【王道長編RPG】完璧主義はエターなる?@ プレイヤー編

2014年09月27日

 制作中の作品で収集要素を実装するにあたり、『取り逃し要素』に関連して、ふと思ったことをつらつらと書いてみます。なんと、今回は心理学に挑戦です。

 プレイヤーが取り逃しを嫌がる心理というのは、『完璧主義』という性格傾向で説明できるようです。どうやら、自分とズレの大きな人に共通するプレイスタイルを分析すると、この性格傾向が大きいのではないかと思い当たりました。というわけで、この完璧主義について色々と調べてみました。

※注:以下はかなり突っ込んだ内容となります。結果的に完璧主義傾向がある人に対して、辛辣な内容も書いています。気分を害されるかもしれないので、あらかじめご了承ください。ただし、完璧主義の弊害に悩む人(特に作品を完成させられないエターナラー)にとって自分が伝えられることも書いたつもりです。

完璧主義なプレイヤー


 完璧主義/完璧主義者というのは完璧であろうとする性質や人のことです。そのまんまですね。『時間を守る』『納期を守る』『仕事は細部まで入念に仕上げる』『テストでは満点を目指す』といったタイプのようです。
 努力家である反面、『細部にこだわって仕事が遅くなる』『与えられた枠組みにこだわるため柔軟性に欠ける』『完璧にできないことは投げ出す』というきらいがあるようです。
 0か100かの両極端な性格と言えるかもしれません。

 参考までに適当に見つけた性格診断の例です。
http://shining.main.jp/enia1.html
 プラス面とマイナス面の内容がどう見ても矛盾してますが、これが両極端ということかもしれません。

 100問チェックでの診断もありますので、お暇でなおかつ「あたしってば完璧主義かも……」って人はどうぞ。下のタイプ1が完全主義者に当たりますので、ここのポイントで度合いが分かるかと思います。
http://shining.main.jp/eniatest.html
 ちなみに、僕は1番目に研究者が9ポイント。2番目に完全主義者が6ポイントになりました。完璧主義傾向もなくはないですが、研究者のほうが遥かにしっくり来るので異論ありません。

 これがゲームのプレイスタイルにおいてはどうなるか。ググってみたら、出るわ出るわの完璧主義ゲーマーの実例。軽度な例から極端な例まで順番に挙げてみました。

  1. ダンジョンは隅々まで歩いて、宝箱を回収。
    行き止まりに当たるとむしろ安心する。
  2. 期間限定要素などの取り逃しを嫌がる。攻略サイト見ながらプレイは当たり前。
  3. クリア後の隠しボスもきっちり倒す。全イベントを見ようと努力。
  4. お金、MP、消耗品、時間などのリソース活用は苦手。
    いらないアイテムを売って、お金に替えるというやり繰りは苦手。
    エリクサーのような貴重品を使うなんてとんでもない。
    ブレスオブファイア5のようにリソース活用を強いられるシステムは発狂もの。
  5. 店売りの最強装備が全員分整うまで先に進まない。
    既にボスを余裕で倒せるレベルになっていてもとにかく整える。
    かかる時間も気にしない。
    戦闘に参加しないキャラまで整え出すとさらに高レベル。
  6. 図鑑やアイテムは何の報酬もなくともコンプリートする。
  7. 逃走回数や全滅回数のカウントがあると酷く気になる。
    何かメリットがあるわけでもないが0を維持しようとする。
  8. 確率1%以下のレアアイテムを手に入れるまで、リセットを繰り返す。
    レアであれば大した性能がなくとも関係なく取得対象。
    FFTの某攻略本は絶対に許さない。
  9. 一つでも些細な何かを取り逃すと最初からやり直す。または投げ出す。

 上のほうに関しては普通のプレイヤーでも「あるある」だと思います。仲間を取り逃したなんてのは、僕でもやり直したくなります。幻想水滸伝なんて、仲間を揃えないとベストエンドにいけませんし。
 完璧主義傾向というのは、どのプレイヤーも程度の差はあれど、持っているといえそうです。特にヘビーゲーマーで完璧主義傾向が全くないなんて人は極めて稀でしょう。

 さて、ここで問題が発生するのが下のほう。例えば、制作者が「必要な装備だけ買って先に進めば丁度よい」という調整をしていた場合、『5』のタイプのプレイヤーに対しては、その想定が崩れます。
 もっとも、プレイヤーが好きでやっている限りはそれほど大きな問題ではありません。想定したバランスでプレイしてもらえないのは残念、とはいえ「俺はガチガチに装備を整えて、無双するのが好きなんだ!」ってのも悪くない楽しみ方でしょう。

 それだけならよかったのですが、話はそこに留まりません。完璧主義者の中には好きでやっているのではなく、『やらねばならない』という意識に縛られ、自ら疲れを買っている人がいるみたいです。

 例えば、僕自身は実際に以下のような意見を受けたことがあります。

プレイヤー
「アイテムの値段が高い。全員分の装備を完璧に揃えるのが大変で疲れる」


「えっ!? 疲れるならなんで全部買うの!?
 敵の強さで判断すれば、そこまでしなくても進めると分かるはず」


プレイヤー
「戦歴に逃走回数が表示されるから、気になって逃走できない。
 逃げずにプレイするのが面倒だ」


「逃げてもペナルティはないんですけど……。ていうか逃げてください」


 「誰に強制されているわけでもないのに、やりたくないことをやる」という感覚が僕にはほとんど理解できませんでした。僕にしても宝箱やサブイベントの取り逃しぐらいは気にします。しかし、それも「アイテムが手に入る」「イベントが見れる」というご褒美あってのものです。
 上記のようにご褒美のないことまで、完璧にする狙いは何でしょうか? 上については「装備を整えて無双したい!」のかとも思いましたが、どうも違うように思います。そもそも、聞いてみると楽しいわけでもないようなので、ますます不可解です。
 正直にいうと今までは「色んな人もいるもんだ」と流していました。色んな意見があるのは当然ですが、さりとて合わせていたらキリがありませんので。
 ですが、完璧主義者に関する記事を読んで、ようやく腑に落ちました。無関係だと思っていた複数の不可解な意見が『完璧主義』という線で一本に繋がったのです。この辺、結構自分はドライなほうなので、感覚が合わないはずです。

 察するに、完璧主義といっても『好きでやっているタイプ』と『強迫性でやっているタイプ』の二通りがいるのではないかと推測します。調べてみたら後者らしき人が「最近、ゲームを楽しめなくなった」「疲れるから、RPGは尻込みする」というようなことを、書いている例をいくつか見つけました。思っていた以上に重大そうです。
 これ『心理学』や『ゲームデザイン』といった分野にとっては、論文一つ書いていいぐらいのテーマな気がします。

 ぶっちゃけ『強迫性』に陥っていて、楽しさよりもストレスが大きいという方は、無理に完璧を目指さないほうが、何かと幸せになれるのではないかと思ったり。少なくとも『本当に気に入った作品だけやり込む』『それ以外の作品は適当に』みたいな融通を利かせたほうがよいかと思います。色んなプレイスタイルがあってもよいとはいっても、楽しくないなら本末転倒です。
 あくまでプレイスタイルを決めるのは、当人の問題ではありますが、適度に自制し「ゲームを楽しめなくなった……」なんてことには、ならないで頂ければと切に願います。

 では制作者側に何ができるかというと、何よりも取り逃し要素を減らすことでしょう。これについては、大半のユーザが意見一致すると思います。もちろん、一周が短く、周回プレイが前提なら、取り逃しがあるくらいのほうがやりがいが出るというのは否定しません。
 その他については、もう作者のお好みでよいかなと思います。というのも、仮説が正しければ、上の2タイプは正反対の心理反応を取るはずです。

例:魔物図鑑を用意した場合

  • 『好きでやっているタイプ』→ よ〜しコンプするぞ!
  • 『強迫性タイプ』     → げっ、コンプしないと……。

 そんなわけで、両方を満足させるというのは相当難しいはずです。ぶっちゃけ僕もこれ以上はどうすりゃいいのかよく分かりません。今後の課題というところですね。
 ……うん。ロクな結論は出ませんでした。それでも意識だけしておけばその内、役に立つ時も来るかもしれません。

※長すぎたので分割しました。
後編はこちら
posted by 砂川赳 at 06:00 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする