【RPG制作講座】ペナルティ

2024年12月01日

 ペナルティとはプレイヤーの失敗に対して与えられる罰のことである。
 全滅のような大きなものから、ちょっとしたコマンドミスまでペナルティは広く存在する。

 報酬の正反対となる要素であり、ペナルティはゲーム性を実現する上で不可欠な要素である。
 「ペナルティがない」ということは「何をやっても同じ」ということであり、そこにゲーム性は存在しなくなってしまう。

 また、ペナルティが大きいゲームは難易度が高いとも言われる。

目次


ペナルティの種類

リソースの減少

やり直し

報酬とペナルティ

ペナルティと時間

ゲームテンポとペナルティ

ゲームバランス=ペナルティ=ゲームテンポ

低すぎるペナルティ

心理的なペナルティ

ペナルティとゲームデザイン


ペナルティの種類


 オーソドックスなRPGにおけるペナルティの種類をまとめてみる。

リソースの減少

 HP、MP、お金などのリソースの減少。
 多くの場合、これらは回復&増加する手段が用意されている。

 また、アイテムの減少などもここに含めることができる。

 大半のRPGではリソースの減少は避けられない。そのため、あくまで減少を抑えるように立ち回ることになる。

やり直し

 定められた地点からのやり直しを強制されるペナルティ。
 ダンジョンのトラップによって前のフロアに戻されたり、戦闘で全滅して戻されたり。


 最も重要なのは、やはり全滅時のやり直しだろう。ほとんどのRPGでは全員のHPが0になることを全滅と定義している。

 そして、全滅時は直近のセーブポイント(チェックポイント)からやり直しさせられることが一般的だろう。
 セーブポイントから全滅するまでのプレイは多くの場合、無駄になってしまう。残されるのはプレイヤーの経験だけとなる。

 かつてはFF3やペルソナ1のラストダンジョンのように2時間以上セーブできない作品もあったが、今となってはまず見られなくなった。昨今のRPGでは、30分を超えるような長時間のやり直しを強いられることは少ない。

 またドラクエシリーズでは所持金の半減を全滅時のペナルティとする代わりに、経験値や入手したアイテムをそのまま保持してセーブポイントへ戻れるようになっている。
 ※ドラクエ3HD2D版(2024年)では、全滅してもその戦闘からお金の減少なしでやり直しできるようになっている。驚くべきことに、低難易度では無敵となって全滅すらしない。

 「ゲームをクリアできない」とはこのやり直しを何度も強いられることによって、先に進めなくなった状況を指すことが多い。

 一般的なRPGの目的は先に進むことであり、そのために全滅(=やり直し)を避けることそのものがゲーム性の中核となっている。
 リソースの管理を行う目的も、そもそもは全滅を避けることである。

報酬とペナルティ


 ペナルティと言えば、罰金のような「罰を与えられるもの」を思い浮かべるかもしれないが、それだけではない。
 報酬を得られないことも事実上のペナルティである。

 例えば「今月、お前の仕事の評価低かったから給料ゼロな」と言われて怒り狂わない人はまずいないだろう。
 給料ゼロは給料をもらえないだけであって、罰金を払うわけではない。
 これは給料が得られないことを自分の過去や他者の待遇と比較して、相対的にペナルティだと感じるからである。

 ソシャゲにありがちなログインボーナスは「ログインするとボーナス」であると同時に「ログインしないとペナルティ」でもあるというわけだ。
 内心飽きてしまったゲームでも、ずるずると日課のようにログインを続けてしまい、それを重荷に感じてしまったなんて経験がある人も多いはず。

 最近(2024年)発売したRPGを例に挙げてみよう。
 メタファー:リファンタジオの戦闘にはノーダメージボーナス(報酬増加)があるが、これは同時に「ダメージを受けると報酬が減るペナルティ」としても機能してしまう。
 結果的に、以下のようなゲームデザイン上の影響が出ると考えられる。

  • 雑魚戦では防御よりも攻撃を優先したプレイスタイルが推奨される。
  • 無理に強敵を狙うよりも確実にノーダメージ撃破できる敵を狩ったほうが効率的になる。
  • ノーダメージ撃破が苦手なライトユーザが不利になりやすい。

 ※なお、ノーダメージボーナスを必ずしも否定しているわけではない。ノーダメージ撃破を目指すこと自体に一定のゲーム性が生まれるというメリットも存在する。

 このように報酬(ボーナス)とペナルティは表と裏のような存在である。
 報酬があるのにペナルティのないゲームは事実上存在しないと思ってもいい。

 一般的に「失敗した者に罰を与えるよりも、成功した者に報酬を与えるほうが好ましい」とされる傾向はある。
 実際、その通りだとは思うのだが、見え方が違うだけで本質的には境界が曖昧なことには注意したい。

 ちなみに、ユーザがペナルティに気づかないようにすること自体は可能である。
 例えば、

「社員全員昇給させるぞ! ただし、お前は無能だから給料据え置きな」

 と言われたら、普通はペナルティだと感じるだろう。
 ただ、それを通達せず、こっそり当人以外を昇給させれば、これはペナルティとして認識されなかったりする。

 複雑なゲームシステムの作品の場合、プレイヤーが慣れるまでは隠れたペナルティに気づかないことは多い。とはいえ、狙ってゲームデザインにこれを組み込む制作者はあまりないと思うけれど……。

