特に経験が浅い制作者は、スタイルがまだ固まっていないと思われるので要注意。ポイントとなる部分を以下にまとめるので、何も考えていなかったという箇所があれば、参考にして頂ければ。
セリフを表記する際のルール
登場人物にセリフを喋らせる場合、小説でもゲームでも通常は「」(カギ括弧)を使用する。言うまでもない基本事項だけど、たまに『:』もあったりする。ゲームの場合は閉じる側の括弧『」』は省略することも。
以下にいくつかセリフの書き方の例を挙げてみる。
話し手
「ここはXXXXの町です。
北に行くと、塔がありますよ。
話し手「ここはXXXXの町です。
北に行くと、塔がありますよ。
話し手「ここはXXXXの町です。
北に行くと、塔がありますよ。
【話し手】
「ここはXXXXの町です。北に行くと、塔がありますよ。ついでに言うと、東には森がありますよ。
話し手の名前を表示した後に、改行するかしないかは、作品によって異なる。僕としては改行する方がお勧め。その方が読みやすいし、話し手の名前が長くても文章のバランスが崩れない。セリフ中のどこに改行を入れるかも重要。メッセージウインドウの端までセリフを改行しないという手法もある。
小説ではできない、ゲームならではの手法として、話し手の文字色を変えたりもできる。見やすいように工夫してみよう。
その他文章を表記する際のルール
セリフを「」で表記する事は既に当然のルールとなっている。しかし、セリフ以外――例えば『ナレーション』『書物』『思考』等を表記する場合はどうすれば良いだろうか?
それには、
”>『({
等の記号を使用する方法がある。
例えば、主人公の思考は……
>そっとしておこう
書物や看板などの読み物は……
”毒の沼地。危険入るな!
というように記述する。あるいは"「"が無い場合はナレーション……という様に記号を用いないこと自体を目印としてもOK。
また、記号を使用しなくても、メッセージウインドウの形を変えるという手法もある。漫画で吹き出しの形を変えるのは一般的な手法だが、ゲームでもライブアライブ等がやっている。セリフであっても、絶叫や囁き、テレパシーなどを区別して表記することもできる。
【例】
- ナレーション → 黒背景
- 絶叫 → ギザギザウインドウ(下の吹き出しみたいなヤツ)
- 思考 → モコモコウインドウ(。o O ○)
∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧
<くせ者だあッ!! >
< >
< >
∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
↑環境によってはズレてるかも……。
読点『、』の使い方
『、』を打つタイミングについて、実は明確なルールは存在しないらしい。適度に打つことで、読みやすい文章にしていこう。
例えば、『漢字で表記するかひらがなで表記するか』という文のように、ひらがな同士で言葉が繋がってしまう場合は区切りが分かりにくい。なので、筆者は特に意識して『、』を打って文を分けるようにしている。『漢字で表記するか、ひらがなで表記するか』という感じで。
ゲームの場合『、』ではなく、『半角スペース』や『全角スペース』を使用することも。ちなみに僕は今のところ『半角スペース』派です。
句点『。』の使い方
もちろん文章の最後に打つ。『、』と違って、こちらに悩むことは少ないはず。ただ意識していないとなかなか気付かないかもしれないけれど、一般小説では「」の末尾には『。』を打たないことが普通になっていたりする。セリフを右括弧で閉じる様にしているのならば、このルールに合わせた方が無難かも。
【例】
「今日はいい天気ですね。
明日も晴れるといいですね」
三点リーダ『…』と棒ダッシュ『―』の使い方
一般的な小説のルールでは、『…』『―』共に偶数回連続で繋げて使用する。『……』『…………』『――』『――――』というようにだ。でもゲームや漫画だと『…』単体での使用も見かけたりする。
この2つの使い道に付いては、分かるようで分からない人も多いと思う。一部使い道が重なる部分があるのが、またややこしい。そんなわけで、使い道をまとめてみた。
『…』のみが使える
- 語尾を濁す:「たぶん、そうだと思うけど……」
- 弱々しく :「俺は……もう駄目……だ」
- 沈黙 :「……」
『―』と比較すると、使い道が分かりやすいので、特に補足はいらないと思う。
『―』のみが使える
- 割込:先生「え〜と、何か連絡事項がある方は――」生徒「はい!」
- 引用:「この古文書によると――玉座の後ろを調べろ――とあるね」
- 補足:俺は村長の家――それは村中で最も立派な建物だった――に向かった。
『割込』は唯一『―』の安定した使いどころ。
『引用』は””や『』で囲ったほうが分かりやすいかも。
『補足』は文章の中に文章を挟む構造になる。()と使い方が類似している。海外小説の翻訳で良く見かけるけど、これを多用した文章は読み辛い。使うぐらいなら文章構成を考え直したほうがよさそう。といっても、ゲームにはあんまり関係なさそうだけど。
『…』『―』両方で使える
- 間を置く:「……それで、結局どうしますか?」
- 文を繋ぐ:「神――いわゆるゴッドの思し召しなのです」
『間を置く』の例のように文頭に間を作ることもできる。話題を転換したい場合などで有効。個人的には、何でもかんでも『ウェイト処理』で間を作るよりは、『…』や『―』で間を表現してもらった方がテンポが良くなるので好き。
『文を繋ぐ』は『、』に近い運用方法となる。溜めを作ることで、後の文章をより強調できる効果もある。
このパターンの場合、『…』『―』どちらでも良いのだけど、個人的な印象では『…』は弱々しく、『―』はスピーディな気がする。『…』と『―』の使い分けは明確に統一されているわけではなく、色々と曖昧。作家によっても用途に差がある。興味があるなら、プロの文章を読む時に気を付けてみるのがオススメ。
感嘆符『!』と疑問符『?』の使い方
『…』『―』と比較して、こちらの使い道に悩む人は少ないと思うが、ついでに書いてみる。
『!』は驚きや叫びを現す。「うわっ!」「お〜い!!」など。2つ以上重ねて強調する事もある。『?』は疑問や困惑を現す。「どなたですか?」「はあっ?」など。2つ以上重ねることは少なめ。
『!?』というように両方を合わせる方法も多用される。「おかしいだろ!?」「マジでっ!?」というように、驚き叫びながら、困惑しているという表現になる。『?!』は余り使わないが、驚きよりも困惑を強調したいとか、独自性を出したいとか、理由があるならどうぞ。
「図書館では静かに……!」「へっ……?」「信じられない……!?」というように『…』と組み合わせることもできる。意味合いが反対に近い『!』と『…』が共存している事に違和感を持つ人もあるかもしれないが、「声を張り上げてはいないが、強い感情を込めている」といったニュアンスだと思う。たぶん……。
漢字で書くか、書かないか?
以下のような言葉は特に、人によって漢字で表記するか、ひらがなで表記するか意見が分かれる。なるべく方針は統一しておこう。
- ある(有る)
- くらい、ぐらい(位)
- こと(事)
- ため(為)
- つく(付く)
- できる(出来る)
- ない(無い)
- など(等)
- なに、なん(何)
- なる(成る)
- よう(様)
- よく(良く)
- わかる(分かる)
- わけ(訳)
筆者は『事』や『様』の使い方によく迷う。ひらがなが続く文章の場合は漢字で、漢字が続く文章の場合はひらがなで打ちたくなる。こんな事を書いておいて何だが、統一するのは結構しんどい。いっそ、その場の雰囲気や気分で、あえて統一せずに開き直っても良いかもしれない。
難しい漢字を使うかどうか?
例えば、『未曾有(みぞう)』『顰蹙(ひんしゅく)』『翻す(ひるがえす)』のような、難しい漢字を使用するかどうか? PCだと、簡単に漢字変換ができてしまうが、なんでもかんでも変換してしまうのは考えもの。プレイヤーの対象年齢次第では、みぞう、ヒンシュクの様に、ひらがな、カタカナで表記する事も検討しよう。ただし、「これはみぞうの事態だ」という具合に、見栄えは悪いので注意したい。
- 未曾有 → 空前
- 顰蹙 → 反感
- 翻す → 撤回する
上記の様に、もう少し簡単な言葉に言い換える方法もある。フリガナを打てるならば、理想的なのだけれど、制作ツールの制約や手間の問題がある。
まとめ
読みやすい文章を書くためには、ルールの策定が不可欠。ウインドウの形状や文字色など、ゲームならではの技法を活用するのも選択肢の一つ。何にせよ、自分なりのルールを決めておこう。制作の終盤で書式・文体の統一をするハメにならないように注意したい。
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