ドラクエシリーズやアトリエシリーズなどが有名。
『錬金』『鍛冶』『調合』『料理』『交換』など作品によって呼称が変わるが、基本的には似たようなものとなっている。
※参考:ドラゴンクエストヒーローズの錬金釜
合成は多くの作品で採用されているが、なかなか難しいシステムだ。
プレイヤーに要求する手順も多い上に、開発者側に要求される作業量もそれなりに多い。
そんな合成システムについて、考察してみたい。
目次
合成システムの特徴
合成物
レシピ
性能の変化
合成システムのメリット
ゲーム性の強化
アイテムに意味を持たせる
アイテムの入手を細分化
世界設定の補強
合成システムのデメリット
手順が増える
不親切
アイテム数が増加する
売却が困難となる
素材アイテムのご褒美としての弱さ
バランス調整が困難
古典的システムとの競合
デメリットへの対策
素材アイテムを限定する
合成のルールを単純化する
素材の種類を絞る
アイテム入手時に説明を表示
図鑑でフォロー
素材毎に合成できるアイテムを明示
素材の売却で合成
金欠にする
合成に特化
合成できる種別を限定する
まとめ
合成システムの特徴
一口に合成システムといっても、作品によって細部は異なっている。
実際には以下のような要素によって、差別化される。
合成物
何を素材として、何を合成するか。
主に装備を中心としたアイテムが合成の生成物になることが多いが、料理なども仕組みはほぼ同じである。
また、アイテムという枠にはこだわらず、それ以外にも応用可能である。
例えば、スキルの合成のようなシステムを作成してもよいし、動物やモンスターの配合なども一種の合成といってよいだろう。
レシピ
レシピ――つまり、合成するアイテムの組み合わせである。例えば、以下のようなパターンに分類される。
- 店や宝箱、本棚などからレシピを入手するパターン。
比較的オーソドックスなパターン。仕様上、取り逃しが発生しやすい。
- 店毎に定められた選択肢で合成できるパターン。
自由度は下がるが、取り逃しは発生しづらい。
- 元になる素材があれば、進化先の候補が表示されるパターン。
例えば、銅の剣を所持していた場合、「銅の剣と鉄鉱石を組み合わせると鉄の剣を合成できる」ようになる。
- レシピは存在せず、何でも合成できるパターン。
自由度は非常に高いが、ハズレアイテムも発生しやすい。また、制作者の想定以上に序盤から強力なアイテムが作成できてしまうこともある。
以降では、どちらかというとレシピが存在するタイプを念頭に置いている。
性能の変化
同じ生成物であっても、素材や合成する方法によって性能に変化がつく。
例えば、ドラクエ11の鍛冶ならば『銅のつるぎ+2』というように強化される。
アトリエシリーズはさらに複雑で、同じアイテムであってもほとんど別物のような性能に変化してしまうことすらある。
同じアイテムを+1、+2……というように重ねて強化できる場合もある。
合成システムのメリット
では、どういった狙いがあってゲーム制作者は合成システムを採用するのだろうか?
そのメリットをまとめてみたい。
ゲーム性の強化
いかにして強力なアイテムの合成を行うかをプレイヤーに考えさせることによって、ゲーム性を高める。
目当ての素材が手に入るエリアを探索したり、素材を落とす敵を優先的に狩るといった戦略性が発生する。
作品によっては、合成したアイテムをさらに新たな合成の素材にすることで、より強力なアイテムを作り出すなんてこともできたりする。
場合によっては、序盤から強力な装備を作成できるなど自由度の高いゲームプレイが可能になる。
アイテムに意味を持たせられる
一見して不要なアイテムが重要な素材になったりと、幅を持たせられる。
これにより、アイテム収集を楽しくする効果がある。
アイテムの入手を細分化できる
ダンジョンやフィールドの広い空間に何も置かないのは寂しい。あるいは大量に用意したクエストに報酬を用意したい。
とはいえ、安易に強力なアイテムを放出してしまうと、すぐにインフレしてバランスが崩れてしまう。
というわけで、アイテムを素材に分割して配置することで、プレイヤーに対する報酬をほどほどにコントロールできる。
オープンワールドやダンジョンRPGなどの探索を重視する作品、あるいはネトゲやソシャゲなどプレイヤーを長く引き留めたい作品において、相性が良い方法だ。
近年の作品では頻繁に採用されるので、プレイヤーとして経験があるという人も多いのではないだろうか?