ペナルティと時間


 ゲームにおけるペナルティはほとんどの場合、時間に換算できる。

 というのも、リアル人生とは違って、多くのゲームでは失敗は取り返しがつくように設計されているからだ。

 もし、リアルファイトで敗北すると、滅茶苦茶痛かったり、病院送りになって治療費がかかったり、最悪死んだりする。なんなら勝利しても怪我したり、逮捕されたりする。取り返しのつかないことばかりだ。

 けれどゲームではそんなことは起き得ない。
 戦闘で全滅しても、ただセーブポイントからやり直せばよいだけ。ドラクエならお金を失ったりするが、それも戦闘で稼げばすぐに取り返せる程度だ。

 ※対戦ゲームなどは除きます。この講座はあくまで一人で楽しむゲームを想定しています。

 ゲーム内のキャラクターが死ぬと気分も良くないかもしれないが、自分には何の痛みもない。
 結局のところ、全滅によるペナルティとは「やり直しにかかる時間」に過ぎないとも考えられる。

 中には、ファイアーエムブレムやFF6のように取り返しのつかない仲間やアイテムの消滅があったりするが、極論を言えばそれすら最初からやり直せば取り返しがついてしまう。
 もっとも、あまりにも時間をかけすぎると究極的にはリアル人生に取り返しのつかない影響を及ぼすことも否定できない。特にネトゲやソシャゲは消費する時間も桁が違うし、時にはリアルマネーも関わったりするのでこの限りではない。

ゲームテンポとペナルティ

 ともあれ「ペナルティ=時間」と考えれば、ゲームテンポ(演出時間やロード時間など)はペナルティと密接に結びつくことも分かるだろう。

 プレイヤーの勝率が同程度と仮定した場合、ボス戦が1分で終わるゲームと10分で終わるゲームではペナルティにも差が生まれる。
 後者のほうが格段に敗北時に無駄となる時間も長くなる。従ってペナルティが重くなる。
 戦闘の演出時間やロード時間の長いゲームは、当然ペナルティが増える(難易度が高い)ということでもある。

 一方で「1分で終わるが勝率1割のボス戦」と「5分で終わるが勝率5割のボス戦」の比較は難しい。突破できる時間の期待値は似たようなものだが、プレイヤーに与える印象は大きく異なる。
 前者のほうが勝率が低いので絶望感はあるかもしれない。プレイヤーが無理だと感じれば、投げ出す理由にもなりそうだ。あるいは逆に、緊張感があって勝つまで試行錯誤するのが面白いと感じることもありえる。
 どちらが良いとかではなく、この辺は制作者のセンスが問われる部分だろう。

 ダンジョン内でどこでもセーブできるゲームは全滅によって失う時間も短くなるので、ペナルティも下がる。
 ※ただし、どこでもセーブはハマり(詰み)という特大のペナルティを起こす危険性があるので注意。全滅時はセーブポイントへ戻る仕組みなどと併用すればよい。

 こういった観点から難易度が高いゲームとしては、例えばファミコンのFF1〜3、PSのペルソナ1やレジェンドオブドラグーン、PS2のアンリミテッドサガ、Wiiのアークライズファンタジアなどが挙げられる。
 これらはセーブの機会が極端に限られたり、ボス戦に時間がかかったりするゲームである。
 全体的に古い作品を中心に挙げたが、大きすぎるペナルティは敬遠されやすい。開発者もさすがに学習したため、近年の作品ではこういった調整は避けられる傾向にある。

 サガシリーズの多くは、どこでもセーブができる上に戦闘も短期決戦寄りとなっており、ペナルティが軽い。敵は強敵揃いではあるが、これによって全体的なバランスを取っていることも分かるだろう。

ゲームバランス=ペナルティ=ゲームテンポ

 もっと言ってしまうと、ゲームバランスの大部分はゲームテンポが左右する。

 ゲームバランスの調整とはペナルティの調整であり、ペナルティの調整とはゲームテンポの調整なのだから、必然的にそうなってしまう。
 何度も全滅してやり直す必要があるゲームは、必然的にクリアまでの時間も長くなる。すなわちテンポが遅くなるということだ

 既に述べた通り「ゲームをクリアできない」とは、やり直しを何度も強いられることによって先に進めなくなった場合が大半である。
 これが高難易度のアクションなら「自分にはクリアできない」と確信することによって、クリアを諦めることもあるだろう。

 しかし、多くのRPGでは時間をかけてキャラクターを育てれば、いずれは敵に勝てるように作られており、大体誰でもエンディングに到達できるようになっている。
 ※たまに進行の条件(フラグ)が分からずに詰まることもあるが、現代のネット社会ではググればすぐに解決できてしまう。

 以上より、ペナルティによってゲームクリアできない状況は現代のRPGにおいて、ほとんど考えられない。
 RPGは「クリアできないから諦める」のではなく「面倒臭いからやめる」のである。「これ以上、このゲームに時間をかけて先に進んでも、手間に見合った面白さを得られそうにないし、他にもっと面白いことがあるからやめる」というのが実情だろう。

 このことからも、ゲームテンポ(=時間の調整)がいかに重要なのかが分かるはずだ。

 よって、ペナルティ(=時間の消費)は行きすぎないように適切なものを設定する必要がある。

低すぎるペナルティ

 一方で、もちろんペナルティは低すぎてもいけない。
 演出時間とゲーム性の関連については、以下の記事でも指摘しているが理屈としては大体同じである。

行き過ぎた快適性

 https://newrpg.seesaa.net/article/500746654.html

 上の記事と内容が重なるが、快適性を極限まで向上させることは、ペナルティを極限まで減らすことになる。
 戦闘が一瞬で終わる上に全滅しても再戦が容易なゲームは、限りなく全滅がペナルティとして機能しなくなってしまう。ペナルティがないということは、ゲーム性もないということなのだ。

 これは話を極端にしてみれば分かりやすいだろう。

  • 戦闘を通常の1000倍速で実行できる超快適設計。
  • 戦闘も自動で繰り返せるので操作も必要なし。
  • 全滅してもその場ですぐに復活。

 1分間放置して経験値稼ぎするだけでアッという間に適正レベルを超えてしまうことは間違いない。ボス戦も自動で戦うだけで何の問題もなく終わってしまうはず。
 快適性を高めただけのはずが、ゲーム性自体が完全に崩壊していることが分かるだろう。
 演出の高速化はペナルティの低下であり、まぎれもなくゲーム性を左右する要素なのだ。

 ファミコン版ドラクエ2は有名なJRPGとしては最も難しいと言われるが、その理由の筆頭は経験値稼ぎにかかる時間の長さにある。
 本作は通しでのテストプレイをしておらず、制作者自身が「経験値の調整に失敗した」と明言していることで有名。バグ技(いわゆる『はかぶさ』)を使わなければ、ラストダンジョン前で5〜10時間程度の経験値稼ぎを強いられる凄まじい作品だ。
 そんなドラクエ2も経験値稼ぎが100倍速でできるならば、大して難しいと言われることもなかっただろう。

 あくまで上記は極論だが、実際に自動戦闘や演出の高速化を極端に進めた作品はゲーム性が崩壊する危険がある。

 行き着く先はプレイヤーのやることの消滅である。やることがないなら、ゲームである必要もないのでアニメでも見ていたほうがマシ。
 ……というように、快適性をとことん追求した結果、無味乾燥な虚無ゲーになっていないかは気をつけたい。
 ゲームがゲームであるためには、最低限の面倒臭さ(ペナルティ)は必要ということなのだと思う。

心理的なペナルティ


 「ゲームにおけるペナルティはほとんどの場合、時間に換算できる」と述べたが、そうでないペナルティがあるとすれば、残るは心理的なものだろう。

 つまり「敗北した」「失敗した」「損した」「取り逃がした」という悔しさや「仲間が死んだ」という悲しさだ。

 ペナルティを印象付けたい場合は、こういった要素を強調してみるのもよいだろう。敗北があってこそ、その後の勝利が際立つという側面もある。これはゲームシステムについてもストーリーについても言えることだ。

 ただし「損した」「取り逃がした」が余りにも多く発生するゲームは嫌われる傾向にあるのでほどほどに……。
 例えば、これまで説明してきた内容によって『限定的なレベルアップボーナス』はかなり強力なペナルティと成り得ることが分かる。

 ここで指すレベルアップボーナスは過去に以下の記事で説明している。
 https://newrpg.seesaa.net/article/280090650.html#item2

 レベルアップボーナスは見方を変えれば「レベルアップ時にボーナスを得られないと損する」システムである。
 多くの作品ではレベルアップできる回数が限られているため、事実上「取り返しのつかないペナルティ」として機能してしまう。

 取り戻す唯一の手段は最初からやり直すことのみ。ほとんどの作品ではクリアには何の支障もないのだが、気にする人は気にしてしまう。
 ボス戦限定のレアドロップなど入手機会の限定されるアイテムなども理屈上は同じである。

 ペナルティにおいては、こういったプレイヤーの心理面も考慮していきたい。

ペナルティとゲームデザイン


 ペナルティは必ずしも低ければ良いというわけでもないし、高ければ良いというわけでもない。制作者の目指すべき理想や対象とするプレイヤーの層によって正解は異なる。

 近年はゼルダの伝説ティアーズオブザキングダムのように「難易度は高く何度も死亡するが、ペナルティは低く長時間のやり直しはない」という死にゲー的なゲームデザインのヒット作も珍しくなくなった。
 これはヘビーユーザを満足させる一方で、ライトユーザにも最低限の配慮をするということかもしれない。
 ドラクエ3HD2DやFF16が過剰なぐらいライトユーザに配慮したシステムを搭載する一方で、こういった作品が強く支持されている事実は興味深い。

