【RPGレビュー】ファイナルファンタジー15

2016年12月03日

発売元スクウェア・エニックス(公式)
機種PS4
発売日2016/11/29
質量物語システムバランス快適性美術音楽平均クリア日
807070606010080742016/12/02

質量/物語


 自分の場合、難易度はノーマルでクリアまで32時間ほど。
 それなりにサブクエストをやったり、道に迷ったり、ボス戦に苦戦したり、イベントで手間取ったりした上でのクリア時間。シリーズの過去作品と比較しても、メインストーリーは短いように思う。
 ただサブクエストは豊富に存在するので、やりこめばもっとかかるはず。逆に難易度イージーでサクサク本編を進めれば、初回でも二十時間を切りそう。

物語

 滅ぼされた王国の王子ノクティスが、三人の仲間と力を合わせ、帝国と戦うために立ち上がる。
 ノクティスは帝国と戦う力を手に入れるため、十三の武器を集め、六神(過去作の召喚獣に相当)の加護を得るために、旅をするのであった。
 ……と、これだけ書くとわりと王道なストーリー展開。FF12にも設定がよく似ている。
 特徴的なのは、ほとんどの場面で固定された男四人旅であること。女性キャラはスポット参戦のみ。
 さらには自動車で旅をするというのも特徴的。ベタなファンタジー設定との組み合わせもあって、どことなくシュール。

 FF13と同じで、進行度によって物語の印象がガラリと変わる。
 前半は数人で帝国の基地に殴り込んだり、お使いイベントをこなしたり、十三の武器を探したりと、ゆるいノリで進んでいく。
 始めて行く場所などでは、仲間達が色々と掛け合いをしてくれる。他愛ない内容も多いけれど、それがいっそう冒険感を高めてくれる。
 どちらかと言えば、サブクエスト重視のゲーム。メインストーリーそっちのけで、旅をするのが面白い。

 そこまでのオープンワールド的な雰囲気はよくできていて、ここまでは神ゲーっぽく見えなくもない。かくいう僕も「これから壮大なストーリー展開が!」と思っていました。
 ……が、途中から一気に話が収束に向かっていく。ストーリーも急に一本道へ。

  • これからヒロインが大活躍かと思ったら、そんなことはなかった。
  • 帝国の幹部と熾烈な戦いを繰り広げるのかと思ったら、そんなことはなかった。
  • 一時加入したサブキャラが、後半にまた活躍したりはしなかった。
  • 十三の武器は別に集めなくてもよかった(サブイベントで回収可)。
    じゃあ、何のために最初集めさせたの?
  • そもそも、本筋に深く関わる人物が全体で十人もいないような……。

 というように、FF13を彷彿とさせるような尻すぼみ。
 しかも、後半はストーリー的にもゲーム的にもプレイヤーのメンタルにダメージを与える展開が続く。天下のFFでよくこんなのをやったなと、良くも悪くも感心してしまう。

システム/バランス



戦闘

 今作の特徴として、アクション型の戦闘が挙げられる。
 FF12のように見た目がアクションっぽいというだけではなく、れっきとしたアクション戦闘。
 ○ボタンを押しておけば自動的に近くの敵に攻撃してくれるので、そこは簡単。
 回避や防御もしっかりと効果がある。プレイスキルの差はそれなりに出るはず。

 特徴的なのは、主人公ノクティスの特殊能力シフトブレイク。武器を投げた場所へ瞬時に移動することができる。遠方の敵へと一気に攻撃をしかけられるのは、なかなか気持ちがいい。
 今回の魔法は個数消費となった代わりに、威力も強力となった。強力な魔法を手にして、サブクエストの強敵に挑む自由度もある。

 ただし、不満点もそれなりに。
 まず、アクション戦闘特有の『何をやってるのか分からない感』があること。
 数が多い雑魚戦や、動きの派手なボス戦では、何をやっているのかわけが分からなくなりやすい。普通に戦っていると、いつの間にか攻撃を喰らってしまう。
 加えて、仲間の操作はAI任せで指定できない。敵の大技を回避しようとせず、あっさり喰らってしまうのには弱った。
 結果、たどり着いたボス戦での戦法は、遠距離からチクチク攻撃。仲間がやられるのは諦めて、回復アイテム連打でゴリ押し。
 なんせこのゲーム、回復アイテムの使用制限はかなりゆるい。金で集めた回復アイテムで粘り、ゴリ押しすればなかなか全滅しない。もちろんテンポは悪く、アクション性は台無し。
 古臭いコマンドバトルのRPGにはありがちな調整だけど、何もそんなものまで持ち込まなくても……。と、結果的にコマンドバトルの悪いところと、アクションバトルの悪いところを合わせてしまったような印象を受けた。

