アマチュアRPG作家としては気になるところですが、今までは調べようがありませんでした。……が、実はPS3以降の市販ゲームに限り、それを確認する方法があったりします。
どうするかといえば、トロフィー機能を参照するだけです。
※PS3以降を持ってない方のために説明すると、トロフィーというのは各ゲームで達成した出来事を記録するための機能です。「とあるボスを倒した」「レアアイテムを手に入れた」「とあるイベントをクリアした」などといったものがあります。
PS4(Vitaも?)ではネット接続しているプレイヤーを対象に、各トロフィー毎の達成率が表示されるようになっています。
大抵のゲームにはクリアによるトロフィーが存在しているので、クリア率も確認可能――というわけです。
※細かいことを言うと、PS3には達成率の表示はありませんが、PS4からPS3のゲームも確認できます。
そんなわけで興味本位を発揮して、自分が持っているタイトルを確認してみました。PS3以降のゲームはさほどやれてないので、サンプル数がやや少なめです。
PS3〜4におけるRPGのクリア率
タイトル | クリア率 | 参考クリア時間 |
---|---|---|
FF13 | 27.7% | 40時間 |
FF15 | 38.2% | 30時間 |
テイルズオブヴェスペリア | 54.8% | 70時間 |
テイルズオブグレイセスf(+追加編) | 63.8%(47.4%) | 55(+15)時間 |
テイルズオブベルセリア | 44.3% | 50時間 |
ペルソナ5 | 47.9% | 80時間 |
英雄伝説 閃の軌跡 | 45.8% | 70時間 |
英雄伝説 閃の軌跡2(+追加編) | 53.3%(42.7%) | 50(+10)時間 |
ウィッチャー3 | 29.4% | 70時間? |
デモンズソウル | 36.7% | 30時間? |
※注意書き
- 2017/1/12調べ。FF15は発売間もないので、まだ多少は上がるかも。
- クリア時間はあくまで筆者による参考値です。
自分でクリアしてないものは?をつけています。
- 本編とは別に後日談的なものがある場合は()で追記しています。
- PS+のフリープレイ対象である場合は、率が下がると考えられます。「無料なのでインストールしたけど、すぐ止めた」というパターンがあるので。
この中では、閃の軌跡1〜2やデモンズソウルがそれに該当。
さて、どうでしょうか? 個人的には驚くほど低いですね。
見る限り、プレイヤーの半分程度クリアしていればマシなほうです。
自分の場合、お金を出して買ったゲームの九割はクリアするようにしています。そのため、他のプレイヤーについても、標準的なRPGならば、八割ぐらいはクリアするだろう――と勝手に想像していました。
今の時代、ネット上で簡単に攻略が見れますので、クリアできないゲームというのはさほど多くないはず――という見立てもありました。
それでもご覧の有様。
またこれは、ゲーム機一台辺りに対する判定であることも注意してください。実際には、家族で一台を共有しているようなパターンが大半でしょう。
「兄ちゃんはクリアしたけど、弟は飽きてやめた」などのパターンであっても、トロフィーは達成とカウントされます。
一人当たりのクリア率は、もう少し低いと考えたほうがよいかもしれません。
低すぎるFF13のクリア率
個別の例に言及すると、目に見えて低いFF13(27.7%)が際立ちます。
クリアしたプレイヤーは全体の三割にも満たないのが現実。他のRPGと比較して、半分近いクリア率と表現してよいでしょう。
ストーリー的な評判があまりよくないのは周知の通りですし、難易度も高めです。ただプレイ時間(筆者で40時間)がさほど長くないので、そこまでクリア難度が高いという印象はありません。
なんだかんだで「手応えがあって面白い」と楽しんでいる声も聞こえたため、ここまでの実態は予想外でした。
そんなわけで、投げ出されやすい理由を考えてみます。
- 基本的な難易度が高い。
※後日、イージーモードが搭載されたようだが、時既に遅し。
- 後半、自由度が急激に上がる。それ自体は長所とも言えるが、サブイベントをこなしているうちに飽きる場合も。
- ゲーム進行によって成長の上限がある。
レベルを上げてのゴリ押しが難しい。
- 敵がしぶとく、回復が容易でなかなか全滅しない。
結果、戦闘が長ったるく長時間戦ってからの全滅がプレイヤーの心を折る。
- 売上が多いためユーザ層が広い。相対的にライトユーザの比率が高い。
こんなところでしょうか。
特に3,4はこのゲーム特有の要素なので、影響が大きかったのではないかと思います。
察するに、FF13という作品は想像以上に敷居が高く、マニアックなゲームになっていたのではないでしょうか。
http://www.psmk2.net/index.php?r=site/title&title_id=519&db=1
事実、レビューサイトの点数分布が特徴的で、高得点から低得点へ満遍なく広がっています。これは人を選ぶゲームに見られる特徴です。
多くのユーザはゲームをクリアして批判するような段階にも至らず、『このゲームは難しい』『雰囲気が合わない』『つまらない』などといって去っていったのではないかと。
さすがに「クリア困難なゲーム=悪いゲーム」と決めつけるのは短絡的かと思います。デモンズソウルのようなヘビーユーザ向けなら、そうでなくては面白くないというファンも多いでしょう。
ただ、ミリオン級の大衆向けRPGとしては致命的です。プレイヤーの七割が放り出すゲームが、売上百万を維持できるかというとそりゃ無理です。
特にFFのようなストーリーが重視される作品ではなおさらです。なんせ、最後までやらなければ真に堪能できたとは言い難いですから。
そして、堪能できなかった作品の次回作を買う動機は薄いです。FF13→FF13−2のように物語の繋がった続編なら、前作をクリアしなければ意味不明になります。
売上データ
- FF13 :初週151万 累計193万
- FF13−2: 累計84万
- FF13LR: 累計28万
- FF15 :初週69万 累計100万?(未確定)
続編のものとして参考
- FF10 :累計250万
- FF10−2:累計200万
こうしてみれば、FF13−2およびFF15の売上激減も納得できようというものです。
一般的なRPGの半分程度しかクリアされていないFF13の次回作。ゆえに、前作の半分しか売れなかった。ちょっと強引かもしれませんが、こういう見方もできるかなと。
というか、宣伝や話題性ではポケモンサンムーン(累計300万超え)にも負けないレベルだったのに、売上は天と地の差です。本格的にユーザーから愛想を尽かされているのだな――と、かつてのFF信者スクエニ信者としては悲しい気分です。
今のところ、FF15のクリア率(38.2%)も厳しいところですね。ペルソナ5(47.9%)の数分の一の時間でクリアできることを考えると、やはり低いです。
その他トロフィーを眺めて気づいた点
クリア率は半分が標準
クリア率が50%程度あれば標準的。
プレイヤーの半分しかクリアしてないのでは、次回作で売上激減するんじゃ――と、心配になりそうですが、わりと大丈夫なようです。
それだけあれば、次回作も同等程度の売上が見込める模様。もちろん、内容と評判がまともなことが前提です。
上の表で言えば、テイルズオブグレイセスfの本編クリア率(63.8%)が優秀ですが、次回作の売上にも結びついているようです。
- テイルズオブグレイセス:初週36万本 累計55万本(PS3+Wii)
- テイルズオブエクシリア:初週52万本 累計67万本(PS3のみ)
エクシリア以降で評判と売上を落としたのが、つくづくもったいないですね。この調子ならFF15(初週69万)の背中も見えていたのでは……。
こうなると「難易度が低くクリア時間も短いが、つまらないRPG」だとクリア率や次回作売上がどうなるのか――とか、気になりますが、データがないので語りません。
超序盤の脱落者
開始一時間など、超序盤での脱落者が5〜10%程度どのゲームにも存在する。
合わないと見て、速攻で中古に売り払っているとかでしょうか?