 ペナルティを考慮しながら、理想のゲームデザインを追求していこう。

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【RPG制作講座】雑魚戦を作業にしない

2024年06月03日

 RPGの雑魚戦をいかに面白くするかというのは悩ましい問題だ。


 一方で「つまらない雑魚戦とは何か?」という問題には、ある程度の答えを出せると思う。その一つは雑魚戦が作業と化していることだ。

 一般的にRPGの雑魚戦には以下のような特徴がある。

  • 同じ敵と何度も戦う。
  • 回数が多い。長編ならクリアまでに何百回と戦うことも。
  • ボスより弱く、プレイヤーが負けることは少ない。

 上記の特徴により、雑魚戦は「同じ条件で同じ敵と戦う」場面が何度も発生しがちになる。必然的にその結果も見えており、運の要素が大きくない場合は、一度倒した相手に負けることは少ない。

 つまり、多くの雑魚戦は構造的に「開始した瞬間からプレイヤーの勝利が確定している作業」のようなものとなっている。勝利までの流れも多くの場合で一定となっており、そうなると新鮮味も薄くなってしまう。
 
 当然、こういった戦闘を何度も繰り返すのはプレイヤーにとって退屈となる。
 そこでどのようにすれば、この作業感を軽減できるのかを考えてみたい。

目次


リソース管理を活かす

敵構成に変化をつける

ランダム性を高める

難易度を上げて緊張感を演出

戦闘の比重を下げる

報酬を奮発する

まとめ


リソース管理を活かす


 最も古典的な方法はリソース管理を活かすことだ。
 リソースとはHPやMP、回復アイテムなど数に限りのある資源を指す。ここでは特に戦闘が終了しても引き継がれるリソースを指す。

 【参考】戦闘システムB リソースシステム
 https://newrpg.seesaa.net/article/316336123.html

 例えば、ドラクエシリーズではダンジョンを進む中でHPやMPなどの管理を行う必要がある。繰り返される戦闘の中でリソースは徐々に減少していくので、刻一刻と状況に変化が生まれる。
 ダンジョンの入口付近では楽勝だった雑魚敵も、MPが尽きた状況では対処が困難になるというわけだ。
 そして、そうならないために、プレイヤーも雑魚戦でいかにHPやMPを温存するかという駆け引きが生まれる。

 もちろん、リソース管理はバランス調整が肝となる。
 もし、MPを消費しない攻撃手段だけで、敵を蹴散らせるならMPの価値は薄れる。あるいは、MP自体を簡単に回復できてしまうなら、やはりプレイヤーが悩む必要もなくなってしまう。

 前述した通り、リソース管理は古典的な手法であり、旧来のRPGではこれによって長いダンジョンに緊張感を持たせるよう設計されていた。
 ところが、時代と共にリソース管理を大幅に緩和された作品が出るようになっていった。

  • ロマンシングサガ2では戦闘終了後にHPが全快するようになった。
  • ドラクエ6ではMPを消費しない特技が猛威をふるい、ドラクエ11(正確には3DS版DQ8から)ではレベルアップでHPやMPが全快するようになった。
  • FF13やゼノブレイドに至ってはMPに該当する要素も存在しないため、リソース管理の必要性もほぼなくなってしまった。

 リソースの制限がゆるい場合、消耗を考えず思い切り戦えるという利点もある。
 一方でリソースの制限には上記のような重要性もある。
 リソース管理を不要にした結果、全体としてかえって退屈なものになっていないかはよく考えたい。

敵構成に変化をつける


 敵の種類や組み合わせが豊富ならば、同じ条件での戦闘が少なくなる。
 長いダンジョンでも出現する敵が徐々に変わっていくなら、単調さもいくらか緩和できるだろう。

 ただし、敵が変化しても強さがあまり代わり映えしないようなバランスだとこの効果は実感できない。しっかりと敵の個性をつけよう。

 時折、敵が行動する前に一方的に完封できてしまうシステム&バランスの作品も見かけるけど、これも敵の個性が見えなくなってしまうという点では同じなので注意して欲しい。

ランダム性を高める


 敵の行動パターン、命中率やクリティカル、状態異常の命中率などのランダム要素を組み込むことで変化をつける。前述した敵構成にランダム性を組み込んでもいいだろう。
 これによって、戦闘が同じような展開になることを減らす。さらには、油断すると雑魚戦でも思わぬ苦戦を強いられるようにする。

 これはメガテンシリーズが分かりやすいだろう。
 弱点を突いたり、クリティカルが発生すると連続行動できるプレスターンはシステム的にもこれを強調している。

 ただし、あまりやりすぎると理不尽な運ゲーになるので注意。

難易度を上げて緊張感を演出


 「油断すると雑魚戦でも思わぬ苦戦を強いられる」という点は上と同じだが、それを難易度面でも強調する方法。
 上述したメガテンの他、サガシリーズなども分かりやすい。

 必然的に一戦闘が重くなりやすいことには注意。
 雑魚戦が長びくのは作業感をむしろ強めるので、場合によっては逆効果になりかねない。

 ロマサガシリーズのように、雑魚戦は短期決戦かつ激しい戦闘を意識するといいかもしれない。

戦闘の比重を下げる


 戦闘を何度も長々と見せられるのが退屈なのだったら、なるべく見せないでしまえという発想。

 格下との戦闘を短期決戦にしたり、自動戦闘でサクッと終わらせられるようにする。マザーシリーズなど格下の敵は戦闘なしで瞬殺できる作品もある。
 あるいは、ダンジョンの長さやエンカウント率を抑えて、ほどほどの戦闘回数で次へ進めるようにしてもよい。
 また、逃走率を高めに設定するのも、戦闘の比重を下げる方策である。