ぶっちゃけ水増しと言えば水増しである。
世界設定の補強
作品の世界設定によっては「商人が強力なアイテムを販売する」という状況自体が不自然に感じられる場合もある。
現代日本を舞台にした作品において、普通の店で魔法の剣を購入できたら違和感があるというわけだ。
例えば、ペルソナシリーズでは異世界の敵から獲得したアイテムを素材とすることで、現実ではあり得ないような装備を作成しているという設定がある。
合成システムのデメリット
冒頭で『なかなか難しいシステム』と表現したように、合成システムは扱いの難しいシステムである。
実際のところ、個人的にはかなりデメリットも多いシステムだと感じているので、その点をまとめてみた。
手順が増える
合成というシステムは必要な手順が多い。
例えば、一例を挙げてみよう。
- 宝箱や店からレシピを入手&購入。
- レシピを参照し、必要な素材とその所在を確認。
- 素材を捜索&入手。
- 合成屋に戻って合成開始。
- 合成時のミニゲームによって完成度が変化。
……というように、なかなか大変である。
これは比較的、手間のかかる仕組みを想定した場合だ。例えば、どこでも合成を実行できる作品ならば、もう少し手順は緩和される。
いずれにせよ、お金を貯めて買うだけの古典的な店よりも手間がかかるのは間違いない。
不親切
合成をしようにも素材の入手先が分からないと「どこで手に入るのかも分からないアイテムを探す作業」になってしまいがち。
勘や総当たりで探し回るか、攻略を見るか、あるいは成り行きに任せて見つからないなら諦めるしかない。
このままでは、プレイヤーがシステムを活かすことは難しく、あまりゲーム性も高いとは言えなさそうだ。
もし、そうならないようにしたいなら、ヒントを出す必要があるが、プレイヤーにとってはそういった情報を確認する手順がさらに増える。
あるいは、ゲーム進行に応じて、自然と素材が集まるようにすれば手間は削減できる。
……が、根本的なことを言うと、それならばこんな手間のかかるシステムを採用する必要性は低い。普通の店――つまり「お金を貯めれば、良いアイテムを買えるシステム」を採用したほうが、手っ取り早い。
……と、なってしまうので、やはりプレイヤーに対して、多少の不便や面倒は許容してもらうしかない。その上で、ゲーム性を高める目的で合成システムを採用すべきだとは思う。
アイテム数が増加する
合成には素材となるアイテムが必要となる。
必然的にアイテム数が増加し、アイテム一覧が複雑化する。
プレイヤー視点ではアイテムの管理が大変になり、作品の快適性を落とすことになる。
制作者視点でも、もちろんデータ設定の手間が増える。
売却が困難となる
合成システムの存在するゲームにおいては、一見して役に立たないアイテムが思わぬ合成の材料となることがある。
システムの奥深さを高める効果があるが、一方で不用品の判別が困難になるということでもある。
つまり、迂闊に不用品を売却できなくなるということだ。
昔、初期装備の木刀を売り払うと最強武器が手に入らなくなるマイナーRPGがあったが、こういった問題が起こりやすくなる。
上記の「アイテム数が増加する」と合わさって、さらにアイテム一覧が複雑化してしまう。
素材アイテムのご褒美としての弱さ
素材アイテムはご褒美としての機能が弱い。
なぜなら、素材アイテムは単体では機能しないため、入手直後のプレイヤーにとっては「何かよく分からないアイテム」であるためだ。
そのため、プレイヤーの印象には残りにくい。
古典的な宝箱から直接装備を手に入れる方式なら、手に入れた瞬間に有用であることが分かる。ご褒美としては非常に分かりやすい。
お金を貯めて装備を買う方式なら、努力の蓄積が明確に反映されるのが利点だ。ドラクエでコツコツお金を貯めて鋼の剣を買った時は嬉しいもの。
計画を立てて、それを達成するというのはそれ自体、ゲーム性の高い仕組みなのだ。プレイヤーにとって印象に残りやすい。
対して、合成システムでは「いつの間にか溜まっていた素材でいつの間にか合成できるようになっていた」みたいなケースはとてもありがち。
合成システムの存在する作品では、アイテムの入手量自体も増大する傾向にあるので、一つ一つのアイテムの印象も薄くなりやすい。
わざわざ手間をかけたのに、古典的システムより印象で劣ってしまう――なんてことにもなりかねない。
なお、他のご褒美の手段としては宝箱にレシピを入れる方法もある。
レシピなら合成先のアイテムが想像しやすいという利点もある。
ただし、この場合も即座にアイテムが手に入るわけではないので、やはり古典的方式よりもご褒美としては弱い。
バランス調整が困難
プレイスタイルによる装備の差は古典的なRPGより大きくなるため、バランス調整の難易度も上昇する。
序盤から強力な武器を作られてしまった結果、制作者の想定よりもずっと難易度が下がってしまうなんてこともあり得る。
レシピなどの要素で縛ることで一定の対処はできるが、今度は逆に自由度は下がってしまう。
一方でプレイヤーがレシピや素材を見つけ出せなかった結果、想定よりも難易度が上がってしまう場合もある。
DQ10オフラインでは装備のレシピの場所が非常に分かりづらく、中盤の装備のままラスボスと戦うプレイヤーが続出した。
……というように、合成とはとにかく手順が多いシステムなので、プレイヤーが『何か』を見落とす可能性は高い。
アトリエシリーズなんかは典型だけど、複雑な合成システムを使いこなせるかで、体感の難易度が大きく変わる。そのため、同じ作品に対して『簡単』というプレイヤーと『難しい』というプレイヤーが入り混じっていたりする。
全体的な傾向として、合成システムは『二周目以降のプレイヤー』や『攻略情報を見ながらプレイするプレイヤー』『丹念に探索やシステムの活用を行うプレイヤー』にとって有利なシステムと言えそうだ。
逆に言うと、攻略を見ずにさっさと進めたいというプレイヤーとはあまり相性がよくない。
古典的システムとの競合
既に何度か触れたが「お金を払えば装備を買える店」や「装備が手に入る宝箱」といった古典的システムとの併用はどうするか?
店や宝箱から十分なアイテムが手に入るなら、合成システムはそもそも不要である。
せっかく手間をかけて装備を合成しても、すぐ次の町やダンジョンでより強力な装備が簡単に手に入るならガッカリしてしまうだろう。
店や宝箱の品質を落とすのが無難なところだが、それらの喜びは必然的に弱くなる。
デメリットへの対策
以上、合成システムのデメリットを多数紹介した。
そこで次は、どうにかデメリットを軽減して、合成システムを活かすための対策案を考えてみたい。
※同時にメリットを削ぐようなものも多いので、取捨判断はお任せします。全てを取り入れればよいというものではないです。
素材アイテムを限定する
「装備品は合成には使えない。あくまで合成は素材専用アイテムでのみ行う」「素材専用アイテムは別のカテゴリに表示される」といったルールを付ける。
これによって、アイテム一覧が複雑化することを防ぐ。これなら、不用品の売却もやりやすくなる。
一方で「一見、役に立たない弱い武器が強力な武器の材料に!」というような意外性はなくなるため、システムとしての幅は狭まってしまう。
合成のルールを単純化する
例えば「ミスリルがあればミスリルソードやミスリルスピア、ミスリルメイルを作れる」というようにルールを単純化する。
これなら非常に分かりやすい。プレイヤーにとっても「素材の入手は装備の入手に等しい」ということが直感的に伝わるはずだ。
※素材が単一のものを合成といってよいかは置いておきます。
この手法はプレイヤーが使用している武器の種類が不明な場合にも有効だ。「斧を手に入れたけど、斧使いが誰もいない」なんて悲劇を防げる。
素材の種類を絞る
上の延長線上の発想だが、思い切って素材の種類を厳選してしまおう。
というように、素材を厳選すればプレイヤーも素材の種類を覚えやすい。
このような調整にすると、素材は一種の通貨のように機能する。
アイテム入手時に説明を表示
アイテム入手時にその名称だけを表示されても、プレイヤーには何か分からないことが多い。特に素材アイテムの数が多くなってくると、アイテム一つ辺りの入手が軽くなりがち。
そこで、アイテム入手時に同時に説明を表示することで「いつの間にか貴重な素材を入手していた」という状況をなくす。
その際、レアリティなどを表示すると分かりやすいかもしれない。
ちなみに、ブレスオブザワイルドでは初出のアイテムのみ、説明を表示するような仕組みになっている。
図鑑でフォロー
アイテム図鑑でアイテムの入手場所を表示したり、魔物図鑑で敵のドロップアイテムを表示する。これによって、プレイヤーが戦略的にアイテム収集&合成をできるようにする。
当然ながら、実装の手間もそれなりに大きいし、プレイヤーにとっても確認する手間が発生する。
例えば、魔物図鑑を開き、百種類を超える敵のドロップアイテムを一つ一つ確認していくような作業は、かなりの手間を伴うはずだ。
ならば――と、アイテム図鑑にドロップする敵を記載したり、検索機能を設ける方法もあるが、実装工数はさらに増えていく。
素材毎に合成できるアイテムを明示する
素材アイテムにカーソルを合わせた際などに、そこから合成できるアイテムを表示する。作成したことのないアイテムは????表示にしてもよいだろう。
これならば、不用品かそうでないかも区別できるので売却もしやすい。
例によって、実装工数は増える。
素材の売却で合成
ペルソナシリーズでは「素材を店に売却することで、それを材料とした装備が店頭に並ぶ」というシステムを採用している。
※正確には覚えてませんが、ペルソナ4だけのシステムかも……。
このシステムでは素材アイテムを手元に残すメリットは全くない。従って、売却も一括でできるようになっている。
この方法なら素材アイテムを管理する手間が大幅に削減できる上に、アイテムを組み合わせるという合成システムの味も残せている。
筆者自身、この記事を書くまではあまり意識してなかったけれど、上述した『世界設定の補強』と合わせてなかなか秀逸なシステムだと思う。
ただし、素材を売却できる店を制限するなどしないと不自然になるかも。例えば、ペルソナ4では武器屋でのみ素材を売却できるようになっている。
金欠にする
ゲームバランスを調整し、金欠気味にしておく。
合成をした場合は、少ない価格でアイテムが手に入るようにする。これにより、店よりもコスパが良いというメリットを与える。
ドラクエシリーズがよくやっている調整である。
合成に特化
装備品など多くのアイテムは基本的に店や宝箱では扱わない。あるいは露骨に性能の低いアイテムのみを販売し、あくまで合成で作るように誘導する。
これによって、既存システムとの差別化を図る。
アトリエシリーズがこの調整に近いだろうか。
合成できる種別を限定する
例えば、武器や防具は店や宝箱から普通に手に入るが、装飾品は合成でしか作れないようにしてしまう。
この方法ならば、既存システムとの差別化も自然とできる。
まとめ
重ねて述べたように合成システムは扱いの難しいシステムである。
……にも関わらず、ここ10〜20年ではかなりの流行をしており、今や大手メーカーのRPGでは採用していないほうが珍しいぐらいだと感じている。
しかしながら、個人的な意見を言うと、無闇に採用され過ぎではないかとすら思っている。
例えば、最近プレイしたRPGで「クリアに数十分かかるクエストの報酬が用途のよく分からない素材アイテムだけだった」なんて経験があった。
これが昔のRPGだったなら、ごく単純に装備品がそのまま報酬になっていたと思う。
上の例は普通のオフラインRPGなので、そのような仕組みにする意味もあまりないように感じた。システムの複雑化と水増しによって、かえって面白みを失っていないだろうか。
……そんなわけで、近年のRPGが必要以上に複雑化&薄味化している要因になっているとも感じるので、採用するにしてもよく考えておきたい。
例えば、ストーリー重視でサクサク進めて欲しいという作品に、やたら凝りまくった合成システムを採用するのは考えものだろう。
どちらかというと、システム重視の作品に向いていると思う。
プレイヤーへの負担を考えても、他のシステムとのバランスも考慮したい。
例えば、複雑なスキル習得システムを備えた作品に対して、同じく複雑な合成システムを加えると、一層プレイヤーの手間が増えてしまう。
面倒なシステムになっていると感じたならば、削るべき部分を削ってプレイヤーの負担を抑えるのも一つの選択だ。
開発効率の面でも、システム実装やバランス調整の工数が大きく増加するので、なかなか大変である。
メインのシステムとしてガッツリ作るか、あくまでサブのシステムとして簡略化して作るか、方針はしっかり決めておいたほうがよいと思う。
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