名前の役割は第一に識別にある。よって、作品全体を通して覚えやすい名前を考えていきたい。命名に困ったという時もこれを見て参考にして頂ければ幸い。
ぶっちゃけ好みでいいっちゃいいんですけどね……。所詮はネーミングセンスの問題なので、だいぶ筆者の主観が入ってるような気もします。その辺は多めに見てくだされば。
似た様な名前を付けない
同一作品中で、似たような名前のキャラクターがいると、プレイヤーを混乱させやすい。中でも『ア行』『サ行』『ラ行』等は語感がよいので使われやすいが、同じ文字を多用し過ぎると、似たような名前が多くなってしまうので注意。
例えば、『アルス』と『アレク』は頭文字や文字数が同じなので区別しにくい。文字数が同じなのは仕方ないにしても、頭文字には気を付けたい。人間は名前を脳内で読み上げる場合、頭文字を最初に意識するもの。つまり『エリス』と『クリス』なら前の例よりも、まだ区別が容易となる。
頭文字や文字数が異なっていても、雰囲気の似た名前の人物が多く集まると混同しやすくなる。ありきたりな名前ばかりでもいけないし、風変わりな名前ばかりでも良くない。
ありきたりな名前が集まってしまった例
- ジョン、トム、ビリー、デビッド
- 山田、田中、佐藤、鈴木
変わった名前、長い名前が集まってしまった例
- ジェファーソン、エイブラハム、ラザフォード、ベンジャミン
- 五十嵐、九十九、我孫子、生田目
メリハリを意識しよう
そこで『平凡な名前』と『変な名前』等、雰囲気の異なる名前を適度に織り交ぜると、メリハリが付いて覚えやすくなる。山田と五十嵐のように雰囲気が異なる名前の人物を混同することは少ないはず。
『変な名前』と書いたけれど、創作の世界ではいわゆる『DQNネーム』『キラキラネーム』に該当する様な珍名も許容される。物語の登場人物は作者からすれば、子供の様な物であるが、現実の子供と違って名前でイジメられたりはしないからだ(※)。むしろ『識別』という目的には多少のキラキラも、メリハリが付いて有用と言える。
※作中でイジメられるかもしれないが、それはそれでキャラ作りとしてはおいしいので置いておく。
イメージに合った名前を付ける
主人公に『カッコいい名前』、ヒロインに『綺麗な名前』、悪役に『悪そうな名前』、子供に『可愛い名前』、色物キャラに『変な名前』、平凡キャラや脇役に『平凡な名前』。という様にキャラクターや地名のイメージにあった名前を付けよう。
ただし、どんな名前が『カッコいい』のかという、かなり個人の感性に依存するので、あまり詳しくは書けない。例えば、濁音が入ると『強そう』『悪そう』等とは、よく言われる。
とりあえず、ラストバイブル3のヒロインに『モチョワ』と付けるネーミングセンスはちょっとどうかと思った。でも、インパクト勝負と考えればアリなのか……?
文字数を意識してみる
3、4文字の名称は適度な長さで発音もしやすく無難だけれど、それだけにありふれた物になりやすい。そこで、2文字や5文字以上の名前をアクセント的に入れてみよう。2文字の名前は可愛らしい印象がするためか、子供や動物キャラに多い印象。5文字以上で濁音が多いと凄く悪者っぽい。『バルバトス』とか、名前だけでもう現行犯逮捕しても良いと思う。
言うまでもなく5文字、6文字みたいな長い名前を多用するのは覚えづらくなるので注意。あくまでもアクセントとして使おう。
末尾に注目してみる
他と雰囲気の違う人名にしたい、と思った場合は末尾の文字の母音に注目してみよう。実は多くの西洋風RPGでは、人名末尾に使われる母音の使用頻度に非常に大きなバラツキがある。
具体的には……
ア、ウ > イ、オ、ン > エ
という具合だ。正式に調査したわけではないが、これは単に現実の西洋人の名前が、そうなっているというだけの理由だと思われる。よって、DQでもFFでも、西洋風RPGなら大体同じ法則が成り立つ。特に母音が『アウ』の中でも『アナラスル』辺りが末尾に来る頻度は非常に高い。
というわけで、意識して『イオンエ』の母音で終わる名前を作れば、他と差別化できるはず。また『アウ』の母音でも『タダハバパヤワウツヅヌフブプムユ』辺りは頻度が下がるので、使ってみよう。
中でも末尾に『エ』の母音が来る頻度は意外なほど低い。例えば、DQやFFのメインキャラクターで該当の人物を思い浮かべても、ほとんど出てこないはず。これを読んでいる人の中で、創作をしているという方は是非、メインの登場人物に、末尾に『エ』の母音で終わる名前を付けてみよう。
もっとも、別に『アナラスル』初め『アウ』音が末尾に来ることを徹底的に避ける必要はない。これらは現実に発音しやすく、耳に馴染みやすいから、多用されていると考えられるからだ。そればっかりにならないように注意すれば十分だろう。
前後を飾ってみる
固有名詞の前後を特徴や敬称などで、飾ってみよう。固有名詞そのものの話ではないけれど、識別子としての役割を考えた場合に有効な手法となる。
- 国なら:○○○王国、○○○帝国、○○○共和国
- 町なら:貿易都市○○○、首都○○○、辺境の村○○○
- 人なら:○○○王、皇帝○○○、○○○陛下、○○○猊下、○○○将軍、○○○伯爵
この方法なら、固有名詞自体を覚えてもらえなくとも、一応の区別は付く。単に固有名詞を並べるよりは、世界観も深まるし、プレイヤーもイメージしやすいはず。
言うまでもなく、敬称や爵位、階級などを使用する場合は、ちゃんと意味を調べておこう。上下関係を間違えたりすると、恥をかくことになる。
参考までに実例
- 公爵>侯爵>伯爵>子爵>男爵
- 元帥>大将〜少将>大佐〜少佐>大尉〜少尉>曹長
ちなみに『猊下』とは法皇・教皇など、偉い聖職者のことを指す敬称らしい。ただし『げいか』と正しく読める人間がどの程度いるかは怪しいので、別の言葉を使ったほうが良いかも。例えば、XXXX教皇とそのまま役職名で呼ばせても良いし、『陛下』などを代わりに使っても良い。『猊下』と同様の意味で『聖下』『台下』等という言葉もあるそうな。
まとめ
名前は識別子であるゆえに、キャラクター間のバランスを考慮しながら、分かりやすさ・覚えやすさを重視した命名をしよう。創作人物の名前に限り、メリハリのために変な名前を付けることも時には有効だ。
でも、自分の子供には『DQNネーム』を付けないように気を付けよう。将来、名前が原因で子供がグレてしまったら目も当てられない。
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