 ドラクエの聖水のように格下の敵とのエンカウント率を下げるアイテムやスキルを作るのもよいだろう。
 この種の機能はシンボルエンカウントだとあまり見かけないが、工夫次第でやりようはあるので試してみて欲しい。


 あるいは、レベルが上がると自動的に敵が寄ってこなくなるようなシステムを作ってみてもよいと思う。

 ただし、道中の雑魚戦の回数を抑えても、ボス戦が壁となって結局雑魚戦での稼ぎを何度もさせられるなら本末転倒なのは言うまでもない。

 一見すると『難易度を上げて緊張感を演出』とは逆に、難易度が低めでストーリー重視の作品に向いていそうだが、実は高難易度の作品とも相性は悪くない。

 例えば、ロマサガ2では、

  • 雑魚戦は短期決戦。
  • シンボルエンカウントによって戦闘を回避しやすい。
    (少なくとも同時代のRPGよりは)
  • 戦闘から100%逃げられる。
    (重大なデメリットはあるけど……)
  • ダンジョンもそこまで長くない。

 というように、戦闘の比重を下げるための調整が多くなされている。
 このように「高難易度だからこそ、戦闘の回数や長さを抑える」という調整もアリだろう。

報酬を奮発する


 戦闘自体は作業であっても報酬がおいしいなら、それなりに頑張れるというもの。
 ここでいう報酬とは経験値やお金などを意味しており、その大半がプレイヤーの強化につながるものとなる。

 報酬が多いということは、プレイヤー側の強化も早いということ。
 当初は苦戦していた敵に楽勝できるようになるため、プレイヤーとしても気分が良い。変化を実感できるため「同じことを繰り返している」という感覚も薄れるだろう。

 逆に言うと、戦闘の報酬が乏しい作品では戦闘の作業感が増してしまう。
 これはシステム面の問題によって引き起こされることもある。

  • レベルキャップなどの成長限界にすぐ達してしまう。
  • 敵が格下だと得られる経験値が大きく下がる。
  • こちらに比例して敵も強くなっていく。

 具体的には上記のようなシステムが例として挙げられる。
 意味のない戦闘をさせるぐらいなら、戦闘自体をカットできるようにしたほうがマシかもしれない。

 では、ただ報酬を多くすればいいかというと、これも意外と難しい。

 というのも、前述した通り「報酬が多いということは、プレイヤー側の強化も早い」ということ。つまり、すぐに戦闘に苦戦しなくなってしまう。
 戦闘に苦戦しない状態では、強くなりたいというプレイヤーの動機も弱くなる。自然、報酬の喜びも減ってしまう。

 つまり、報酬が多いほど報酬が機能しなくなるのが早いという矛盾があるのだ。
 対策としては、やはり報酬は程々に割り当てることだろう。

 あるいは、敵の強さを負けじとインフレさせる方法も考えられるが、こちらは弊害もそれなりに多い。レベル上げが全ての大味なゲームになりかねないので限度がある。

 他にも、戦闘内容によって報酬を増やすような仕組みがあれば、勝敗の確定した雑魚戦であっても操作を頑張る動機が生まれるかもしれない。
 ただし、それ自体が新たな作業を生み出すこともあるので要注意。

まとめ


 近年プレイしたRPGにおいて、格下との雑魚戦に強い作業感を覚えることが個人的に多かった。
 その原因と対策を考えたのが、この記事だと言える。

 特に近年はリソース管理のゆるい作品が増加傾向にあり、加えてマップも広大化しているため戦闘回数も多い。それらが大きな原因なのではないかと推察している。

 なお、この記事で挙げた項目の中には相反するものもあることに注意して欲しい。

 例えば、『戦闘の比重を下げる』ために確実に戦闘から逃げられるようにした場合、『難易度を上げて緊張感を演出』『リソース管理を活かす』といった方向にはマイナスに作用してしまう。
 どれだけHPやMPが減っていても安全に進めてしまうのだから、必然的にそうなってしまう。

 どの手段を取るのかは自由だが、ゲームデザインの方針には矛盾がないようにしておこう。

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posted by 砂川赳 at 12:50 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【RPG制作講座】サブクエスト

2024年03月18日

 サブクエストとは、ゲームの本編(メインクエスト)とは別に攻略が必須ではない寄り道イベントのことである。


 昨今のRPGでは、大手メーカーの大作からインディーゲームまでサブクエストが当たり前のように存在している。
 SFCの時代にはいくつかの寄り道要素がある程度の作品が大半だったが、今となってはサブクエスト制を採用していない作品のほうが珍しいかもしれない。

 そんなサブクエストについて、一度考察してみたい。
 ここではサブクエストという呼称を使うが、寄り道要素全般を扱う。

 なお、以下の『自由度』に関する講座と内容は多少かぶっている。
 https://newrpg.seesaa.net/article/377351764.html

目次


サブクエストの種類

標準型

賞金首型

簡略型

自動生成型

派遣型

サブクエストの開始方法

施設で受注

依頼者から受注

突発的に発生

メインクエストから派生

サブクエストの利点

攻略自由度の増加

任意性

ストーリーの補完

経験値稼ぎの代替

内容の水増し

サブクエストの欠点

メインストーリーとの相性

メインストーリーのテンポ悪化

面倒ならやらなければいいの問題点

クリア率の低下

バランス調整の複雑化

サブクエストを面白くする方法

本編との接続

連作短編

コミカル

意外な導入

ご褒美を用意する

テンポを良くする

数を絞る

複数種類の混在

ミニゲーム

まとめ


サブクエストの種類


 まずはサブクエストの種類を挙げてみたい。
 どのようなサブクエストを採用するかによって、作品の雰囲気も変わってくるはずだ。

標準型

 メインクエストとほぼ変わらない品質のイベント。
 導入から結末まで短編としてのストーリー性があるため、最も手間がかかる。

 個人的にはアークザラッド2が印象深い。

賞金首型

 ボスを倒すことを目的としたイベント。
 基本的にストーリー性はほぼなく、ボス戦のみとなる。
 ボス戦までの流れを凝ったものにした場合は、標準型と変わらなくなる。


 メタルマックスシリーズやFFシリーズなど数多くの作品で見かける。

簡略型

 標準型を大幅に簡略したもの。
 依頼文と報告以外はほぼストーリー性がない。

「スライムを10体倒せ」「薬草を5個持ってこい」のような内容が多く、いかにもなお使いイベントである。
 依頼文の内容を頑張れば申し訳程度にストーリー性を出すこともできるが、さすがにこれだけで面白くするには限界があるだろう。

自動生成型

 内容的には簡略型に近いが、さらに内容をランダム生成したもの。
 クリアしても終わらず、無限に引受けできる場合もある。

 AIの発展に伴い、将来的にはもっと複雑なイベントが自動生成されるようになるかもしれない。

派遣型

 戦闘に参加しないメンバーを派遣するイベント。
 FFTの儲け話やゼノブレイド2の傭兵団任務など。

 一度派遣した後は、時間経過(日数経過、プレイ時間など)を待つだけで操作をすることはない。つまり放置型である。
 内容そのものは簡略型のような単純なものであることが多い。

サブクエストの開始方法


 サブクエストはその開始方法によっても個性付けができる。
 作品内で統一するか、場合によって異なる開始方法を取ってもよい。

施設で受注

 ギルドなどサブクエスト用の施設で受注する。
 開始方法が分かりやすく、見落としが発生しにくいのが利点だろう。

依頼者から受注

 町の住民など依頼者から直接受注する。
 依頼者を誰にするかによっても個性づけができる。

突発的に発生

 必ずしも依頼という形式を取る必要はない。
 例えば、落とし穴から洞窟内に落下した後で「洞窟から脱出しよう」というようなクエストを発生させてもよい。

メインクエストから派生

 メインクエストの最中にサブクエストを発生させてもよい。
 例えば「ボスを倒すにはとある武器が有効だが、別になくても倒せる」というように必須ではないクエストを発生させるなどだ。
 他にも、取り逃した敵キャラの行方を追う寄り道クエストなんていうのはどうだろうか。

サブクエストの利点


 ゲーム制作者はどのような狙いでサブクエストを制作するのか? 利点を考えてみよう。

攻略自由度の増加

 サブクエストは進行するタイミングなどの自由度が高い。
 それによって、ゲーム性を向上させる効果がある。

 例えば、あるクエストで手に入れた武器が、別のクエストのボスの弱点だったりすれば、攻略を工夫する余地が生まれる。

任意性

 プレイヤーはサブクエストのやるやらないを選択することができる。
 つまり「面倒ならやらなければいい」というわけだ。

 重要でないクエストをサブに回すことで、プレイヤーは理想のテンポでゲームを進めることができる。

ストーリーの補完

 サブクエストを活用すれば、メインクエストでは描ききれなかった部分を補完できる。
 プレイヤーに強制するほどではないイベントは、サブクエストとして実装すればよいだろう。

経験値稼ぎの代替

 古典的な経験値稼ぎの代わりの手段として、サブクエストを活用する方法。

 経験値稼ぎは同じことの繰り返しになりやすく、飽きられやすい。サブクエストという形式を取れば、そういった単調さを緩和できる。
 『簡略型』や『自動生成型』と組み合わせるのもよいかもしれない。

内容の水増し

 本編だけだとすぐに終わってしまって物足りない――なんて作品はサブクエストによって内容を水増しすることができる。
 本編に継ぎ足すよりは、独立したプロットでイベントを作成できるため、比較的に作りやすいという利点はある。