 難易度はノーマルでも結構高いので注意。敵の一撃がかなり重いので、適当に突っ込むとすぐにHPがなくなる。
 アクションが苦手な人や、スムーズに進みたい人は、素直にイージーを選んだほうがいいかも。
 というか、敵が強くなるほど回復アイテム連打によって作業的になってしまう。これなら、別にイージーでもよかったかなと……。

冒険

 戦闘は置いておくとして、このゲームの魅力はと聞かれれば、オープンワールド的な自由度だろう。
 序盤から様々なサブクエストをこなしたり、メインストーリーには関係のないダンジョンがあったりと盛りだくさん。
 写真や釣りなどのおまけ要素も充実している。

 ただ上述した通り、後半は一本道になってしまう。
 ※一応、『神秘の力で過去に戻る』的なシステムで、オープンワールドのマップに戻ることは可能。
 そして、この一本道が何とも窮屈。
 特に問題となるのが十三章のダンジョン。『長い』『暗い』『不自由』の三重苦。
 細い道を長々と進ませるような作りで、ストーリー的にも陰鬱。道中では数時間に渡って主人公一人で突き進まねばならない。しかも、途中までは能力制限がかかり使用できないアクションがある。
 それまでのゲーム性を否定するような作りで、楽しいとは言えなかった。これ一つで自分の中での作品評価は一段階下がってしまった。

快適性


 まず気になるのはロード時間。
 ゲーム開始時、全滅ロード時、章が進行した時などに一分程度のロードを行う。
 その代わり、シームレスなので戦闘時のロードはない。町やダンジョンとフィールドもそのまま繋がっているため、入る時でもロードがないのはスムーズでありがたい。
 また、車での移動が多いゲームだけれど、その時間がけっこう長い。大した操作はできないので、基本的には放置。一分以上放置はザラ。一度行った場所はスキップ可能だが、これもそれなりにロード時間がかかる。
 サブクエストを行う場合、上記の理由から、ロードや車の運転時間が頻繁に入ってくる。操作できない時間がたくさんあるので、気が短い人には辛いかも。

 もう一つ気になったのは、文字が小さくて見にくいこと。
 とても目が疲れる。セリフについては、ボイスを聞けばだいたい分かるが、様々な表示が小さいので困る。背景が白いと溶け込むことも。
 例えば、敵のレベル表示が小さくて見極めづらい。Lv25かと思いきやLV35だったりで、戦ってよいかどうかの判断が難しい。
 1.5mもTV画面から離れれば、視力1.5でも不自由する。ワイヤレスコントローラーでの寝転がりプレイがやり辛かった。

 他に気になったことをまとめると……。

  • 地図も表示が小さくて見づらい。特に高低差があるマップだと、どこが移動できてどこができないのかが分からない。
  • 所々に見えない壁がある嫌らしいマップ。低いフェンスを飛び越えられず、回り道をさせられることも。
  • ○ボタンに操作を集約しすぎで、誤操作が頻発した。道具を拾う、武器を振る、ダッシュなど。
  • 町やダンジョンなど場所によっては移動速度が低下する。いちいち○ボタンでダッシュするのが面倒。

美術


 このシリーズらしくグラフィクは一級。
 マップの隅々から料理までが作り込まれたグラフィック。車での移動中に風景を眺めているだけでも、わりと退屈しない。
 正直、ここまで長い開発時間をかけて作り込む必要があったのか――というツッコミは置いておいて。

 欠点を言えば、戦闘が乱戦気味で見た目にも美しくないこと。
 ダンジョンでは暗い画面が多いこと。ホラーゲームのような暗いダンジョンがいくつもあって、特に十三章は演出がもろにホラー。正直、辛かった。

音楽


 FF10や13のように強烈な印象を残すことはないけれど、地味に良曲あり。
 メインテーマ的に使われているフィールド曲や、後半通常戦闘曲が特にお気に入り。
 もっとも、フィールドや戦闘の曲は何らかの基準でコロコロ変わる。後半は怖い戦闘曲が流れまくるのでちょっと嫌。

総評


 色々と不満はあっても、前半部は十分に良ゲーだった。オープンワールド好きなら何十時間と楽しめるはず。
 しかし、後半はその好印象を一転させてしまう急転振り。
 『本編なんておまけ、メインディッシュはサブクエスト』という考え方もあるけれど、おまけと見なすにも本編後半が重苦しすぎて……。

 単体のストーリーとしては、終盤の重苦しい展開も一つの味と見なすこともできる。説明不足とはいえ、個人的にはそこまで悪いシナリオだとも思わない。
 けれど、オープンワールドとしての楽しさを殺してしまっているのも事実。どうにもゲームデザインが一貫していない印象を受けてしまった。
posted by 砂川赳 at 10:59 | RPGレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする