【RPG制作講座】ゲーム性を意識したシナリオ

2023年12月08日

 小説、映画、漫画、アニメ……ストーリー性を持った媒体は様々に存在するが、ゲームもその一つである。
 ゲームにもRPG、シミュレーション、アクション、ADVというように様々なジャンルが存在する。

 シナリオは媒体やジャンルによって、最適なものを書く必要がある。
 というわけで、RPGのゲーム性を意識した上で、どのようなシナリオを書けばよいかを考えてみたい。
 逆に「シナリオを活かすために、どのようなシステムを用意すればいいか」という観点もいくつか書いている。

 筆者は個人制作者なので、もちろんゲームデザイナー兼シナリオライターという立場である。
 現代のプロのゲームクリエイターは専門化されていて、両方に精通している人は希少らしい。なので、両方をやっている人間でしか得られない観点を出せればと思っている。

 そのまま個人制作で活かしてもいいし。ゲームデザイナーとシナリオライターで分業する時の注意点として活かしてもよいかと思う。

 なお、過去にも以下のような記事を書いているが、今回はより詳細に掘り下げている。

媒体としてのRPGを考えてみる

 https://newrpg.seesaa.net/article/367906483.html

目次


仲間の存在

仲間の加入

仲間は徐々に増やす

成長システムとの兼ね合い

仲間の離脱

仲間の人数

かわいい子には旅を

戦闘

ストーリーとゲーム性の一致

ボス戦を意識する

プレイヤーの操作を尊重しよう

イベントバトルの功罪

ストーリー進行

ゲームテンポを殺さない

メッセージ表示は快適に

ダンジョン

町人を活用しよう

仲間との任意会話

自由度

目的は明確に

エンディング

主人公の活躍

無口主人公

主人公の能動性

成功体験


仲間の存在


 RPGのシナリオを考える上で、まず大事なのは仲間の存在である。
 多くのRPGでは主人公は数多くの仲間を引き連れて、冒険することになる。


 仲間はプレイヤーにとって、ゲームシステム上の駒である。だが、そこにストーリー性が紐づけば、仲間は単なる駒を超えた存在にもなる。
 魅力的な仲間達を操作できるということは、RPGの大きな魅力だ。これを活かさない手はない。

仲間の加入

 仲間の加入はストーリー的にもゲーム的にも、大きな見所となる。魅力的なキャラクターが仲間になった時は、プレイヤーにとっても強い喜びとなるはず。
 さらには、加入した仲間が戦闘でも大活躍できる性能だった時は、大いに盛り上がるだろう。

 そんなわけで、ゲーム序盤は仲間の加入イベントを用意するのがセオリーとなる。
 ヒロインとの運命の出会いや、頼りになる相棒との出会いを、華々しく演出しよう。

 活躍機会を与えるためにも、仲間の加入は遅すぎないほうが望ましい。中盤ぐらいまでには、大半のキャラを仲間にできるぐらいが目安だろうか。

 特に注意したいのは序盤の仲間の加入だ。
 多くのRPGでは一人旅を含めた少人数では、取れる戦術が限られてしまう。

 その中でも、回復役がいない状況がずっと続くのは厳しい。回復役は比較的、早めに加入させておこう。ドラクエシリーズのように、主人公にある程度の回復技を覚えさせておくのもセオリーの一つだ。
 なお、ポケモンのように回復技を前提としたゲームバランスになっていない作品はこの限りではない。

 その他の仲間についても、ゲーム性に合わせて調整したい。
 例えば、通常攻撃しかできない少人数の旅がずっと続いてしまうと、プレイヤーも退屈に感じてしまう。早めに魔法など戦術の広がるスキルを持った仲間を加入させてあげよう。

仲間は徐々に増やす

 ならば、冒頭から大勢の仲間を加入させてはどうか?
 ……と、思うかもしれないが、そちらも避けたほうが無難だろう。

 というのも、一人一人に焦点を当てる機会が減るので、プレイヤーがキャラクターを把握しづらくなる。
 また、システム的にもいきなり大勢の仲間を管理する必要が出るので、慣れない内からプレイヤーの負担が大きくなってしまう。

 単純にストーリーのネタが減ってしまうのも厳しい。仲間の登場と加入のイベントはそれだけで強い牽引力があるので、活用しないのはもったいないと思う。

 もっとも、この辺は作品の狙いによって様々なやり方があるので、柔軟に考えて欲しい。
 例えば、冒頭からいきなり多人数パーティにした代わりに、徐々に仲間を掘り下げていくというスタイルもある。

成長システムとの兼ね合い

 成長・強化システムと仲間の加入・離脱には相性がある。ストーリーを作成する上で無視できない部分だ。
 これについては、過去の記事でも詳しく書いている。

パーティ編成による分類

 https://newrpg.seesaa.net/article/302353840.html

 例えば、ドラクエ6〜7の職業システムが有名だろう。
 両作品の職業は戦闘回数によって、呪文・特技を習得するようになっている。
 後半、仲間になったキャラは職業の初期レベルが固定になっており、扱いづらくなってしまう。

 また、レベルアップボーナスのようなシステムがある作品だと、後半に高レベルで仲間になるキャラは不利を受けてしまいがち。
 このようなシステムはそもそも採用しないほうが無難だろう。

 逆に言うと昔のドラクエのように、レベルと装備だけで能力が決まるような単純な設計ならば、加入時期は遅くとも大きな問題は起きない。

 あるいはドラクエ8や11のように、ポイント振り分け型のシステムも問題は起きにくい。仲間になってから自由にポイントを振り分けられるようにしておけばいいだろう。
 ただし、あまりにも振り分けに時間がかかるようなシステムだと、プレイヤーの手間が増えてしまうことには注意したい。

仲間の離脱

 ストーリー上の都合で、頻繁にパーティ編成を変えてしまうと、結果的にシステムを十分に体験できなくなってしまう。(FF13の前半など)

 さらに厳しいのは仲間の永久離脱だ。
 成長システムが凝ったものになればなるほど、仲間の離脱は好まれなくなる。せっかく手間をかけて育てたのにストーリーの都合で離脱されてしまっては、腹立たしくもなるというもの。

 こういった作品の場合は、ゲームシステムの段階でフォローをしておきたい。
 FF5では離脱した仲間の能力を引き継いだ後継キャラが加入する。
 FF7ではマテリアシステムによって、モノを成長させる仕様になっており、離脱による戦力低下が痛手にならないようになっている。

仲間の人数

 仲間の人数が多い作品は、単純に管理の手間が増えるため、複雑な成長・強化システムとの相性が悪い。

 例えば、軌跡シリーズには数十人という膨大な仲間が登場する作品もある。それらがストーリー展開によって加入・離脱するのだが、その度に多数の装備を組み直さないといけないようになっている。
 場合によっては、パーティ分割ダンジョンなどで12人以上の装備を整える必要があったりするが、これはプレイヤーにとって無視できないストレスになる。

 仲間になる人数が多い作品でも、戦闘に参加する人数が少なく、限られたキャラだけを整えればいいなら手間は軽減できる。
 無理に大勢の仲間を使わせるようなストーリーおよびシステムを作ると、それだけ手間がかかることは気をつけておきたい。

かわいい子には旅を

 仲間として旅に参加するキャラクターは、ゲーム的にもシナリオ的にも出番がとても多くなる。
 故郷で主人公の帰りを待つヒロインと、主人公と共に戦うヒロインならば、後者のほうが圧倒的に愛着が湧くはずだ。

 漫画やアニメ、ADVならば、「戦士として敵と戦う主人公」の裏で「王女として政治に奔走するヒロイン」を描いても十分に魅力を出せるだろうけれど、RPGにおいてはこれも厳しい。
 RPGでは、プレイ時間の大半が主人公の周辺の出来事として描かれるためだ。特に戦闘や探索の占める割合は大きい。

 それらの際に、主人公に同行していないヒロインは圧倒的に描写が不足してしまう。同行するヒロインと比較して、プレイヤーの目に触れる時間に100倍以上の差がつくことすらある。
 ヒロインは主人公の幼馴染で小さい頃からずっと仲良くしていた――なんて説明をされたところで、プレイヤーはその体験を共有していないのだから仕方ない。

 ヒロインを例に挙げたけど、他のキャラクターも同様である。
 敵キャラならば、実際に何度も戦って苦戦した相手のほうが印象も強くなる。
 キャラクターの印象を強くしたいなら、ゲームシステム上の出番を用意してあげよう。

戦闘


 一般的なRPGでは戦闘がゲーム性の肝になる。


 RPGのゲーム性とは事実上戦闘であり、それを意識せずしてストーリーは作れない。必然的に、ストーリーも戦闘を意識したものにする必要がある。
 ※戦闘のないRPGのようなごくわずかの例外もありますが、今回は置いておきます。

ストーリーとゲーム性の一致

 例えば、戦いを否定する平和主義的なストーリーを作りたいとしよう。主人公やヒロインはひたすら暴力を否定し、敵との対話を模索し続ける。

 このようなストーリーのコンセプトと、ひたすら敵を倒すことを要求するゲームシステムとの相性の悪さは直感的に分かると思う。
 綺麗事を言っていても、結局は戦闘で物事を解決するならば、どこか偽善的な印象をプレイヤーに与えてしまうだろう。

 ならば――と、戦闘の回避を推奨するようなシステムを導入してしまうと、今度は戦闘システムを作り込む意義がなくなってしまう。
 
 そんなわけで、オーソドックスにRPGを作るならば、ストーリーは戦いを前提にすることが無難だろう。

ボス戦を意識する

 多くのRPGではボスを倒すことが物語の目的に直結している。

 ボスには中ボスからラスボスまで色々とあるが、ボス戦こそがRPGの華だと言ってもよいだろう。
 従って、RPGのストーリーもボス戦を意識して作成することが望ましい。

 そのためにも、必要なのは魅力的な敵キャラだ。
 非道な悪党でも、悲劇の悪役でも、正々堂々としたライバルでもいい。魅力の出し方は様々である。
 ベタではあるが『四天王』のような敵幹部を用意するのも王道だ。

 敵キャラには出番と対決の機会が欠かせない。顔見せ的なイベントを作ったり、複数回の対決機会を設けたりして、印象を強めていこう。
 こういったストーリー上の宿敵との激戦は、ゲームでしか得られない熱さがある。

 ありがちなのは、各エリアの最後にその場限りのボスが現れるばかりというパターン。そうならないように、敵キャラはしっかり意識して描こう。

プレイヤーの操作を尊重しよう

 ゲームである以上、プレイヤーが操作する戦闘は大切であり、尊重しなければならない。ストーリーの都合でプレイヤーの操作をないがしろにするような展開は、なるべく避けたいところだ。

決着のつかないボス戦

 プレイヤーが戦闘でボスを倒しても、ボスがピンピンしてるパターン。
 「なかなかやるな。今日はここまでにしよう」などと宣って、ボスは颯爽と去っていく。閃の軌跡などで散々に見せられた一幕だ。

 一度の戦闘だけで決着をつけてしまうと、敵キャラの掘り下げができないため、ある程度は仕方ない。
 とはいえ、このような展開は「プレイヤーが勝利した」という達成感を損ねてしまう。こういった展開があまりにも多すぎると、戦闘がどんどん茶番じみていくため、プレイヤーもあまり気分はよくないはず。

イベントシーンによる戦闘

 ゼノブレイド2〜3では、プレイヤーが介入できない戦闘ムービーが非常に多い。
 プレイヤーが戦闘でボスを倒したのにも関わらず、それがなかったかのように長い戦闘ムービーが挟まれる。通常の戦闘画面では不可能な派手な演出で、敵との決着を大いに盛り上げる。

 ……が、その一方で、プレイヤーの操作する戦闘は、シーンの合間に挟まれるミニゲームの如き有様である。個人的には「プレイヤーの操作はいらなくね?」「アニメでも見たほうがよくない?」という印象すら受けてしまった。

 こういった問題は戦闘とムービーの落差を小さくすれば、ある程度は違和感を抑えられるかと思う。例えば、戦闘の延長であるかのように決着演出を実行すればよい。

イベントバトルの功罪

 強制敗北戦闘や強制勝利戦闘といったイベントバトルは、RPGの定番である。

 例えば、圧倒的な強さを持ったボスに強制敗北させることで、将来の再戦への期待を持たせることができる。
 ドラクエ5における少年期の最後のシーンは有名だが、強く印象に残った人も多いだろう。

 一方でデメリットもある。イベントバトルは原則、プレイヤーの操作によって結果を覆せない。
 プレイヤーがどんなにキャラを鍛えて的確な操作をしても、意味がないということでもある。その点では、あまり喜ばしいものではないだろう。
 ※一応、ある程度ダメージを与えないとゲームオーバーになるといった調整にすることでゲーム性を付与できるが、負けたという印象は残る。

 個人的に気になったのはFF9。
 この作品では、ストーリーの山場を三度に渡って強制敗北戦闘で潰している。しかも、相手はタダの人間なので、わざわざ何度も強制敗北させる理由はよく分からない。
 FF9ではこのせいもあって、ストーリーの高さに反して盛り上がるボス戦が少なくなっている。非常にもったいないように思う。

 そんなわけで、強制敗北を使うにしても乱用は避けたいところだ。
 なお、強制勝利戦闘も「やらされている感」という点では同じだが、こちらを多用する作品はあまり見ないので問題になることは少ない。

ストーリー進行


 ゲームの特徴は双方向性があること――つまり、プレイヤーが操作できることである。そのため、ストーリーもそれを意識したものを作りたい。

 ADVのようなジャンルならば、ゲーム性を重視しない作りにしてしまうのも一つの手ではあるが、この記事ではあくまでゲーム性との両立を目指したシナリオを考えていきたい。

ゲームテンポを殺さない

 イベントがあまりにも長すぎると、ゲームのテンポを削いでしまう。
 極端なものになると、ゲームをやっているというより動画を見ていると揶揄される作品(いわゆるムービーゲーなど)まである。

 SFC時代のドラクエ5やFF5〜6を改めてプレイすると、ストーリー性は高いのにセリフが簡潔なことに驚く。
 容量の制約という事情もあって、削れるところをバッサリと削った結果かもしれないが、個人的には一つの理想系だと思っている。

 そこまで思い切るのは難しいにしても、セリフを簡潔にしたり、適時プレイヤーの操作を挟むことによって、ゲームテンポを損なわないようにしたい。

 ただし、プレイヤーの操作を挟むにしても、『フラグ立て』や『たらい回し』が多いとそれはそれで問題だ。「あっちへ行け」「こっちへ行け」と延々と本題に入らないようではストレスになってしまう。
 短いイベントなら、場面転換を挟みながらサクッとまとめてしまってもよいだろう。

 コツはそもそも、ストーリーを複雑化しすぎないこと。
 ストーリーを複雑にすればするほど、プレイヤーに対して必要な説明は増えていくので、こういった問題も増えていく。
 時にはバッサリ切り捨てる決断も必要だ。

メッセージ表示は快適に

 あまり指摘されることは少ないけれど、メッセージ表示のシステム周りは大事にしたい。

 メッセージ表示が遅かったり、立ち絵を表示する度に時間がかかったりする作品は、それだけでかなりテンポが悪く感じられる。文字が小さかったり、横長のメッセージウィンドウいっぱいに表示するのも非常に読みづらい。
 さらに酷い例になると、白っぽいウィンドウに白文字(さすがに黒縁つき)という嫌がらせのようなものすらある。

 RPGにおいて文章を読む時間はとても長いので、しっかりと注意を払っておこう。

ダンジョン

 RPGに欠かせない要素としてダンジョンの存在がある。
 ダンジョンに潜り、大勢の雑魚敵を倒しながら、奥のボスを倒すことが毎度の目的になっているRPGは数多い。

 ストーリーを考える上で、どのようなダンジョンを登場させるかも考えておこう。
 ひたすら洞窟ばかりではなく、バリエーションを確保したいところだ。ストーリーの山場ならば、それにふさわしいダンジョンが欲しい。

 これについても過去に考察している。

ダンジョンバランス@ 面白いダンジョンとは?

 https://newrpg.seesaa.net/article/210530419.html

町人を活用しよう

 ゲームシナリオの特徴は双方向性だと既に述べたが、その中には「読んでも読まなくてもよい」という自由度も含まれている。

 特に一般的なのは町人の存在だろう。
 町人に話しかけるかどうかは、プレイヤーの判断に委ねられている。

 古いRPGでは、町人に話しかけないと次の行き先も分からないような作品も多かった。現在ではメインストーリー上で常に行き先を明示するのが一般的である。

 ともあれ、現在のRPGでも町人は有効活用していきたい。
 例えば、メインストーリーで垂れ流すと冗長になってしまうような細かい説明を、町人に任せてしまおう。
 このようにすれば、テンポよくゲームを進めたいプレイヤーと、じっくり文章を読みたいプレイヤーへのアプローチを両立できる。

 なお、過去に以下の記事を書いている。

町人のセリフ・配置

 https://newrpg.seesaa.net/article/383233037.html

仲間との任意会話

 ここでいう『仲間との任意会話』とは、ドラクエシリーズのように仲間と会話するシステムを指している。
 ドラクエのようにメニュー画面から呼び出せてもいいし、拠点や酒場、ダンジョン内の安全地帯などで話しかけられるようにしてもいい。


 扱いとしては上述の町人との会話と同じだが、仲間の存在感を高めることができる。目指す方向によっては採用してみよう。

自由度

 ゲームには自由度があるので、それに沿ったストーリーを作ることもできる。

 選択肢によるストーリー分岐や、攻略が任意のサブクエストなどが代表的だろう。あるいは仲間との恋愛要素を設ける作品もある。

 これについては、過去に以下の記事を書いている。

自由度

 https://newrpg.seesaa.net/article/377351764.html

 なお、必ずしも無理にそのような要素を盛り込む必要はない。
 ストーリー分岐があると周回プレイが前提になりがちだが、ゲーム部分は大半が同じなので飽きやすくなってしまう。サブクエストは基本的に寄り道なので、メインストーリーのテンポが悪化する。

 メインストーリーに注力するから分岐やサブクエストは必要ない――というのも立派な判断だ。

目的は明確に

 次にどこへ行けばいいのか分からないシナリオは、プレイヤーを困惑させやすい。

 現代のRPGではメインストーリーで行き先を明示するのが大半だ。もちろん町人との会話など、プレイヤーが自発的に情報収集することをも求めてもよい。
 どちらの方針を取るにせよ、何も考えなかった結果、単なる不親切になったという状況は避けたい。

 以下はありがちな不親切である。

  • 目的地の名前は明示していても、肝心の場所がノーヒント。
  • メインストーリー上の説明を見落とすと、以降説明が読めなくなる。

 今時の作品は、システムの機能で目的地を知らせてくれるものが多い。メニュー画面のあらすじやクエスト一覧などが一般的だろう。

エンディング

 特にこだわりがないなら、ゲームのエンディングはハッピーエンドを用意すべきだと考えている。

 小説などの他媒体でも、基本的にハッピーエンドのほうが無難だと思うが、ゲームは特にその必要性が高い。
 というのも、プレイヤーに労力を要求する点が、ゲームと他の媒体との決定的な違いだからだ。
 そして「プレイヤーの操作によって困難に打ち勝つ」のがゲームの基本構造であるため、「どうあがいても絶望」というのは、それに反してしまう。
 何十時間も苦労した上で強制バッドエンドを見せられるのは、プレイヤーにとって相当な苦痛となってしまうだろう。

 もちろん、選択次第でバッドエンドになるような要素もあってよい。バッドがあってこそ、ハッピーが際立つという考えもある。
 ただし、長いプレイ時間が無に帰すような仕組みはやめたほうがいい。

 酷い例としてはペルソナ1が有名だろう。
 このゲームは途中の選択肢を誤ると、バッドエンドに分岐して物語の途中で終了してしまう。取り返しは一切つかない。
 分岐点まで普通にやると50時間程度かかるので、当時何人ものプレイヤーが心を折られた。……というか、エンディング分岐があると気づかないままゲームを終えたプレイヤーもいたとか。

 直前でもフラグを満たせばハッピ―に分岐できるとか、短〜中編で最初からやり直してもそこまで苦にならないとか、バッドを見るとすぐに分岐からやり直せるとか、何らかの配慮が欲しい。

主人公の活躍


 RPGの多くは基本的に主人公(=プレイヤー)を中心とした一人称の物語である。ゆえに、その物語も主人公を中心とすることが望ましい。きちんと活躍の機会を設けてあげよう。
 ※群像劇など、特定の主人公を定めない作品もあります。

無口主人公

 注意が必要なのは無口主人公を採用した場合だ。
 ゲーム以外の媒体では、まず見ることのないタイプの主人公だが、その扱いは意外と難しい。

 特に仲間がよく喋る作品だと、主人公の存在が希薄になりやすい。仲間同士の会話中心で物語が進んでしまうと、主人公が何のためにいるのか存在価値が疑わしくなってしまう。
 これについては、以下の記事で書いているので割愛。

無口主人公の考察

 https://newrpg.seesaa.net/article/295119708.html

主人公の能動性

 意外とありがちなのは、敵の思惑やその場の状況に振り回されているばかりで、主人公達が能動的に行動していないというケース。

 ゲームである以上、主人公が自らの意思で目的へ向かっているという感触は欲しい。
 主人公(=プレイヤー)の行動によって、事態を改善しているという実感が得られないようでは達成感が乏しくなってしまう。

成功体験

 もっと言うと、プレイヤーにははっきりと成功体験を与えてあげよう。

  • 悪役の撃破
  • 目的の達成
  • ヒロインや仲間からの信頼獲得

 当たり前のことなのだが、こういった当たり前がおろそかになる作品は珍しくない。

  • 倒しても倒しても、ボスが余裕綽々で去っていくので勝った気がしない。
  • 状況に振り回されるばかりで、気づいてみれば何も成し遂げていない。
  • 何をやっても裏目に出て失敗続き。
  • ストーリー後半になっても、パーティがギスギスしている。
  • ていうか、ヒロインが他の男とくっついた。

 上記のような作品に遭遇した経験のある人もいるかと思う。
 このような例はむしろ、ストーリー性の高い作品で遭遇しやすい印象すらある。話に凝りすぎたばかりに、基本がおろそかになっているのかもしれない。

 なお、この反対の失敗体験が駄目なわけではない。
 むしろ、アクセント的に失敗を入れたほうが成功は際立つ。特に序盤で急激に落として、そこから盛り上げていくようなストーリー構成は定番だと言えるだろう。

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posted by 砂川赳 at 18:52 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【RPG制作講座】アイテム合成システムの考察

2023年10月14日

 アイテム合成システムとは、複数のアイテムを組み合わせることで新たなアイテムを生み出すシステムである。
 ドラクエシリーズやアトリエシリーズなどが有名。
 『錬金』『鍛冶』『調合』『料理』『交換』など作品によって呼称が変わるが、基本的には似たようなものとなっている。


※参考:ドラゴンクエストヒーローズの錬金釜

 合成は多くの作品で採用されているが、なかなか難しいシステムだ。
 プレイヤーに要求する手順も多い上に、開発者側に要求される作業量もそれなりに多い。

 そんな合成システムについて、考察してみたい。

目次


合成システムの特徴

合成物

レシピ

性能の変化

合成システムのメリット

ゲーム性の強化

アイテムに意味を持たせる

アイテムの入手を細分化

世界設定の補強

合成システムのデメリット

手順が増える

不親切

アイテム数が増加する

売却が困難となる

素材アイテムのご褒美としての弱さ

バランス調整が困難

古典的システムとの競合

デメリットへの対策

素材アイテムを限定する

合成のルールを単純化する

素材の種類を絞る

アイテム入手時に説明を表示

図鑑でフォロー

素材毎に合成できるアイテムを明示

素材の売却で合成

金欠にする

合成に特化

合成できる種別を限定する

まとめ


合成システムの特徴


 一口に合成システムといっても、作品によって細部は異なっている。
 実際には以下のような要素によって、差別化される。

合成物

 何を素材として、何を合成するか。
 主に装備を中心としたアイテムが合成の生成物になることが多いが、料理なども仕組みはほぼ同じである。

 また、アイテムという枠にはこだわらず、それ以外にも応用可能である。
 例えば、スキルの合成のようなシステムを作成してもよいし、動物やモンスターの配合なども一種の合成といってよいだろう。

レシピ

 レシピ――つまり、合成するアイテムの組み合わせである。例えば、以下のようなパターンに分類される。

  • 店や宝箱、本棚などからレシピを入手するパターン。
    比較的オーソドックスなパターン。仕様上、取り逃しが発生しやすい。
  • 店毎に定められた選択肢で合成できるパターン。
    自由度は下がるが、取り逃しは発生しづらい。
  • 元になる素材があれば、進化先の候補が表示されるパターン。
    例えば、銅の剣を所持していた場合、「銅の剣と鉄鉱石を組み合わせると鉄の剣を合成できる」ようになる。
  • レシピは存在せず、何でも合成できるパターン。
    自由度は非常に高いが、ハズレアイテムも発生しやすい。また、制作者の想定以上に序盤から強力なアイテムが作成できてしまうこともある。

 以降では、どちらかというとレシピが存在するタイプを念頭に置いている。

性能の変化

 同じ生成物であっても、素材や合成する方法によって性能に変化がつく。
 例えば、ドラクエ11の鍛冶ならば『銅のつるぎ+2』というように強化される。
 アトリエシリーズはさらに複雑で、同じアイテムであってもほとんど別物のような性能に変化してしまうことすらある。

 同じアイテムを+1、+2……というように重ねて強化できる場合もある。

合成システムのメリット


 では、どういった狙いがあってゲーム制作者は合成システムを採用するのだろうか?
 そのメリットをまとめてみたい。

ゲーム性の強化

 いかにして強力なアイテムの合成を行うかをプレイヤーに考えさせることによって、ゲーム性を高める。

 目当ての素材が手に入るエリアを探索したり、素材を落とす敵を優先的に狩るといった戦略性が発生する。

 作品によっては、合成したアイテムをさらに新たな合成の素材にすることで、より強力なアイテムを作り出すなんてこともできたりする。
 場合によっては、序盤から強力な装備を作成できるなど自由度の高いゲームプレイが可能になる。

アイテムに意味を持たせられる

 一見して不要なアイテムが重要な素材になったりと、幅を持たせられる。
 これにより、アイテム収集を楽しくする効果がある。

アイテムの入手を細分化できる

 ダンジョンやフィールドの広い空間に何も置かないのは寂しい。あるいは大量に用意したクエストに報酬を用意したい。
 とはいえ、安易に強力なアイテムを放出してしまうと、すぐにインフレしてバランスが崩れてしまう。
 というわけで、アイテムを素材に分割して配置することで、プレイヤーに対する報酬をほどほどにコントロールできる。

 オープンワールドやダンジョンRPGなどの探索を重視する作品、あるいはネトゲやソシャゲなどプレイヤーを長く引き留めたい作品において、相性が良い方法だ。
 近年の作品では頻繁に採用されるので、プレイヤーとして経験があるという人も多いのではないだろうか?

 ぶっちゃけ水増しと言えば水増しである。

世界設定の補強

 作品の世界設定によっては「商人が強力なアイテムを販売する」という状況自体が不自然に感じられる場合もある。
 現代日本を舞台にした作品において、普通の店で魔法の剣を購入できたら違和感があるというわけだ。

 例えば、ペルソナシリーズでは異世界の敵から獲得したアイテムを素材とすることで、現実ではあり得ないような装備を作成しているという設定がある。

合成システムのデメリット


 冒頭で『なかなか難しいシステム』と表現したように、合成システムは扱いの難しいシステムである。
 実際のところ、個人的にはかなりデメリットも多いシステムだと感じているので、その点をまとめてみた。

手順が増える

 合成というシステムは必要な手順が多い。
 例えば、一例を挙げてみよう。

  • 宝箱や店からレシピを入手&購入。
  • レシピを参照し、必要な素材とその所在を確認。
  • 素材を捜索&入手。
  • 合成屋に戻って合成開始。
  • 合成時のミニゲームによって完成度が変化。

 ……というように、なかなか大変である。
 これは比較的、手間のかかる仕組みを想定した場合だ。例えば、どこでも合成を実行できる作品ならば、もう少し手順は緩和される。
 いずれにせよ、お金を貯めて買うだけの古典的な店よりも手間がかかるのは間違いない。

不親切

 合成をしようにも素材の入手先が分からないと「どこで手に入るのかも分からないアイテムを探す作業」になってしまいがち。
 勘や総当たりで探し回るか、攻略を見るか、あるいは成り行きに任せて見つからないなら諦めるしかない。
 このままでは、プレイヤーがシステムを活かすことは難しく、あまりゲーム性も高いとは言えなさそうだ。

 もし、そうならないようにしたいなら、ヒントを出す必要があるが、プレイヤーにとってはそういった情報を確認する手順がさらに増える。

 あるいは、ゲーム進行に応じて、自然と素材が集まるようにすれば手間は削減できる。
 ……が、根本的なことを言うと、それならばこんな手間のかかるシステムを採用する必要性は低い。普通の店――つまり「お金を貯めれば、良いアイテムを買えるシステム」を採用したほうが、手っ取り早い。

 ……と、なってしまうので、やはりプレイヤーに対して、多少の不便や面倒は許容してもらうしかない。その上で、ゲーム性を高める目的で合成システムを採用すべきだとは思う。

アイテム数が増加する

 合成には素材となるアイテムが必要となる。
 必然的にアイテム数が増加し、アイテム一覧が複雑化する。

 プレイヤー視点ではアイテムの管理が大変になり、作品の快適性を落とすことになる。
 制作者視点でも、もちろんデータ設定の手間が増える。

売却が困難となる

 合成システムの存在するゲームにおいては、一見して役に立たないアイテムが思わぬ合成の材料となることがある。
 システムの奥深さを高める効果があるが、一方で不用品の判別が困難になるということでもある。
 つまり、迂闊に不用品を売却できなくなるということだ。

 昔、初期装備の木刀を売り払うと最強武器が手に入らなくなるマイナーRPGがあったが、こういった問題が起こりやすくなる。

 上記の「アイテム数が増加する」と合わさって、さらにアイテム一覧が複雑化してしまう。

素材アイテムのご褒美としての弱さ

 素材アイテムはご褒美としての機能が弱い。

 なぜなら、素材アイテムは単体では機能しないため、入手直後のプレイヤーにとっては「何かよく分からないアイテム」であるためだ。
 そのため、プレイヤーの印象には残りにくい。

 古典的な宝箱から直接装備を手に入れる方式なら、手に入れた瞬間に有用であることが分かる。ご褒美としては非常に分かりやすい。

 お金を貯めて装備を買う方式なら、努力の蓄積が明確に反映されるのが利点だ。ドラクエでコツコツお金を貯めて鋼の剣を買った時は嬉しいもの。
 計画を立てて、それを達成するというのはそれ自体、ゲーム性の高い仕組みなのだ。プレイヤーにとって印象に残りやすい。

 対して、合成システムでは「いつの間にか溜まっていた素材でいつの間にか合成できるようになっていた」みたいなケースはとてもありがち。
 合成システムの存在する作品では、アイテムの入手量自体も増大する傾向にあるので、一つ一つのアイテムの印象も薄くなりやすい。
 わざわざ手間をかけたのに、古典的システムより印象で劣ってしまう――なんてことにもなりかねない。

 なお、他のご褒美の手段としては宝箱にレシピを入れる方法もある。
 レシピなら合成先のアイテムが想像しやすいという利点もある。
 ただし、この場合も即座にアイテムが手に入るわけではないので、やはり古典的方式よりもご褒美としては弱い。

バランス調整が困難

 プレイスタイルによる装備の差は古典的なRPGより大きくなるため、バランス調整の難易度も上昇する。

 序盤から強力な武器を作られてしまった結果、制作者の想定よりもずっと難易度が下がってしまうなんてこともあり得る。
 レシピなどの要素で縛ることで一定の対処はできるが、今度は逆に自由度は下がってしまう。

 一方でプレイヤーがレシピや素材を見つけ出せなかった結果、想定よりも難易度が上がってしまう場合もある。
 DQ10オフラインでは装備のレシピの場所が非常に分かりづらく、中盤の装備のままラスボスと戦うプレイヤーが続出した。

 ……というように、合成とはとにかく手順が多いシステムなので、プレイヤーが『何か』を見落とす可能性は高い。

 アトリエシリーズなんかは典型だけど、複雑な合成システムを使いこなせるかで、体感の難易度が大きく変わる。そのため、同じ作品に対して『簡単』というプレイヤーと『難しい』というプレイヤーが入り混じっていたりする。

 全体的な傾向として、合成システムは『二周目以降のプレイヤー』や『攻略情報を見ながらプレイするプレイヤー』『丹念に探索やシステムの活用を行うプレイヤー』にとって有利なシステムと言えそうだ。
 逆に言うと、攻略を見ずにさっさと進めたいというプレイヤーとはあまり相性がよくない。

古典的システムとの競合

 既に何度か触れたが「お金を払えば装備を買える店」や「装備が手に入る宝箱」といった古典的システムとの併用はどうするか?

 店や宝箱から十分なアイテムが手に入るなら、合成システムはそもそも不要である。

 せっかく手間をかけて装備を合成しても、すぐ次の町やダンジョンでより強力な装備が簡単に手に入るならガッカリしてしまうだろう。
 店や宝箱の品質を落とすのが無難なところだが、それらの喜びは必然的に弱くなる。

デメリットへの対策


 以上、合成システムのデメリットを多数紹介した。
 そこで次は、どうにかデメリットを軽減して、合成システムを活かすための対策案を考えてみたい。

 ※同時にメリットを削ぐようなものも多いので、取捨判断はお任せします。全てを取り入れればよいというものではないです。

素材アイテムを限定する

 「装備品は合成には使えない。あくまで合成は素材専用アイテムでのみ行う」「素材専用アイテムは別のカテゴリに表示される」といったルールを付ける。

 これによって、アイテム一覧が複雑化することを防ぐ。これなら、不用品の売却もやりやすくなる。
 一方で「一見、役に立たない弱い武器が強力な武器の材料に!」というような意外性はなくなるため、システムとしての幅は狭まってしまう。

合成のルールを単純化する

 例えば「ミスリルがあればミスリルソードやミスリルスピア、ミスリルメイルを作れる」というようにルールを単純化する。
 これなら非常に分かりやすい。プレイヤーにとっても「素材の入手は装備の入手に等しい」ということが直感的に伝わるはずだ。
 ※素材が単一のものを合成といってよいかは置いておきます。

 この手法はプレイヤーが使用している武器の種類が不明な場合にも有効だ。「斧を手に入れたけど、斧使いが誰もいない」なんて悲劇を防げる。

素材の種類を絞る

 上の延長線上の発想だが、思い切って素材の種類を厳選してしまおう。

  • 鉄鉱石5個で鉄の剣を合成
  • 鉄鉱石10個で鉄の鎧を合成
  • 炎の魔石10個で火炎の魔導書を合成
  • 炎の魔石50個で灼熱の魔導書を合成
  • 鉄鉱石5個と炎の魔石5個で炎の剣を合成

     というように、素材を厳選すればプレイヤーも素材の種類を覚えやすい。
     このような調整にすると、素材は一種の通貨のように機能する。

    アイテム入手時に説明を表示

     アイテム入手時にその名称だけを表示されても、プレイヤーには何か分からないことが多い。特に素材アイテムの数が多くなってくると、アイテム一つ辺りの入手が軽くなりがち。

     そこで、アイテム入手時に同時に説明を表示することで「いつの間にか貴重な素材を入手していた」という状況をなくす。
     その際、レアリティなどを表示すると分かりやすいかもしれない。

     ちなみに、ブレスオブザワイルドでは初出のアイテムのみ、説明を表示するような仕組みになっている。

    図鑑でフォロー

     アイテム図鑑でアイテムの入手場所を表示したり、魔物図鑑で敵のドロップアイテムを表示する。これによって、プレイヤーが戦略的にアイテム収集&合成をできるようにする。

     当然ながら、実装の手間もそれなりに大きいし、プレイヤーにとっても確認する手間が発生する。
     例えば、魔物図鑑を開き、百種類を超える敵のドロップアイテムを一つ一つ確認していくような作業は、かなりの手間を伴うはずだ。

     ならば――と、アイテム図鑑にドロップする敵を記載したり、検索機能を設ける方法もあるが、実装工数はさらに増えていく。

    素材毎に合成できるアイテムを明示する

     素材アイテムにカーソルを合わせた際などに、そこから合成できるアイテムを表示する。作成したことのないアイテムは????表示にしてもよいだろう。

     これならば、不用品かそうでないかも区別できるので売却もしやすい。
     例によって、実装工数は増える。

    素材の売却で合成

     ペルソナシリーズでは「素材を店に売却することで、それを材料とした装備が店頭に並ぶ」というシステムを採用している。
     ※正確には覚えてませんが、ペルソナ4だけのシステムかも……。
     このシステムでは素材アイテムを手元に残すメリットは全くない。従って、売却も一括でできるようになっている。

     この方法なら素材アイテムを管理する手間が大幅に削減できる上に、アイテムを組み合わせるという合成システムの味も残せている。
     筆者自身、この記事を書くまではあまり意識してなかったけれど、上述した『世界設定の補強』と合わせてなかなか秀逸なシステムだと思う。

     ただし、素材を売却できる店を制限するなどしないと不自然になるかも。例えば、ペルソナ4では武器屋でのみ素材を売却できるようになっている。

    金欠にする

     ゲームバランスを調整し、金欠気味にしておく。
     合成をした場合は、少ない価格でアイテムが手に入るようにする。これにより、店よりもコスパが良いというメリットを与える。

     ドラクエシリーズがよくやっている調整である。

    合成に特化

     装備品など多くのアイテムは基本的に店や宝箱では扱わない。あるいは露骨に性能の低いアイテムのみを販売し、あくまで合成で作るように誘導する。
     これによって、既存システムとの差別化を図る。

     アトリエシリーズがこの調整に近いだろうか。

    合成できる種別を限定する

     例えば、武器や防具は店や宝箱から普通に手に入るが、装飾品は合成でしか作れないようにしてしまう。
     この方法ならば、既存システムとの差別化も自然とできる。

    まとめ


     重ねて述べたように合成システムは扱いの難しいシステムである。
     ……にも関わらず、ここ10〜20年ではかなりの流行をしており、今や大手メーカーのRPGでは採用していないほうが珍しいぐらいだと感じている。

     しかしながら、個人的な意見を言うと、無闇に採用され過ぎではないかとすら思っている。
     例えば、最近プレイしたRPGで「クリアに数十分かかるクエストの報酬が用途のよく分からない素材アイテムだけだった」なんて経験があった。
     これが昔のRPGだったなら、ごく単純に装備品がそのまま報酬になっていたと思う。

     上の例は普通のオフラインRPGなので、そのような仕組みにする意味もあまりないように感じた。システムの複雑化と水増しによって、かえって面白みを失っていないだろうか。

     ……そんなわけで、近年のRPGが必要以上に複雑化&薄味化している要因になっているとも感じるので、採用するにしてもよく考えておきたい。
     例えば、ストーリー重視でサクサク進めて欲しいという作品に、やたら凝りまくった合成システムを採用するのは考えものだろう。
     どちらかというと、システム重視の作品に向いていると思う。

     プレイヤーへの負担を考えても、他のシステムとのバランスも考慮したい。
     例えば、複雑なスキル習得システムを備えた作品に対して、同じく複雑な合成システムを加えると、一層プレイヤーの手間が増えてしまう。
     面倒なシステムになっていると感じたならば、削るべき部分を削ってプレイヤーの負担を抑えるのも一つの選択だ。

     開発効率の面でも、システム実装やバランス調整の工数が大きく増加するので、なかなか大変である。
     メインのシステムとしてガッツリ作るか、あくまでサブのシステムとして簡略化して作るか、方針はしっかり決めておいたほうがよいと思う。

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  • posted by 砂川赳 at 16:09 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    【RPG制作講座】行き過ぎた快適性

    2023年09月14日

     昔、快適性に関しての記事を書いた。
     https://newrpg.seesaa.net/article/220111934.html

     上の記事のように、筆者は快適性を強く重視すべきと考える。
     ロード時間や演出が短く、スピーディなゲームは一般的に高く評価されやすい。パラメータ調整や、過剰な演出&不要な要素のカットだけでも快適性は向上できるため、費用対効果も非常に優れている。

     しかしながら、快適性にもやりすぎた場合の弊害がある。
     一般的には、快適性が低いことが問題になるケースが圧倒的に多く、なかなかこの問題にまで行き着くことはない。
     実際、10年以上前に記事を書いた時には、そんな問題はほとんど考えてもみなかった。

     ところが、近年は快適性を重視しすぎた結果、問題を起こしている作品を、見かけるようになったので、注意点として挙げてみたい。

    目次


    速すぎる戦闘

    入力速度と演出速度のギャップ

    演出時間とゲーム性

    戦闘演出カット

    エンカウントなし

    速すぎる移動速度

    対策案

    まとめ


    速すぎる戦闘


     一般に演出がスピーディな戦闘は好まれる。
     だがそれも、度が過ぎると問題を引き起こす。


     まず、プレイヤーの脳内処理が戦闘のスピードに追いつかなくなってしまう問題だ。あまりにも速すぎると、何が起こっているのか分からなくなる。
     結果、プレイもどことなく雑になって、作品が楽しめなくなっていったりする。

     気をつけておきたいのは、プレイヤーは作者ほどには作品を理解していないということである。
     作者は作品を深く理解しているため、極端にスピーディな戦闘でも何が起こったかを十分に把握できてしまう。敵が高速で放った効果の複雑なスキルを一瞬で見抜いてしまうというわけだ。

     あくまで初見のプレイヤーがどう見えるかを意識しよう。序盤からパーティ人数やスキル数が多い作品など、必要な情報が多い場合は特に注意したい。

    入力速度と演出速度のギャップ


     それ以上に深刻で見落とされがちなのは、プレイヤーの入力速度と演出速度のギャップによって引き起こされる問題だ。

     戦闘演出の高速化を極限まで進めていくと、必然的に戦闘においてプレイヤーの入力時間が占める割合が大きくなっていく。
     一般的に、プレイヤーの入力機会が多いということは、ゲーム性が高いということになるはずだ。それ自体は好ましく感じられるかもしれない。
     だが、これは時にゲーム性に歪みをもたらすことがある。

    具体例

     オーソドックなターン制の戦闘システムの作品を例にして考えてみよう。
     この作品の戦闘演出は非常にスピーディで、一つの行動には一秒もかからないとする。

     例えば、通常攻撃や同じ技の連打、自動戦闘など入力の手間がかからない手段を使えば、1ターンが5秒で終わるとする。
     一方でプレイヤーが戦術を練りながら丁寧にコマンドを入力すると、1ターンに25秒かかるとする。

     1ターン辺りの時間差が5倍もあることに注目して欲しい。
     つまり、プレイヤーが丁寧に操作するよりも、雑に操作したほうが圧倒的に早くなってしまう。
     これは意図せずして、プレイヤーに雑なプレイを強く動機づけしてしまう。

     特に……

    • 通常攻撃が強力
    • 自動戦闘が強力
    • リソース管理の要素がゆるい
      ※「戦闘後にHPが全快」「MPが存在しない」「回復手段が豊富」など
    • コマンド入力に時間がかかる
      ※「パーティ人数が多い」「スキルの数が多い」「システムが複雑」など

     上記のような作品は要注意だ。

     雑魚戦で負けるリスクが低く、下手に戦ってもリソースを消耗しないならば、ボタン連打などで雑に処理したほうが格段に効率がよくなってしまう。

     気がついた時には、ただただボタンを押すだけ。ファミコン時代のRPGよりやることがないなんてことも……。

    演出時間とゲーム性


     意外かもしれないが、演出時間はゲーム性を大きく左右する。演出時間は決してゲーム性から独立した存在ではない。
     というのも、多くのプレイヤーは時間そのものを判断の基準にするからである。

     プレイヤーは誰もが最小ターン勝利や最小被ダメージ勝利を目指しているわけではない。25秒かけて1ターンで勝利するより、2ターンかかっても10秒で勝利できるなら、後者を選ぶ人は多いだろう。

     雑魚戦での経験値稼ぎなら、時短を目指したほうが圧倒的に効率が良いのでなおさらである。結果的に、パーティの成長も早くなるので困ることは少ない。

     ……というように、速すぎる戦闘は時にゲーム性を崩してしまう。
     通常なら演出時間がネックとなることで、保たれていた均衡が崩壊してしまっているわけだ。

    戦闘演出カット


     戦闘演出カットは便利なシステムである。これがあれば、長い演出に悩まされることもなくなる。
     ……が、快適さと引き換えに味気なさをもたらす。

     以前、技の演出が非常に長い代わりに、ワンボタンで演出スキップできるゲームをしたことがあるのだが、必然的にほとんどの演出を飛ばすことになった。

     その結果、ただただ表示されるダメージを眺めるだけの味気ない戦闘となってしまった。
     まるでファミコン時代である。
     想像力を働かせる余地がある分、ファミコンのRPGのほうがマシかもしれない。
     現代においては、プレイ動画の見栄えが今一つになるのも無視できない欠点と言えるだろう。

     個人的にはそもそもの演出を短めにすれば、演出カットは不要だと思う。やるにしても、奥義などの大技だけ飛ばせるようにするとか。

    エンカウントなし


     個人的な経験談。

     昔、作った作品で『エンカウントなし』を実現する装備を中盤〜後半の時点で入手できるように設定したのだが、プレイヤーからは「手応えがなくなった」「ダンジョンがむなしい」という不満が上がった。

     「だったら使わなければいいじゃん」とこっちは言いたくなるが、人間とは楽なほうに流れるものらしい。
     一応、該当のアイテムは多少入手条件を難しくしていたのだけど、難しいものである。

    速すぎる移動速度


     過去、別の記事に書いたので割愛。せっかくなので、リンクを貼っておきます。
     https://newrpg.seesaa.net/article/280090650.html#item5

    対策案


     上記の問題の大半は、そもそもが「戦闘が面倒臭い」ということに端を発している。
     よかれと思って、制作者が取った対応が裏目に出てしまっているわけだ。

     戦闘の快適性を向上させたいなら、まず戦闘回数自体を減らすゲームデザインを検討してみることをオススメしたい。
     エンカウント率を低く、ダンジョンもほどほどの長さにする。戦闘自体もほどほどにスピーディにするが、あくまで常識の範囲内で実装する。

     こうすれば、一度の戦闘の密度を高められるので、連打ゲーや自動戦闘ゲーにはなりにくい。

     自動戦闘については、そもそも採用しないのも選択肢だ。もしくは自動戦闘は通常攻撃限定にするなど機能を限定してもよい。
     他にもリソース管理が厳しく、自動戦闘ではすぐにMPが枯渇してしまうようなバランスならこういった問題は起きづらい。

    まとめ


     ゲーム性を犠牲にしてまで快適性を極限まで追求してしまうことはオススメできない。行き過ぎると、かえって作業となってしまうからだ。

    「戦闘は何の操作をしなくても自動で終わります」
    「演出は完全にカットできます」
    「むしろ、戦闘そのものもカットできます」

     最終的にはマップを移動しながら、ひたすらフラグを立て、イベントを鑑賞するだけの作品と化してしまう。
     果たして、これが面白いかと言われると難しいところだろう。

     個人的に疑問に思うのは、雑魚戦を軽視しているのに『数多くの雑魚戦』『長めのダンジョン』『長時間の経験値稼ぎ』といった古典的RPGの特徴を強く踏襲してしまっているパターンだ。

     そういった古典的RPGのスタイルは、そもそもが「雑魚戦は楽しいもの」という大前提で設計されている。
     ※誰に確認したわけでもないけれど、そうでなければ大半のRPGは苦行になるので説明がつきません。

     そのため、雑魚戦を重視しないなら、古典的RPGを踏襲する意味もあまりないように思う。

     極論を言うと雑魚戦を嫌うなら、もうイベント戦闘だけに限定してしまってもいい。ダンジョンの中身もカットして、一枚絵と立ち絵だけでイベント進行してしまってもいいぐらいじゃないかなと。

     ただし、戦闘が減れば、必然的に他の要素の比重が増えることになる。その『他の要素』に面白みがなければ、やはりその作品はつまらないゲームとなってしまう。
     ストーリーやイベント演出に自信があるなら一つの手段ではあるけれど、そうなると「ADVでよくね?」「アニメでよくね?」といった疑念も湧いてくるのが、また悩ましいところではある。

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    posted by 砂川赳 at 11:31 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする