤で覚えられる技にすら負けているのはどうなのか。
  • ボス戦の経験値が多めなのはよいけど、死んでいるキャラは経験値が入らない。控えのキャラのほうがレベルが上がりやすい逆転現象も。

成長システム

 選んだスキルと隣接したスキルが解放されていくパネル形式。
 DQ8のスキルマスターの発展系だが、それよりもスキルの数は豊富。FF10のスフィア板などと似たものになっている。
 例えば、カミュは『片手剣』『短剣』『ブーメラン』『かみわざ』の四通りのスキルがある。

  • 単体攻撃が強力だが、全体攻撃ができない『片手剣』
  • 強力な全体攻撃が可能だが、硬い敵が苦手な『ブーメラン』

 というように選んだスキルによって、成長の方向性が変わってくる。パーティ編成とスキル次第で、DQ8よりもプレイヤーごとの個性を出しやすい。

 スキルは中盤〜後半辺りからリセットも可能。
 DQ8ではやり直しができなかったため、地雷スキルを選ぶと大きく不利になったが、今回はその心配は少ない。リセットにはわずかなお金(G)が取られるだけなのは助かる。

その他

 色々と快適にプレイさせるための工夫がされている。

  • メニューを開いて□ボタンを押すだけで、『ほぼまんたん』で自動的に回復してくれる。
  • 地図画面や仲間との会話で、行き先を逐一教えてくれる。
  • シンボルエンカウントなので敵を避けやすい。
  • メニュー画面の操作が洗練されていて動作も軽快。

 特に『ほぼまんたん』は非常に便利。既存シリーズの『まんたん』よりも賢くやってくれるので、MP消費の心配は薄い。RPGお決まりの回復作業から一気に解放してくれる。

 気になるロード時間だが、これはDQ8の時代より悪化している。ゲーム機は二世代も進化したはずなのに、いまだロード地獄からプレイヤーは解放してもらえないらしい……。

  • マップ切り替えに10〜20秒程度。
  • ルーラに25秒。
  • 空の乗り物へ乗るには25秒、降りるのに十数秒。

 ただし、マップ内へ一度入ってしまえば細かいロードは少ない。少なくとも、民家の出入りだけでロードが発生するようなことはない。数十分の町探索中、一度もロードがないこともあるので、良心的な部類かも。
 ロード回数を軽減するためか、ルーラがダンジョン内でも使用可能になっている。(PS4版限定とか)また、各地のキャンプ地点まで直接ルーラ可能になっているのは便利。

 また、マップは広めだが、DQ8よりは全体的に抑えられている。ただし、移動速度は遅めだし、町の構造は複雑なので、疲れを感じる人は多いと思う。フィールド上では乗り物も使えるのでさして問題ないが、町中はそれなりに大変。
 特に今回はメダル王に当たる施設が微妙に遠い。メダルを渡しに行くのにルーラから合算して、一分もかかったりするのは何とかして欲しかった。

 今作もDQ9から引き続きクエストが存在する。
 内容としては、DQ9のように目立って面倒なものは控えめ。攻略情報なしでも大半はどうにかなった。……が、数点面倒になって攻略に頼った。マップが広いため、捜し物を見落とすとかなり面倒なことになる。
 それ以外だと……

  • 『れんけい』によって特定の敵を倒せ
  • 同じ敵を何度も倒せば登場する転生モンスターを倒せ
  • カジノのルーレットでジャックポットを当てろ

 この三種類は特に面倒だった。いずれも運の要素が絡んでくるため、当たりを引くまで繰り返さなければならない。戦闘関連もテンポがあまりよくないため面倒になってしまう。

 その他、気になった点としては……

  • マップ上で○ボタンで魔物にアタックすると有利になるが、乗り物上からできない。
  • 魔物に対して遠距離から○ボタンを押せば、ボウガンで敵をおびき寄せることができる。……が、これがアタックの誤操作などで頻繁に暴発する。そもそも、ボウガン自体が不要な気がする。
  • 明らかに格下のザコに対しても逃走に失敗する。
  • 船だけは旧来のランダムエンカウント。しかも出現率が高め。

 後はストーリーに関しても書いたけれど、クリア後の密度の低さは如何ともしがたい。
 イベントの密度、ほどほどの敵の強さ、新しい敵とダンジョン……。そういったものが合わさって、ドラクエの面白さは構成されているのだと思う。
 本編に関してはそれらが申し分なく発揮されていた。
 ところが裏面においては……

  • イベントは呆気なく終わる
  • 急激に強くなる敵に苦しめられる
  • 見たことのある敵やダンジョンが再登場する

 というように、どうしてもモチベーションが下がってしまう。
 今回は裏面が明確にストーリーへ組み込まれているため、ストーリー重視のプレイヤーも無視はできない。
 本編と同じような勢いのまま、終われたら理想だったのに――と、個人的には思ってしまった。

美術


 事前情報の段階だと、キャラはパッとしない印象があったのだけど、実際に動いているところを見れば、思った以上に魅力的。ベロニカなんかは、とても表情豊かで細かい顔芸が楽しい。

 大ガラス、フロッガー、リップス、おばけキノコ、ドロル、ももんじゃ、マムーとモンスターのチョイスがなつかしい。
 モンスターズなどの外伝を除けば、単一作品にしか登場しない魔物の再登場が多い。
 2以来の再登場となるスモークなんかは、今の技術で表現したらこうなるんだというのを見せてくれた。
 ドラゴンやクラーゴンなど、旧作では小さなドットだったモンスターが迫力ある姿になったのは嬉しい。

 一説によると、DQ10からの流用が多いらしいけれど、初見の身にとっては大いに感激させられた。
 もっとも、本作オリジナルモンスターは乏しいし、後半は同じ魔物の使い回しが目立つのが難点なのだけど……。

 西洋風、和風、琉球風――と町の種類も様々。
 今時、これよりグラフィックの質が高い作品はいくらでもあるけれど、こちらはバリエーションの豊かさが強み。何より、温かみのあるドラクエ世界を良質なグラフィックで遊べることが嬉しい。
 以前プレイした某洋ゲ―はグラフィックは綺麗なのだけど、雰囲気は暗いし、同じような敵や地形ばかりで飽きてしまった覚えがある。こういうJRPGの強みは今後とも大事にして欲しい。

音楽


 フィールド曲、戦闘曲、町の曲、ダンジョン曲と、無難なすぎやま節といった感じ。強い印象はないのだけど安定している。
 その中では、シルビアのテーマとして流れるパレード曲だけが、悪目立ちしていてちょっとしつこいかもしれない。

 新曲で最もよかったのは、要所で流れるハープ曲。特にセーニャに関わるシーンが印象深い。中盤までは「姉妹の影が薄いほう」という印象だったけど、思ったよりヒロインしていてよかった。

 ただ、今作は音楽の使い回しが多くて、新曲の印象がとにかく薄い。集大成ということもあってか、本作は過去作からの音楽の流用がとても多いのが特徴になっている。
 なつかしさは感じられるし、場面に合っていることが多いのも確か。久しぶりに聞いた人なら感激できることも多いはず。

 そこまではいいのだけど、まさかゲームの要となる箇所までも、過去作の流用ばかりだとは思わなかった。
 一例を挙げれば、本作の船の曲『海図を広げて』は元々DQ4に使われていた曲。DQ9にも使われているので、二作連続で独自の船曲が存在しないことになる。名曲かもしれないけれど、『DQ11の船の曲』が存在しないという事実はもったいない。
 ※ちなみにDQ10はそもそも船がないらしいです。
 流用はこれに留まらず、クリア後はさらに重要な箇所を流用曲に頼ってしまっている。

 ストーリー、システム、グラフィック――と、本作には各方面で過去作を超える意気込みが感じられた。その中で音楽だけが白旗を上げているように思えて仕方なかった。
 DQ8がそうしていたように、せめて、アレンジぐらいはして欲しかったなあ……と、個人的には思った。

総評


 元々、斬新さよりも手堅い造りに定評があるシリーズで、今作はその期待に応えられる出来だと思う。
 作品の雰囲気は、グラフィックや演出力の高さもあってDQ8の正当後継といった印象を受けた。「DQ8は楽しかったけど、DQ9は物足りない」という人には間違いなくオススメできる。
 正直、安定して面白い作品になるだろうとは予想していたけど、それよりもずっと楽しめた。特に本編のストーリーがお気に入りで、今になってドラクエにこれだけ熱中できるとは予想外だった。

 ドラクエの最高傑作論争は3が優勢で、4や5がそれに追随しているのが一般的な評価だろうか。けれど、本作はそれらにも立派に肩を並べられる水準だと思う。
 個人的には『ロードや戦闘テンポの悪さ』『音楽』『クリア後のイベントの薄さ』辺りの不満がなければ、迷いなくシリーズ最高傑作と断言していた。

 話を聞く限り、おまけ要素や快適性では3DS版に軍配が上がるらしい。プレイ時間も3DS版(特に2Dモード)のほうが大幅に減るはず。
 ただPS4版のグラフィックや演出は素晴らしいものがあるので、それだけでもこちらを選んだことに満足できた。
 ……と言いながら、3DS版もやってみたいという気持ちもあったりする。長い作品なので大変かもしれないけれど。
posted by 砂川赳 at 17:04 | RPGレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【RPGレビュー】世界樹の迷宮III 星海の来訪者

2017年01月12日

発売元アトラス(公式)
機種NDS
発売日2010/04/01
質量物語システムバランス快適性美術音楽平均クリア日
80608080708080762015/03/01

 シリーズ初挑戦なので、その前提でレビュー。

質量/物語


 ラスボス撃破までプレイ。プレイ時間の表記はないけれど6〜70時間ぐらい?
 普通にクリアするだけでも大変だったので、裏ボスは保留。

 海都を舞台に冒険者達が迷宮へ挑む。
 ダンジョンRPGなので、それほどストーリー性が強いわけではないけれど、世界設定はそれなりに作りこまれている。
 ストーリー分岐があって、ラスボスが変化したりもする。データを引き継いでの周回もできるとはいえ、さすがに最初からやり直すのは大変だと思うけれど。

システム/バランス/快適性


 クラスと名前を自分で決めて、キャラクターを作成し冒険する。
 システムはシリーズを経る中で、複雑ながらも練りこまれている。
 多数のクラスが登場。中盤からはサブクラスとして、もう一つのクラスに就くことができる。

 レベルが上がる度に獲得できるポイントを使用して、スキルを習得する形式。
 スキルの習得条件はやや複雑。例えば「スキルAの習得条件はスキルBをLv5、スキルCをLv3まで習得すること」といった感じになっている。時折、どのスキルを目指していたのか、忘れて悩んでしまうことも。
 個人的にもシステム制作の参考になりそう。実際にこれの影響を受けたかのようなシステム設計をしているフリゲも見かける。

 戦闘は高速でテンポよく進む。
 ただし、高難易度として名高いシリーズだけあって、一筋縄ではいかない。ザコ敵は強くしぶといので、総合的な戦闘時間も結構長い。
 ダンジョン内をうろつくFOEと呼ばれる強敵も存在する。初見で挑むと大抵は全滅させられるが、回避もできる。強くなってから挑むのも自由。
 ……と、ここまではどうにかなる難易度。

 さらに辛いのは各階層のボス。
 これは非常に強い上、長期戦になる。初見殺しの攻撃も多く、対策必須のボスも多数登場するので、かなり大変。というか、ガチで難しいので後半は攻略みないとやってられなかった。
 それでいてボス戦前のセーブポイントはなく、全滅はゲームオーバーになるという鬼仕様。もっとも、ショートカットを活用すれば5〜10分程度でボスの元までたどり着ける。それで、どうにか心を折らずに進めた。
 これらは昔のゲームによくある調整不足ではなく、計算づくの高難易度。手応えを求めるプレイヤーにはおすすめ。ただし、ライトユーザは心を折るかも。これでも、前作、前前作より簡単だそうです。

 ……難しいと書いたけれど、補助系のスキルをうまく活用するととんでもないダメージを叩き出せるらしい。多数のスキルを重ねがければ、ダメージ20倍も出せるとか。僕はそこまでやり込んでいないのだけれど。

 システム上、新しいスキルを次々覚えるというよりは、一つのスキルのレベルをどんどん高めることが多い。この方式の欠点として、使う技が固定になりやすい。サブクラスによってある程度緩和されているけれど、同じ技の連発でやや単調かと思うこともあった。

 出現する敵の種類は意外と少ない。ただ、一つ一つの敵は個性的。敵パーティの組み合わせによって、行動パターンを変えることもあるので、ザコだと侮ると痛い目にあったりする。

 このシリーズの特徴として、タッチペンを使用したマッピングがある。
 探検感はあるけれど、ボタン操作とタッチペンの両方を多用するので、疲れるかもしれない。なんせ、一階層を攻略するのに10時間以上普通にかかるので。

 3独自の要素として『大航海』がある。海都の外に出て、船でマップ探索をするというもの。
 大航海といいながらも、内容はパズル的。決められた行動数で、目的地を目指していく。
 難易度は結構高い。これも攻略を見ないとやってられないと思う。

美術


 硬派なゲームデザインにかわいらしいキャラデザが特徴というシリーズ。
 ドット絵のモンスターはかわいらしくても凶悪。

 仲間キャラは同じクラスであっても4パターン(×2カラー)のグラフィックが選択可能。自分の好みに合うものを選択できる。

音楽


 ファルコム作品などで有名な古代祐三。あえてレトロチックな音にしているらしいが、曲は王道で好印象。

まとめ


 面白い……けど、ほとほと疲れ果てた。
 続けて同シリーズ作品に手を出すには、相当な気力と時間が必要になりそう。ストーリー性も高くないから、似たようなことを繰り返すんだろうな――と、どうしても後ろ向きになってしまう。
 なので他作品への挑戦はとりあえず保留。

 女神転生シリーズにも同じような感想を持ったけれど、やっぱりダンジョンと戦闘ばかりの上に、プレイ時間も長いから大変。
 考えてみれば、昔のゲームは難しくても大抵は数十時間で終わるぐらいの規模だった。おまけにゲームバランスやプログラムの粗さから抜け道があったりもした。そのお陰で何とか気力が持ったのだろうな――と、しみじみ。
posted by 砂川赳 at 09:52 | RPGレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする