【RPG制作講座】クリアしたくなるゲームデザインとは?

2018年11月24日

市販RPGのクリア率』の記事で書いた通り、クリアまでゲームをやるプレイヤーは意外と少ない。
 そこでどのようなゲームデザインをすれば、プレイヤーがクリアしたくなるかを考えてみたい。

『クリアしたくなるゲームデザイン』となると、いわゆる『ヌルゲー』を想像されるかもしれない。けれど、ここで考えるのは難易度ばかりではない。
 むしろ、初心者から上級者までを満足させるゲームデザインを考えていきたい次第。
 ※ところどころ過去に書いた内容と重複してしまいましたが、そこはおさらいと思ってご容赦ください。

プレイヤーが投げ出す理由


 まずはプレイヤーがなぜクリアせずに投げ出すかを考えてみる。

  • クリアできずに、心が折れた
  • 戦闘、ストーリなどを含めてテンポが悪い
    要するに面倒くさくて、我慢してまでクリアする動機がない。
  • 長くて終りが見えない
  • 後ろ髪を引かれて辛い
    要するに取り逃しなどのコンプ要素の見逃しについて。

 候補としては、こんなところだろうか。
 この他にも「ストーリーやシステムが好みじゃない」という理由も当然あるだろうけど、当然取り扱わない。一記事で扱える範疇じゃありませんので。

 上の個別に対して、対策を考えてみた。

クリアできずに、心が折れた


 プレイヤーが作品をクリアしない理由は、クリアできないからである。
 ……そのまんま過ぎて説明はいらないですね。

 実際のところ、大半のRPGは時間さえかければクリアできるようになっている。アクションやパズルのように何度やってもクリアできないなんて状況は、そうそうあるものではない。
 凶悪といわれるファミコンのドラクエ2ですら、10時間〜20時間と経験値稼ぎに耐えられるなら十分にクリアできるはず。

 ……にもかかわらず、これは『クリアできない』と思わせるRPGは現に存在する。プレイヤーの心を折ってしまう何かが存在しているわけだ。
 では、どう対処すればいいのだろうか?

難易度を下げる

 一番に考えられるのは、やはり戦闘や謎解きの難易度が高いということ。その難易度を下げるのも一つの手段となる。
 これについては、特に説明不要だと思う。
 ただし、安易な解決法であることも否めない。

 そもそもプレイヤーが挫折するのは、本当に難易度が原因なのかも疑っておきたい。
 分かりやすい理由だけに、プレイヤーも制作者も「難しかったから」の一言で片付けてしまいがち。

【例】
プレイヤーの感想
「ダンジョンに三時間もかかって大変だったので疲れてしまいました」

制作者の解釈
「当作品は歯応えのある難易度になっているので、ライトユーザの方には難しかったかもしれません」


 今の時代、ネット上などで制作者がプレイヤーの意見を受けて、反応を返すことは珍しくない。その中では、上記のような噛み合わないやり取りが展開されたりする。
 ※昔、どっかの企業で見た記憶があります。
 上のような感想なら大抵の場合、『難しい』というより『面倒臭い』と表現したほうが正しい。

 確かに『難しい』ゲームはプレイ時間が延びるため、『面倒臭い』傾向がある。しかし、言うまでもなく『難しい』と『面倒臭い』は別の概念。
 そして、プレイヤーが挫折する一番の理由は『面倒臭い』であるということを主張しておきたい。そこを見誤ると、見当違いな対策になってしまう。

 実際には「難しくても諦めずにクリアしたくなるゲーム」と「難しいのでさっさと投げたくなるゲーム」の差は歴然と存在する。
 プレイヤーもその差を理解できず感覚的に「投げ出したのは難しかったから」という結論を出しているだけかもしれない。

 というわけで、この記事では難易度を下げる以外の方法も積極的に考えていきたい。

長時間プレイを台無しにしない

 長々とプレイした挙げ句に全滅。二時間前のセーブポイントからやり直し……。
 というのは、プレイヤーの心を最も折る展開であり、やはり避けたい。
 昔はFF3とか女神異聞録ペルソナとか色々とあったけれど。昔は昔。一時間、二時間とセーブをさせないゲームデザインは、さすがに時代的にしんどいのではないかなと。

 そもそも、全滅のペナルティが大きすぎると、制作者だって思いきった難易度にするのは難しくなる。やり直しが気軽にできるからこそ、サガシリーズのボスはあれだけ強くても成り立つわけで。

 セーブポイントは頻繁(常時セーブできてもOK)に、全滅時のペナルティは控えめを心がけてみよう。

上級者を過度に優遇しない

 例えば少ないターンや低レベルでボスを倒すと、ボーナスを出すなどの手法を指している。
 これをやる上での問題は、それができない初心者ほど不利になっていくということ。
 特にボーナスの中身がレアアイテムだった場合、取り逃しが発生するという難点もある。これは長編RPGにおいて大変厳しい。
 初心者冷遇の末に、心を折ってしまうのは避けたいところ。

 よくあるのは、戦闘不能のキャラには経験値を渡さない仕様になっている場合。戦闘不能者がよく出る初心者ほど経験値に困る傾向がある。ボスなどの強制戦闘で、大量に経験値を出す場合は要注意!

 上級者の優遇は、意図しないうちに成り立つこともある。
 例えば、強制戦闘のボスを撃破した際に大量の経験値を与えると、レベルの均一化が起こってしまう。

  • 中ボスの想定レベルが30。撃破すると経験値200000
  • 大ボスの想定レベルが40

 ちょっと極端な例になるけれど、「上級者は中ボスをレベル20で撃破」「初心者はレベル40で撃破」できたとする。
 経験値200000を入手した場合、DQ3の経験値曲線を例にすると――

  • 上級者:レベル20→32にアップ
  • 初心者:レベル40→42にアップ

 となる。

  • 想定レベル−10で中ボスを倒した上級者なら、レベル32でも大ボスに挑めそう。
  • 想定レベル+10で中ボスを倒した初心者は、レベル42でも厳しい。長時間の経験値稼ぎが必要となりそう。

 というように初心者に厳しいゲームバランスになってしまう。

 もちろん、「強敵を倒した報酬が欲しい」という意見もあるだろうし、ボス戦の経験値を奮発するのも一つの選択だと思う。とはいえ、ザコ戦の経験値とあまりに格差をつけてしまうと厳しくなってしまうことには注意したい。
 ちなみに、強制ではなく任意で戦うボスは別にどっちでもよいと思う。

手詰まり感を抱かせない

  1. ボスが強くて難しい。
  2. だが、パーティを強化しようにも、既に装備は整えてある。
  3. レベルを上げても、大して能力が上がらない。
  4. 手詰まりになった。さて、やめようか。

 ……というようになって心が折れるパターンに心当たりがないだろうか。
 慣れたプレイヤーならば打開策が思いつくかもしれないが、初心者もそうとは限らない。
 というか、筆者はRPG上級者のつもりだけど、それでも心当たりはたくさんある。昔のドラクエ2みたいに取り得る戦術が少ないと起こりやすい。
 対策としては下二つが参考になると思う。

金の使い道を常に用意

 既に今購入できる最強装備をそろえているが、ボスに勝てない。
 こうなると取れる手段が少なくなってしまう。それこそが手詰まり感を誘発する。
 常に今以上にパーティを強化する手段を用意しておきたい。

ある程度インフレさせる

 変化に乏しいと、パーティが強くなった感覚が得られない。
 ボスが倒せない際に「パーティを強化すれば打開できるのは?」という実感が持てないと、プレイヤーは手詰まりを感じてしまう。
 そのためにも、数値のインフレ率はある程度高めておきたい。
 もちろん、やり過ぎるとバランス調整が難しくなるので、按配は考えよう。

謎解きは控えめに

 謎解きが解けない場合も、もちろんプレイヤーの心を折りやすい。

 戦闘を重視したゲームにしたいならば、謎解きを削るのも一つの手。何でもかんでも盛り込んでしまうのは考えもの。もっとも、過去の記事でも長々と書いたので割愛する。

戦闘、ストーリなどを含めてテンポが悪い


 プレイヤーが挫折する一番の理由は『面倒臭い』である――というのは既に主張した通り。『面倒臭い』ゲームとはすなわちテンポが悪いゲームである。
 これは『クリアできない』ではなく『クリアしたくならない』に近いだろうか。
 そこでその『面倒臭い』を改善する方法を考えていきたい。
 ……といっても、過去に書いたような内容と被っているので割愛気味でいきます。

戦闘テンポや快適性を重視

 戦闘はスピーディに。エンカウント率はほどほどに。ロード時間は短く。レスポンスは良好に。
 説明不要。過去に散々書いた気がするので省略。

システムはシンプルに

 システムが無駄に複雑になっていないかという点にも注意しておきたい。
 何をするにも、やたらと手順が多いゲームシステムは要注意。
 重要施設が遠いのもよろしくない。(PS4版ドラクエ11のメダル女学園など)

 また、アイテムの数なども過剰に多いと煩雑になりやすい。時には要素を削る覚悟も必要となる。

物語をテンポよく進める

 文章が冗長ではないかを考えてみる。ゲームにおいては、小説のように長々と文章を書けばよいというものではない。

 また、ゲーム特有の問題として、やたらにウェイト(待ち時間)を挟まないことに注意したい。
 時々『!』『?』『汗』などのアイコンを表示する度に、長めのウェイトを挟む作品があるけど、これは結構気になる。
 ウェイトを1秒単位で大雑把に指定する人がたまにいるけど、オススメできない。テストプレイすればすぐに分かるけれど、1秒というのは意外と長いので。

長くて終りが見えない


 長くて終わりが見えず、クリアまであと何十時間かかるか分からない。もういいかな――とプレイヤーが諦めてしまうパターン。

 時間を忘れるほど熱中させられれば何も問題はないけれど、残念ながら現実はそう簡単にはいかず。序盤、中盤、終盤と隙がなく面白いRPGなんてそうそうあるものではない。
 いかにして、プレイヤーを最後までつなぎとめられるかを考えてみよう。

クリア時間はほどほどに

 これはもう、プレイ時間稼ぎをしないという一点に尽きる。物語は終わるべき時に終わらせよう。

「俺は千時間も制作にかけたんだから、プレイヤーだって十時間ぐらいは付き合うべきだ。それが多少面倒であっても」
 ……みたいな思考になっていたら要注意!
 そういう作者自身が通しのテストプレイをしていない――なんていうのは論外。きちんと最初から最後まで、なるべくユーザと同じ条件でプレイしよう。二週、三週と自分でクリアすれば、ユーザに面倒を強いることの愚を嫌でも悟るはず。

 また、クリア後の隠し要素なども無理して作る必要はない。統計上、クリア後にまで手をつけるユーザは意外と少ない。(PSのトロフィー機能を参照)

 もっとも、個人制作でそこまで長くなることは珍しいだろうけど。

ストーリー進行に目安を作る

 ダラダラと区切りなく話が続くのはしんどいというもの。
 そこでストーリーが着実に終わりに向かっているという進展感を与える。
 おつかいイベントやタライ回しばかりに頼らず、序盤や中盤にもある程度の山場を用意しておく。
 あるいは『四天王との対決』とか、『7つのボールを集める』とか。数字で目安を作ると分かりやすいかもしれない。まあ、話の先が読みやすいという問題点もあるわけですが……。

後ろ髪を引かれて辛い


  • 売り払った初期装備の木刀が、実は最強武器の素材だった。
  • 既に倒したボスから盗めるアイテムが、限定品だった。
  • 選択肢を間違えたら、仲間にならなくなった。

 どうです? 最初からやり直したくなりませんか?
 やり直すのは面倒なので、とりあえずそのままやるけれど、モヤモヤした気持ちになって、モチベが落ちませんか?

 後ろ髪を引かれた状態でプレイを続けるのは辛いもの。
 結局、続ける気にもなれず、かといってやり直す気にもなれず、気がついたら中途放置していたなんてことも。

 対策はもちろん取り逃し要素を減らすこと。ドラクエシリーズなんかは毎回やっていることではある。
 もっとも、自由度が高くて分岐の多いゲームは仕方がない。個人的にはそういうゲームも好きなので、完全否定するつもりもない。ただそういう場合もある程度、一周にかかるプレイ時間を下げたほうが妥当かと思う。

 それ以外だと、ストーリー的なことも問題になるかもしれない。
 例えばヒロインが死亡するなどして、プレイヤーが何か選択を間違ったのではないか――と思わせるのも危うい。それがゲーム的には正解ルートの一本道であっても、辛いものは辛い。
 プレイヤーが気持ちよく先に進みたくなるようなシナリオを作るのも、一つの技術だと思う。

 とはいえ、さすがにそこまで気にするとシナリオが制約されてしまう。あくまで自分の趣味と要相談ではあるけれど。

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【RPG制作講座】後半のゲームバランス

2018年11月10日

 ゲームバランスを調整するにおいて、特に難しいのはゲーム後半である。序盤からの積み重ねによって、様々な要素が集まるためバランス崩壊が起こりやすいからだ。
 長編であればあるほど要素が積み重なるため、調整も難しくなっていく。
 市販RPGの中にも、序盤〜中盤は面白かったのに、後半は……といわれる作品も珍しくない。

RPGをクリア手前で飽きる現象


 ……というものをご存知でしょうか?

 ググってみれば、クリア前にゲームを飽きてしまう人々の体験談がたくさん見つかる。巷ではゲーム終盤に飽きてしまうのは、定番の現象らしい。

 理由は色々考えられる。「話の先が見えて満足してしまう」といったストーリー面の問題も大きいのももちろん事実だけど、ここでは置いておきます。
 ここで取り上げるのはゲームバランスについて。クリア前に飽きるのは、後半のゲームバランスの調整が難しいことと無関係ではないはず。
 制作者として、この問題にも立ち向かっていきたい。

 とはいえ、これは何度か長編を完成させてみないことには、コツはつかめない。かといって、長編なんて簡単に完成できるわけもないから、経験を積むのも楽じゃない。そこで自分の経験談として注意点をまとめてみた。

ゲーム後半の落とし穴


『ゲーム後半が面白くない』という場合には、いくつかパターンがある。例を挙げてみたい。

回復の充実

 多くのゲームでは、進行するに従って回復手段が充実していく。
 全体回復、蘇生、MP回復などがゆるい制約で使えてしまうと、ちょっとやそっとの攻撃を受けても味方が全滅しなくなる。
 特に敵がしぶとい場合は、ただダラダラした戦闘が続いてしまう傾向も。
 回復手段が充実することで、緊張感がなくなってしまうわけだ。

 これについては既に細かく書いたので、別記事参照。
 →回復魔法の問題点

戦法のパターン化

 ゲームが中盤から後半へと進行する中で、プレイヤーも次第に慣れてくるもの。するとある程度、戦法も固定されていく。

 自分なりの戦法を編み出せるというのは、良いゲームの条件でもあるため、必ずしも悪いとは言えない。けれど、戦い方があまりにも変化に乏しいと、プレイヤーだって飽きてくる。

 中にはゲーム序盤〜中盤から同じ技ばかりを使用するようなゲームも見かける。DQ7の『剣の舞』『怒涛の羊』、あるいはFF5の『みだれうち』なんかが有名なところか。
 やはり、後半に手に入れる魔法や特技は、中盤までのものよりも役立つものにしたい。

 『回復の充実』と重なるけれど、補助や回復についてもパターン化を引き起こしやすい。

  • 毎ターン全体回復をかけておけばOK。
  • とりあえず攻撃力アップの魔法をかけておけばOK。

 こんな感じで、作業的な要素が強くなってきた場合は要注意。
 戦法を固定させないためには、敵のバリエーションを増やすことも重要となる。

  • 状態異常に弱い敵
  • 物理攻撃が強力な敵
  • 数で攻めてくる敵
  • 一体で登場する強敵

 このようにすれば、プレイヤーの取る戦術の幅も広がりやすい。

戦闘演出の長期化

 意外と盲点になりそうなのがこれ。
 大抵のゲームは序盤から後半にかけて、使用する技が派手になっていくもの。その結果、後半は演出の長い技ばかりになりやすい。そうなると「見てるだけ」の時間が長くなってテンポが悪化していく。
 結果、プレイが面倒になってしまいがち。

 そこで、後半の技は短くカッコいいものを意識してみよう。
 FF7以降(リミット技など)にあるような特定条件で使える大技もオススメ。毎回使えるわけではないので、多少演出が長くてもゲームテンポを壊しにくい。「通常技はテンポよく」「大技は少し長く」とメリハリを付けておけば安心。

 ちなみに、昔のドラクエのように通常攻撃が強いゲームはこれに陥りにくい。通常攻撃中心で戦うゲームは、地味で古臭いと思われがちだけど、なかなか侮れない長所だったりする。

テンポ悪化要素の相乗効果

 これこそが『RPGをクリア手前で飽きる現象』の決定的な原因だと、僕は推測している。

 ゲームというのは大抵の場合、序盤〜後半に向かって難易度が上がっていくもの。この難易度上昇への意識が落とし穴になりやすい。
 難易度上昇のための調整は色々と考えられる。『敵の強化』『ボス戦の多用』『ダンジョンの巨大化』『トラップの悪質化』『エンカウント率の増加』などなど……。

 一つ一つでは大した問題ではないかもしれない。実際、「後半のダンジョンがあっさりでは手応えがない」という人は多いと思う。
 しかし、これらが集まると……

  • 後半のダンジョンは一戦闘にかかる時間が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンはボスの数が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンは広さが序盤の二倍
  • 後半のダンジョンは謎解きにかかる時間が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンはエンカウント率が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンは全滅率が序盤の二倍

 例えば、序盤のダンジョンについて……

  • 移動 :10分
  • 謎解き:10分
  • ザコ戦:20分
  • ボス戦:10分

 だったのが、後半のダンジョンになると……

  • 移動 :20分
  • 謎解き:20分
  • ザコ戦:160分
  • ボス戦:40分

 というように、気づいてみれば、何倍も面倒なダンジョンになっていたりする。
 これは『全滅によるやり直し』を想定していない時間なので、さらに膨れ上がる可能性もある。
 とりわけザコ戦にかかる時間が、予想以上に増えやすいので気をつけたい。『1戦闘の時間』『ダンジョンの広さ』『エンカウント率』といったほとんど全てに影響を受けるためだ。
 また、これは謎解きの途中にはザコ戦がない前提で書いている。謎解き中にザコが襲ってくるような設計ならば、さらにさらに酷くなるかもしれない。
 序盤のダンジョンは50分でクリアできたのに、後半のダンジョンは4時間かかる。……なんて、プレイヤーもうんざりしてしまうこと請け合い。

面白い後半を実現するには?


 ここまでは『ゲーム後半が面白くなくなる』要因を挙げてみた。それでは、そうならないためにはどうすればよいだろうか。
 いくつか考えてみた。

ゲームテンポを意識する

 後半のゲームテンポが悪化していないか、意識して調整を行う。
 特に戦闘はザコ・ボス共、無闇に長引かせないことを心がける。『短期決戦』を意識するといいかもしれない。

 上に挙げた『テンポ悪化要素の相乗効果』にある通り、色んな要素が戦闘テンポの悪化には関わってくる。
 短期決戦にするためには、回復手段を制限する必要があるし、戦闘アニメの長さも抑える必要がある。
 ボス戦も短期決戦ならば、同じことの繰り返しにもなりにくい。結果的に戦法のパターン化が起こりにくいという利点もある。

 また、ダンジョンの長さやエンカウント率もほどほどにして、戦闘回数が過剰にならないようにしたい。
 どんな名作でも同じことを千回も繰り返せば、いずれ飽きが来るのは避けられない。戦闘回数を抑えれば、それだけ底が知れるのは遅くなる。「同じことを繰り返している」という作業感も大きく軽減される。

 これらは机上の計算だけで予測することは難しいので、作者自身が実際にテストプレイしてみるのが肝心。うんざりなゲームテンポになっていたなら改めよう。
 特に集団での制作の場合、マップ担当や演出担当ががんばりすぎた結果、過剰になってしまうこともある。
「作ったものは使わないともったいない」という気持ちは分かるけれど、削るべきものは削ろう。後半だからといって、何でもかんでも拡大すればよいというものではない。

ラスボス戦を考える

 どんなラストバトルを作りたいかを開発途中から考えてみよう。
 ラストバトルとは、ゲームデザインの結晶とも考えられる。設計がよくできていれば、自然とよくできたラストバトルへと繋がる。

  • ゲームシステムが活かせるラストバトル
  • キャラクターの個性が活かせるラストバトル
  • 物理と魔法の両方が活かせるラストバトル
  • 色んな属性が活かせるラストバトル

 逆に設計が適当で何も考えていないと、ラストバトルに歪みが出やすい。

  • 毎ターン回復魔法を放ちながら、ただ強い攻撃を放つだけのラストバトル
  • 長い演出を延々と見せられるラストバトル
  • 今までのゲームシステムを否定するようなラストバトル
    →例:パーティバトルが基本だったのに、なぜかラストだけタイマン。
    →例:SRPG的な戦闘システムなのに、移動もなく殴り合うだけ。
    →例:アクション戦闘なのに、なぜかラストがシューティング。
    →例:アクション戦闘なのに、なぜかラストが音ゲー。

 大局観のないゲームシステム、その場しのぎのゲームバランスからはまともなラストバトルを生み出すのは難しい。

 そのためにも、大雑把でよいから早い内に理想のラストバトルのイメージを持っておきたい。それこそ、ゲームシステムやキャラクターの能力、登場する魔法・特技を決める段階で、構想を立ててしまってもよいと思う。

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【RPG制作講座】回復魔法の問題点

2018年10月27日

 戦闘バランスを取る上で最も難しいのは、なんといっても回復魔法である。
 ※この記事では、代表として『回復魔法』という言葉を使っていますが、『回復呪文』だろうが『回復アイテム』だろうが、本質は変わりません。

 特に全体回復が強力過ぎる場合のバランス調整は非常に難しい。
 どれだけダメージを受けていても、一度の回復魔法で立て直しができてしまうためだ。
 これが低いコストで使用できてしまう場合、バランス調整が非常に難しくなる。
『コストが低い』とは主に消費MPが、小さいことを意味する。あるいは、消費MPが大きくても、戦闘中、道具によって制限なくMP回復できるなら大差はない。

適切な回復魔法の場合


 ドラクエを例にして、ボス戦でのモデルケースを考えてみる。
 左が現在HP/右が最大HPである。

  • 勇者:HP 50/220
  • 戦士:HP150/250
  • 盗賊:HP180/200
  • 僧侶:HP160/180

 状況としては……

  • 勇者はもはや瀕死。ただちに回復すべき。
  • 戦士は回復するに越したことはないが、後1ターンは耐えられるかも。
  • 盗賊や僧侶はわずかにHPが減っているだけ。
    攻撃を受けにくい後衛であるので、後回しでもよい。

 回復魔法は勇者がベホイミ、僧侶がベホマ、ベホマラーを使えるとする。
 回復しながら戦うにはどうすればよいだろうか。

  • ベホイミ :消費は手頃な単体中回復
  • ベホマ  :消費は少し高いが単体全回復
  • ベホマラー:消費はかなり高いが全体中回復

 プレイヤーの状況判断によって、色々と考えられるはず。

  • 僧侶が勇者にベホマ、勇者が戦士にベホイミ、残り二人は攻撃。
  • 僧侶が全員にベホマラー、勇者が自分にベホイミ、残り二人は攻撃。
  • 僧侶が勇者にベホマ、残り三人は攻撃。
  • 僧侶が全員にベホマラー、残り三人は攻撃。

 このような選択肢が発生するのは、全体回復の消費や効果が制限されていてこそ。

強力過ぎる回復魔法の場合


 これが……

  • ベホマラー:消費は手頃な全体全回復

 だったとしたら、選択肢はほぼなくなってしまう。

  • 僧侶が全員にベホマラー、残り三人は攻撃。

 これ以外を考える必要はない。
 戦闘不能や状態異常がなければ、どんな危機からでも一度の回復で立て直せてしまう。全員が瀕死だろうが、一人がわずかなダメージを受けただけだろうが、大差はない。
 それどころか、蘇生まで簡単にできてしまう作品も時々見られる。

  • 全員を瀕死に追い込む強力な全体攻撃を喰らっても、全体全回復すればいい。
  • 一撃必殺の強力な単体攻撃を喰らっても、蘇生すればいい。

 極端になれば、こういった行動を毎ターン繰り返すだけになる。
 外面だけは激しく緊張感があるように見えるかもしれない。けれど、実態はパターン化した単調作業に近い。
 なんせ、プレイヤーの選択肢が攻撃と回復の実質二択しかない。
 つまり、初代ドラクエ(一人旅)において『ホイミ/ベホイミ』で回復しながら、殴り合っているのと大差ない。ゲーム性が昭和の時代から進歩してないのだから、そりゃあ面白くないはず。

蘇生常態化の問題点


 さらに言うと、蘇生が常態化したバランスの問題点は納得感や爽快感に欠けることだ。

 というのも、本来ゲームにおける戦闘不能(死亡)とはプレイヤーの失敗を意味する。
 戦闘不能と蘇生を繰り返すということは、何度も失敗を見せられるということである。簡単に立て直せるとはいっても、決して気分がよいものではない。

