
特にFF10で採用された敵味方の行動順序を表示するUIは秀逸であり、
- 身軽なキャラクターは何度も動けるという直感的な分かりやすさ。
- それによるキャラクターの差別化。
- 行動順序を可視化することによる高い戦術性。
……といった長所を持つCTBは後続の作品へも多大な影響を与えた。
実際、ほぼ同じような仕組みを採用している作品は、現在もプロ・アマ問わず多数見かける。比較的後発の戦闘システムながら、これほど定着したものは珍しいだろう。
しかしながら、CTBはターン制ほど経験者が多くなく、あまり研究されているとは言い難い。というわけで、CTBで中〜長編を3回ほど完成させたことがある経験者として、バランス調整法をまとめてみた。
※当ブログでも、RPGツクールMV〜MZで使用できるCTBプラグインを公開しています。
※なお、CTBそのものについての説明は『戦闘システム@ 行動順序システム』を参照してください。
目次
素早さの重要性
CTBは素早さ至上主義か?
素早さに大きな差をつけない
素早さをインフレさせない
敵が素早すぎる場合の弊害
味方が素早すぎる場合の弊害
個別行動の問題点
素早さの重要性
ご存知の通りCTBにおいて『素早さ』は極めて重要なパラメータである。
古典的なターン制において、素早さの価値はそれほど高くない。
それもそのはず、キャラごとに2倍、3倍の差があろうが、行動順序が変わるだけ。大きな違いにはならないためだ。
※素早さが命中回避などに関わってくるパターンは除きます。
素早さが低いキャラは、確実に敵より後に行動するため、それを利用するなんて戦術も有力になるほどである。
※いわゆる『置きベホマラー』『置き賢者の石』など。
しかしながら、CTBにおいてはそうではない。
素早さに比例して行動回数が増えるため、攻撃や回復・補助などあらゆる行動に対して恩恵が得られるようになっている。
そのため、ターン制と同じ感覚で素早さを設定すると、バランスが崩壊してしまう。そうならないように、CTBでは入念に敵味方の素早さを調整したい。
以降の内容も大半が素早さに関するものとなる。
CTBは素早さ至上主義か?
もっとも、CTBは『素早さ史上主義』である――という極端な見方にも反論しておきたい。
無論、素早さが重要なパラメータなのは間違いない。
しかし、あらゆるパラメータを上回るほどに重要かというと、実はそうではない。
あくまでHP、攻撃力、防御力、魔力などと、素早さが同等の価値になるだけだと考えて欲しい。
例えば、単純に「攻撃力 - 防御力」の引き算でダメージが決定されるゲームを考えてみよう。
※いわゆるアルテリオス計算式。言うまでもなく『攻撃側の攻撃力』と『防御側の防御力』という意味です。
- 攻撃力50 - 防御力40 = ダメージ10
という決め手不足の状況を、能力の引き上げによって改善したい。
- 攻撃力100 - 防御力40 = ダメージ60
この通り、攻撃力を倍にすればダメージは6倍になる。
しかし、素早さで同等の火力を出そうとすると、素早さを6倍にする必要がある。
この場合、明らかに攻撃力を上げたほうが効率がよい。
CTBだからといって、素早さが最重要とは限らないのだ。
そもそも、キャラクター毎のパラメータに2〜3倍もの差をつけたら、大抵はバランスが崩れる。HPだろうが攻撃力だろうが魔力だろうが、それは同じだ。
崩れないとしたら「戦士の魔力」「魔法使いの攻撃力」のように事実上の『死にステータス』と化している場合だろう。
事実、ターン制の素早さは相手をある程度上回っていれば十分であり、過度に上昇させても恩恵はない。状況によっては半ば『死にステータス』と化すため、そのような問題が起きないというだけに過ぎない。
素早さに大きな差をつけない
CTBにおける素早さは常に機能するパラメータであるため、『死にステータス』にはまずならない。HPのように全てのキャラに対して、しっかり調整する必要がある。
というわけで、答えは単純。
CTBにおいてバランス調整する際は、素早さに大きな差をつけなければよい。
※参考:拙作ミスティックスターの最も遅いキャラのクリアレベルの素早さは70強、最も速いキャラは110強。だいたい1.5倍ぐらいの差が無難かなって気がします。これに加えて装備で補強できる仕様です。
素早さをインフレさせない
また、レベルアップなどにおける上昇量も重要。
プレイスタイル次第で素早さに大きな差がつくようなバランスだと、調整が難しくなる。
実際、CTBの先駆者のFF10はプレイスタイル次第で素早さに大きな差がつくシステムになっている。そのせいで後半は極めてバランス崩壊を起こしやすかった。
なので、レベルアップなどによる上昇量も控えめにしたほうが無難だろう。