脱落率はプレイ時間に比例
多くのゲームでは、シナリオの区切りによってトロフィーを獲得できるようになっています。つまり、プレイヤーがどの段階でどの程度脱落したかも一目瞭然です。
当然、難所になるほど達成率が下がるはず。……そう考えていたのですが、思ったほど差が出ませんでした。
例えば、FF15の悪名高い十三章ですが、達成率の変化は47%→43%というように、精々が一割程度に過ぎません。
他の章と比較しても大差はありません。単純に時間のかかる章で、脱落者が多い傾向があったぐらいです。特に三章(83%→71%)のように、自由度が上がるタイミングでの脱落者が目立ちました。
まとめると……
プレイヤーの脱落は最初から最後までわりと満遍なく存在する。
もう少し言うと、プレイ時間が伸びるごとに、脱落者が発生している。
評価が良いゲームであっても、1時間伸びるごとに1%ぐらいは脱落。
100%→99%→98.01%→97.03%→96.06%→95.10%という感じです。
- 25時間で、77.78%
- 50時間で、60.5%
- 75時間で、47.06%
- 100時間で、36.6%
クリア率の表とどことなく一致しています。
しかも、これは良作として評価される作品、および敷居の低い作品の場合です。
FF13に至っては1時間ごとに3%前後脱落している計算になります。
こうしてみると、プレイ時間稼ぎって本当に必要なのか疑問に感じます。
「プレイ時間を稼いで、中古に売られないようにしている」なんて俗説を聞きますが、本当だとしたら危うい発想ですね。プレイヤーが投げ出して、次回作を買ってもらえなくなる危険のほうが大きいのではないでしょうか。
クリア後プレイヤーはさほど多くない
クリア後のおまけ要素まで手を出すプレイヤーは、クリア者のさらに半分未満。
トロフィーのコンプリートまでやるプレイヤーは、難易度にもよるが数%程度。
どうしてもこういったヘビーユーザの声は目立ちますが、基本的には少数派と考えたほうがよさそうです。しっかりやり込む根強いファンも、それはそれで大事にしたいでしょうけれど。
洋ゲ―RPGの時代は遠そう
ウィッチャー3のクリア率も30%と低め。追加DLC(無情なる心)のクリア率に至っては全プレイヤーの11%。
評判のいい作品でも、やはり敷居の高さはいかんともし難い模様。日本でこの種の洋ゲ―RPGが流行る日は遠そうです。
逆に言えば、FFシリーズは海外で売上を維持できる可能性も……?
まとめ
みんな意外とRPGをクリアせずに投げ出していたという驚愕の事実。
色々と書きましたが、作品を評価する上で、クリア率は客観的な指標として使えるんじゃないでしょうか。
例えば、レビューサイトの評価だと、どうしてもクリアしたユーザの声が中心になります。
ですが、多くのゲームではプレイヤーの半数以上が未クリア――というのが現実なわけで、そっちの半分の実態を知ることも大事なんじゃないかなと。
ともあれ、最近のRPGは相当敷居が高いんじゃないか――と、思わせるようなデータでした。
- 全般的にプレイ時間が長くて初心者や社会人プレイヤーには厳しい。
- FF13、15は程々のプレイ時間だが、すっかり人を選ぶゲームに。
- その他のゲームも色んな要素が盛り沢山で、疲れてしまうのかも。
そう言えば、PS3以降で敷居の低いRPGを見た記憶がほとんどありません。
今時のRPG初心者はどうやって入ってるんでしょうかね? やっぱり、携帯機のドラクエやポケモンになるんでしょうか。
ドラクエのリメイクとかなら、遊びやすくて入りやすいでしょうけど。新作でライトユーザを取り込める作品がないとすれば、大いに問題だなと思います。
ドラクエやポケモンの売上が安定しているのは、ゲームデザインがシンプルかつプレイ時間が程々で、クリア率が高いから――とも考えられます。……ドラクエ7みたいな例外もありますけれど。
そんなわけで勝手ながらドラクエ11には、売上的にも内容的にも大いに期待しておきます。