 で、あるならば、わざわざそんなバランスにする必要はないのでは?――というのが僕の意見。

バランス調整案


 それでもあえて、コストが低くかつ強力な回復手段が存在する前提で、バランス調整する方法を考えてみよう。主にボス戦を想定してみた。

敵をしぶとくする

 コストの低い回復魔法ですら、底を突きかねない程に敵をしぶとくする。
 いかに節約させるかをプレイヤーに要求することになる。
 酷い場合はMPだけでなく、アイテム(それも99個とか)が底を突くまで戦闘が長引く場合も。
 行き過ぎると、果てしなくダルい。個人的に勘弁して欲しいバランスの筆頭。

敵の攻撃を激しくする

 HPが全快の状態からでも、1ターンの行動で死人が出るほど激しくする。
 安全に受け切るには、装備を整えたり、防御魔法などで守る必要がある。
 あるいは戦闘不能者が出る前提で、蘇生などの立て直し技能をプレイヤーに要求する。

 この調整だと、安全に1ターンを受けられるようになれば、勝ちはほぼ確定する。

プレイヤーのミスを誘う

 プレイヤーのミス・判断遅れを誘って、パーティを崩壊させる。
 主にFFのATBなど、リアルタイム性があるシステムで実現しやすい。

運の要素を入れる

 クリティカルや低確率で放つ強力な攻撃を織り交ぜる。運が悪ければ、回復役が即死してしまってピンチに。

 あるいは、行動順序にランダム性を持たせる。
 回復役がボスに確定で先行(あるいは確定で後行)できない状態ならば、安定した回復は難しい。運が悪ければ、連続で攻撃を受けてしまうかもしれない。それによって、一定の緊張感を醸し出す。
 ドラクエによくある場面ですね。

状態異常

 状態異常を織り交ぜることで、毎ターンの全体回復だけでは間に合わないようにする。
 全体大ダメージ+状態異常という悪夢のような技が、当たり前に存在するゲームも。
 完全な対策が得られるなら、勝ちは確定する。
 完全な対策がないなら、上と同じで『運の要素』が絡んでくる。

相性の要素を入れる

 相性が悪い攻撃を喰らえば、1ターンで戦闘不能に追い込まれるようにする。これはメガテンシリーズなどが有名。


 以上の通り、対策が極端なものばかりになっていることが分かるはず。
 味方の回復がインフレするならば、敵の攻撃もインフレさせなければ釣り合いが取れないというわけだ。

  • 長々と戦った末に、MPが切れて全滅
  • 適切な防御手段を取らなければ全滅
  • 操作ミスすれば全滅
  • 運が悪ければ全滅
  • 状態異常に対処できなければ全滅
  • 装備や仲間の相性が悪ければ全滅

 これらはかなり危ういバランスといえる。
 長期戦の末の全滅は、消え去った時間の長さからプレイヤーの心を折りやすい。かといって、対策不足や運の悪さで瞬殺されてしまうのも、やはり無理だと諦めてしまいやすい。
 一歩間違えれば、単なる運ゲー、理不尽ゲーでしかなくなる。
 回復手段を制限しなかった結果、皮肉にもライトユーザに厳しいゲームになってしまうわけだ。

 どうしても、強力で手軽な回復を使いたいならば、いっそヌルゲーにしてしまうのも一つの手。
 普通にやっていれば全滅しないし、ボス戦も長引かない。
 ゲーム性は低いし、手応えはないが、快適ではある。そうやってライトユーザ向けを狙う。
 正直、大して何も考えず強力な回復を用意するよりは、これぐらい開き直ったほうが筋も通っているかもしれない。

まとめ


 このように、強すぎる回復は戦闘バランスを破壊しやすく、調整が非常に難しい。素直に強力な回復手段は制限したほうがよいというのが、筆者の意見となる。

  • 誰を回復するか?
  • ひとまず防御させてしのぐか?
  • 今は回復せず、MPを温存しておくか?
  • ここはMPを大きく消費してでも全体回復しようか?

 バランスのよいRPGは、こういった色んな判断を求められるようになっている。判断を求められてこそ、真の緊張感は生まれるといえる。
 回復手段を適切に制限することで、緊張感を保とう。

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