例えば、HPや攻撃力のようなステータスならある程度インフレさせたほうがよいかもしれない。序盤は10ダメージしか与えられなかったキャラが、後半100ダメージを与えられるようになるのは、プレイヤーも気持ちが良い。
けれど、素早さは他の敵味方との相対的な差によって、行動回数に差がつくだけである。数値そのものをインフレさせても、プレイヤーの快感にはならない。
※参考:ミスティックスターの一番素早いキャラの素早さ初期値は50。クリアレベルでの素早さは110〜120程度になっている。つまり変化は二倍強に過ぎない。HPや攻撃力が10倍近くにインフレするのと比較して控えめ。
極端な話。素早さはレベルで成長しないステータスでも問題ない。つまりキャラの個性として設定してしまうというわけだ。
もちろん、キャラクターだけでなく装備や職業の特性としてもOK。
実際、FF5やロマサガ2〜3のように素早さがレベルで成長しない名作はたくさんある。
ちなみに、これはCTBに限ったことではなく、通常のターン制でも同じである。
敵が素早すぎる場合の弊害
CTBの性質上、敵が素早すぎる場合はターン制以上に一方的な攻撃を受けることになる。
特に戦闘開始時の行動順序には注意を払いたい。
CTBでは戦闘開始直後に逃げるなどのコマンドを選べない作品も多いが、その場合は為す術がなくなってしまう。
対策として、戦闘開始時に全体コマンド(パーティコマンド)を表示して逃げるを選択できるようにするのも一つの手。コマンド入力手順が一つ増えるのは難点だが、理不尽感は軽減できる。
味方が素早すぎる場合の弊害
より見落としがちなのは、味方が素早すぎる場合の弊害だ。
例えば、4人パーティの作品で全員が敵より素早く先制できるとする。さらに内2人の素早さが非常に高く、敵より先に2回行動できるとしよう。
通常のターン制なら計4回しか攻撃できない場面で、先に計6回行動できる状況となるわけだ。
一見すると、一方的に何度も攻撃できて爽快感があるのだが、そこに落とし穴がある。
6回行動できるということは、一方的に敵を封殺できる可能性が高いということでもある。となると、敵の行動を見る前に戦闘が終わる可能性も高い。
通常のRPGにおいては、敵のほうが遥かに種類が多いため、その行動も多彩になる。ダンジョン毎に異なるモンスター達は作品を大きく彩ってくれるはず。
対してプレイヤーが扱う味方は精々4〜8人程度、自然とその行動も決まったものになりがち。
敵を完封できるということは、敵の行動を見る機会が奪われるということでもある。これは戦闘が単調になる危険性を秘めている。工夫すれば敵を完封できる――というのは確かに気持ちいいのだが、このデメリットもよく考えよう。
では、6回行動しても終わらないように敵をしぶとくしてはどうか――と考えた人もいるかもしれない。
残念ながら、こちらはこちらで問題がある。
ターン制なら4回行動で一巡するところが、この例では6回行動が一巡になっているわけだ。単純計算で味方の行動時間とコマンド入力回数は1.5倍である。その分、ゲームテンポが遅くなるのは避けられない。
そんなわけで、戦闘開始直後から何度も行動できるような調整は避けたほうが無難かと思う。たま〜にあえて素早さが極端に低い敵を作ってみるぐらいでちょうど良いのではないだろうか。
なお、戦闘メンバーが1〜3人の作品では、これらのデメリットも軽減される。この点では、人数の少ない作品のほうが自由にやれるかもしれない。
個別行動の問題点
最後に、素早さ以外の問題点も一つだけ指摘したい。
CTBではターン制と異なり、一人ずつコマンド入力を行う点である。これによりターン制よりも機敏な行動判断が可能となる。
ターン制の場合
- 敵1が味方1を攻撃
- 味方1の攻撃
- 敵2が味方1を攻撃→死亡
となる場面でも……
CTBの場合
- 敵1が味方1を攻撃
- 味方1が自分を回復
- 敵2が味方1を攻撃→耐える
……と、全く異なる結果となる。
ターン制とCTBを比較すると、同じような状況でもプレイヤーにとって有利な展開になりやすい。
※もっとも、ターン制の代表格であるドラクエシリーズの『作戦』でも、機敏な回復は可能だったりする。
これは長所でもあるのだが、一方でピンチに陥りにくいことはゲームバランス上の注意点となる。
CTBでは「攻撃を受けたら回復」でしのげる範囲が、ターン制よりも幅広い。……ということは、「攻撃→回復」の単調パターンの繰り返しに陥りやすいということでもある。
CTBにおいて、ターン制と同じような難易度&緊張感を維持したい場合は、敵の攻撃を激しくしたり、味方の回復を制限したりする必要があるだろう。
基本的には回復魔法の制限がポイントになるかな〜というのが僕の意見。例によって、以下の記事を貼っておきます。
回復魔法の問題点
https://newrpg.seesaa.net/article/462407181.html
>RPG制作講座目次に戻る