 奥深いシステムや豊富なスキルを作ったのに、それを活かすだけの本編の規模がない――なんていう場合は使えるかもしれない。

 なお、水増しという言葉は一般的にネガティブな意味で使われることが多い。当然、デメリットもあるので後述する。

サブクエストの欠点


 サブクエストにはそれなりに大きな欠点がある。
 そのため、流行だからといって思考停止で導入することはオススメしない。
 以下に欠点をまとめてみた。

メインストーリーとの相性

 当然ながら、メインストーリーに切迫感がある作品と寄り道要素は相性が悪い。

 「人質の命が危ない、一刻も早く助けないと!」とか「このままではあと二週間で世界が崩壊してしまう!」とか「ヒロインの余命はあと一ヶ月!」みたいな状況で寄り道三昧をしていたら、違和感が半端ない。

 こういった設定をせざるを得ないにしても、明確かつ短い期間は出さないほうが無難だろう。

メインストーリーのテンポ悪化

 メインストーリーでグイグイ引っ張るタイプの作品は、サブクエストと相性が悪い。
 「次の展開を見たい!」とプレイヤーに強く思わせても、それをサブクエストが挟まることによって腰を折ってしまうためだ。

 1〜2時間かけてサブクエストをやっているうちに、熱が冷めてしまったり、話を忘れてしまったなんてこともあるかもしれない。
 これは非常に大きな欠点であり、決して無視はできない。

 ならば、「面倒ならやらなければいい」と思うかもしれないが、これもそう簡単な話ではない。

面倒ならやらなければいいの問題点

 サブクエストの利点として任意性――つまり「面倒ならやらなければいい」ということを前述した。しかし、これは常に通じるわけではない。
 というのも、プレイヤーにとって要不要を判断するのは、それなりに難しいことだからだ。

 サブクエストをやらなかった結果、プレイヤーは強力な装備が手に入らず不利になるかもしれないし、面白いイベントを見逃すかもしれない。最悪、エンディング分岐に影響するかもしれない。
 そういった不利益を嫌うならば、プレイヤーは多少つまらなそうなサブクエストでも我慢してやらざるを得なくなってしまう。
 そもそも、サブクエストがつまらないかどうかはやってみなければ分からないものだ。

 結果、サブクエストの存在によって、作品全体の評価が下がったりしては目も当てられない。
 そんなわけで、質より量を優先してサブクエストで内容を水増しすることは、個人的には否定的に考えている。

クリア率の低下

 サブクエストでゲーム内容を水増しすると、ゲームの質が下がると同時にクリアまでの時間は伸びていく。
 そして、プレイヤーのクリア率は下がっていく。

 PSやSteamのトロフィー(実績)機能を見れば分かりやすいけれど、ゲームのクリア率というものはプレイ時間に比例して如実に下がっていく。
 これは「一見して難易度が低く誰でもクリアできそうな作品」でも例外ではない。何十時間もゲームをプレイするという作業は、かなりの根気を要するものなのだ。

参考

 【コラム】市販RPGのクリア率
 https://newrpg.seesaa.net/article/445846101.html

 あくまで、筆者の経験則になるが「クリアできたけど短くて物足りなかったゲーム」と「長さにうんざりしてクリアできなかったゲーム」なら、後者のほうが印象が悪いように思う。
 そして、長ったるい作品は時間を無駄にしたと感じるため、次回作があったとしても手を出さなくなる。

 特にストーリーのつながった続編にとっては致命的だ。クリアを諦めたRPGの続編に手を出す人なんて、相当な物好きぐらいだろう。

 続編に限らず長期的な商業展開を考える場合、ユーザの信頼を得るためにも過度の水増しは避けるべきではないだろうか。

バランス調整の複雑化

 サブクエストをこなすかどうかによって、プレイヤーの強さは変化する。サブクエストの報酬をしっかり用意すればするほど強さの変化は大きくなる。

 結果、想定する難易度の範囲は一本道のRPGより広くなってしまう。
 寄り道をたくさんしたプレイヤーにとっては簡単なボス戦も、メインクエストだけを一直線に進んできたプレイヤーにとっては難関かもしれない。

 サブクエストをプレイヤーが一切やらない前提で調整するにしても、ある程度のクリアを前提とするにしても、誰もが満足する難易度設定は難しいだろう。

サブクエストを面白くする方法


 結局のところ、サブクエストがプレイヤーを夢中にさせるほどに面白ければ、全ては許される。
 というわけで、サブクエストを面白くする方法を考えてみたい。

 通常のイベントを面白くする方法については、過去に以下の記事を書いたので、こちらも参考にして頂きたい。サブクエストだろうが、メインクエストだろうが基本は同じである。

参考

 面白いイベントを作るには?
 https://newrpg.seesaa.net/article/281558360.html

 例によって、無理に全てを採用する必要はないので、取捨選択をして欲しい。

本編との接続

 サブクエストの利点として『ストーリーの補完』を挙げた通り、サブクエストは本編とも積極的に絡めていきたい。

 例えば、主人公や仲間を初めとして、本編で登場したキャラクターを掘り下げるようなイベントを作成してみよう。
 ポッと出のモブキャラに頼まれたお使いイベントを面白くすることは難しいので、積極的にキャラクターの魅力に頼っていきたい。
 そういった意味では、サブクエストはいわゆるキャラゲーにも向いている。

 具体的には……

  • 仲間の掘り下げイベント。
  • 本編では出番に恵まれなかったサブキャラのその後。
  • 本編では中途半端になっていた敵キャラのその後。

 のようなイベントが考えられる。

 仲間の掘り下げイベントを仲間の最強装備の入手イベントにしてしまうのも良い方法だ。ご褒美にもなるので、ゲームを大いに盛り上げてくれるだろう。

連作短編

 サブクエストをクリアしたら、さらなる関連クエストを発生させてみよう。
 同じ依頼主によるクエストを連続させてもよいし、全く予想できないような派生をしても面白い。

 例えば、ある町で良かれとやったクエストが、別の町では災いの原因になってしまう――なんていうのはどうだろうか。
 このようにすれば、複数のクエストによって単なる短編には留まらない大がかりなストーリーも描くことができる。

 依頼主などの登場人物を印象づけやすいことも利点となるだろう。

コミカル

 サブクエストはコミカルなイベントにも向いている。本編ではできないような馬鹿馬鹿しいイベントを作ってみよう。
 もちろん、仲間との楽しい会話も忘れずに。


意外な導入

 最もありきたりなサブクエストの形式は、誰か(特にギルドなど)から依頼を受けるようなものだろう。
 そこでそのありきたりを裏切ってみよう。

 例えば、冒険の途中で唐突に巻き込まれるようなクエストを作ってみると面白いかもしれない。

ご褒美を用意する

 基本中の基本。
 ……なのだが、現実にはサブクエストの報酬が手間に見合わない作品はかなり多い。個人的には近年のRPGをプレイしていて、強く不満を感じる部分である。

  • 一時間かけて達成したクエストの報酬が、何に使うのかもよく分からない合成素材だった。
  • 大金が手に入ったが、そもそも金に困っていない。
  • 新しい仲間が加入したが、初期から加入した仲間のほうが強いので出番がない。

 ……なんてことはありがち。

 店や宝箱、ドロップアイテムなど普段から強力なアイテムが簡単に手に入るような作品なら、クエスト報酬のありがたみは薄くなる。そのためには、全体を通したバランス調整が必要だ。

 また、お金を報酬に含めるのは基本だが、普段からお金に困らないようなバランスではありがたみは薄れる。既に足りているものをもらっても、大して嬉しくないからだ。

 新しい仲間の加入は報酬としても、とても魅力的だ。ただし、サブクエストで加入するキャラクターの本編での扱いは難しい。
 PS版FF7のユフィ&ヴィンセントのように、本編ではいない可能性を想定しなければならない。となると、大きく物語に絡ませることも難しい。

 転職システムにおける職業のような要素があるならば、その解放は強い動機になるので積極的に活用していこう。
 その他には、経験値やスキルポイントのような作品独自のポイントを報酬に含めてもよいだろう。

テンポを良くする

 メインストーリーの腰を折りたくないならば、サブクエストはテンポを良くするように意識しておきたい。

 具体的にはダンジョンは短く、イベントも長すぎないように。ボス戦も短期決戦にする。ノーヒントのアイテム探しのような辛いことはさせない。

数を絞る

 質を高めるにはやはり数を絞ったほうがいい。
 個人的にはかなりの大作でもメインストーリーがしっかりあるならば、サブクエストは10〜20もあれば十分だと思う。

 数を絞れば、メインストーリーの腰を折ったり、ゲームバランスを崩したりといった問題も軽減できる。

複数種類の混在

 前述したサブクエストの種類を組み合わせることで、それらの長所を活かしていく。

 例えば、簡略型や自動生成型は単調なイベントになりやすく面白みは薄い。重要なイベントでないことはプレイヤーにも一目瞭然だが、それはある意味では長所にもなる。
 つまり「面倒ならやらなければいい」ということが分かりやすい。プレイヤーは自然と稼ぎなどの目的がある場合のみ取り組むようになるだろう。

ミニゲーム

 寄り道要素といえばミニゲームの存在も忘れてはならない。
 カジノやすごろくなどのギャンブル系や、シューティングやレースなどのアクション系など色々と考えられる。長い物語の良いアクセントになるかもしれない。

 ただし、通常とは異なるゲーム性を強要されること自体をストレスに感じる人も多い。特にRPGのプレイヤーはアクションを苦手とする傾向も強いはず。
 当然ながら、ストーリーの腰も折りやすいだろう。

 FF10はシリーズでも非常に評価の高い作品だが、最強武器の入手にミニゲーム(特に雷避け)が必要な仕様については不満の声が多く上がっていた。

 個人的にはミニゲームは無理してまで取り入れる必要はないと思う。

まとめ


 作品とサブクエストの相性は真っ先に考えておきたい。

 ストーリー重視を標榜しているのに、質の低いお使いクエストがたくさんあるようでは、高い評価を得られないだろう。

 反対にゲーム性に優れた作品で、各クエストのご褒美も適切ならば、多少のお使いイベントも許容されるかもしれない。ゲームが面白いからストーリーはおまけというわけだ。

 サブクエストをあえて採用しないというのも立派な判断だ。
 特にメインストーリー重視の作品ならば、安易なサブクエストの乱発は考えものだろう。

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posted by 砂川赳 at 17:02 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする