【RPG制作講座】戦闘システムB リソースシステム

2013年02月02日

 リソース(資源)とはゲームをプレイする中で、獲得したり消費したりする要素である。
 お金やHP、MPが特に代表的。これらのやり繰りはRPGのゲーム性において中核を担う部分の1つである。

 HPやMPといったリソースは多くの場合、空気のようにごく当たり前に存在している。しかし、このリソースの在り方を工夫すれば、ゲームシステムにも個性を出すことができるので、一度焦点を当ててみたい。

目次


耐久/生存に関するリソース

HP

LP

満腹度

行動に要するリソース

消費型(MPなど)

蓄積型

クールタイム型

個数型

耐久度型

使用回数型

まとめ


耐久/生存に関するリソース


 キャラクターが死んだり、戦闘不能になったりしないためのリソース。
 HPを単独で用いるのが主流だが、それ以外の要素が存在する場合も。

HP

 大半のRPGにとっては最も重要なリソース。
 大抵の場合、敵の攻撃を受けると値が減って、0になるとキャラクターは戦闘不能となる。

 どのRPGもほぼ同じルールだが、ここに独自性を打ち出す方法もある。
 例えば……

ファイアーエムブレムシリーズ

 HPが0になると、キャラが消滅するという強烈なペナルティがある。
 緊張感が増す反面、気軽には遊び辛くなる諸刃の剣。素人にはお勧めできない。そのせいか、近年のシリーズ作品では消滅しない設定ができるようになっている。

 キャラの生存状況で会話パターンが変わったりするので制作者としては大変かも。
 SRPGには同様のシステムを持っている作品も多い。

スターオーシャン3

 MPもHPと同じ役割を持つ。
 HP、MPの片方が0になると戦闘不能になってしまう。

ブレスオブファイア4

 HPが0になった場合、蘇生しても最大HPが減少する。
 宿に泊まると回復する仕様。

マザー2〜3

 ダメージを受けても、HPは即座に減らない。
 ドラムロール式カウンタによって、徐々に減っていくのが特徴。
 致命傷となる攻撃を喰らっても、HPが0になるまでに回復を行えば戦闘不能とならない。


 他にも「大ダメージを受けるとHPがマイナスになって、それを回復するまで戦闘不能から復帰できない」なんてシステムを筆者は思いついた。思いついただけで実装はしなかったが……。

LP

 サガシリーズに登場。
 HPが0になると、LPが減少する。LPが0になると宿屋に泊まるまで蘇生ができなくなったり、キャラ消滅したりする。
 ちなみに初代GBサガの時代から同様の要素(ハート)が存在している。
 アクションやシューティングにおける残機のようなものと考えることもできる。

 ロマサガ2以降のサガシリーズでは、敵の攻撃が非常に激しく簡単にHPが0になる。
 代わりに、HPが0になっても、回復術によって簡単に蘇生できる。
 このままだと戦闘不能→蘇生のイタチごっこになってしまうので、歯止めにLPを導入していると考えられる。これらの構造によって、他のRPGよりも高い緊張感を演出していると推察できる。

ロマンシングサガ2

 LPが0になるとキャラクターは消滅する。
 LPは宿屋でも回復せず、回復手段は一部のアイテムなどに限定される。

サガフロンティア1

 宿屋に泊まることによって、LPは全回復するので制約はゆるい。
 LPを消費する事で貴重な全体回復技を使用できるキャラクターも存在する。

サガフロンティア2

 戦闘中にLPを1消耗する事で、HPを全快できる。ターン経過しないので強力だが、戦闘は長引く傾向あり。
 また、術や技に使用するJP、WPを切らしていた場合、LPを消費する事で代わりとするなんて要素も存在する。

アンリミテッドサガ

 HPが0になっても戦闘不能にならないが、HPが減っているとLPが減りやすくなる。
 LPが0になるとようやく戦闘不能に。
 全員のLPが0になるまで全滅しないため、強敵相手の戦闘は非常に長引く。

満腹度

 風来のシレンなど、ローグ系ゲームなどで扱われる。
 人が生きるために当然の要素をシステムとして表現したもの。似たようなものに疲労度などがある。

 大半の場合は、移動や戦闘などの行動によって消耗していく。これが0になると、HPが減少し始めたり、能力が下がるといったペナルティが課せられることが多い。
 回復は食料によって行うのが基本。

 プレイヤーにとっては面倒なだけのことも多いので、大半のゲームでは省略される。
 一般RPGで採用する場合は、ダンジョンの探索量を制限する目的などに利用できるかも。

行動に要するリソース


 MPを初めとした魔法や特技を使用するためのリソース。

消費型(MPなど)

 技を使用すると設定された値(例:消費MP)だけキャラクターの保持ポイントが減少するというのが定番。
 減ったポイントは宿屋などで回復できる。

 ただし、「キャラクターがMPを保有する」という一般的な型にこだわる必要はない。

ロマンシングサガ1

 術属性毎に法力(MPに該当)を保有している。例えば、火の術法を使用しても、風の術法の法力は減少しない。下の回数制もそうだが、調整次第では色々な種類の技をプレイヤーに使用させる事ができる。

ロマンシングサガ2

 術(JP)と技(WP)で別々に消費ポイントが設定されている。
 このようにすると、武器技と魔法を明確に差別化できるのが利点。

 例えば、6以降のDQは呪文と特技の区別が曖昧なので、こういうのを導入してはどうかと個人的には思っていたりする。

グランディアX

 魔法の使用にはマナエッグと呼ばれる物を装備する。
 MPは装備したマナエッグ毎に保有するので、キャラクターには依存しない。

蓄積型

 MPにおける宿屋のような手軽な全快手段はないが、代わりに戦いの中でポイントを蓄積することで技を使用できるようになる。
 蓄積するための条件は時間の経過やダメージを受けることなど。

 結局、技を使用するためにポイントを消費するという点では、上の消費型と明確な境界はない。実際、MPが時間経過で徐々に回復していくRPGも存在する。あくまで、数が多いので便宜的に分けただけである。

ファイナルファンタジー7:リミット技

 ダメージによってポイント(リミットゲージ)を蓄積し、ゲージを満タンにすることで発動できる。
 いかにも必殺技といった印象が強く、派手さ優先に思えるシステムなのだが、長所も中々多くて侮れない。

 MP消費魔法のように連発はできないのだが、それだけに普通ならゲームバランスを崩しかねない強力な技も設定可能だ。
 例えば「時間を停止して一方的に攻撃する」というような、味方側が自由に使えたらバランス崩壊必至な大技も現実的に組み込める。

 また、連発できないだけに長いアニメーションでもある程度我慢できるというのも大きな利点。ワンパターンに陥りがちな戦闘を崩す意味でも、アクセントとしての意義は大きい。
 戦闘前に全員のゲージを溜めて、ボス戦で一気に発動することも可能。ただしこれは、強力過ぎてバランス崩壊の恐れも。

ファイナルファンタジー13:TP

 MPの概念が存在せず、代わりにパーティ全体で共有するTPが存在する。これを消費することで召喚などのTPアビリティを使用できる。
 ポイントを回復する条件は戦闘で高いランクを出すことなど。

 このようにパーティ全体で1つのポイントを共有するという方法もある。
 使用できる機会が少なすぎて正直微妙だったけど……。

ロマンシングサガ ミンストレルソング:BP

 時間(ターン)が経過する毎に技を使用するためのポイントが増加する。
 次の戦闘に値を持ち越すことはできない。

 この種のシステムは、最初の数ターンで強力な技を使用し辛いため、雑魚戦が地味になる可能性も。
 当作品では初期値を設定したり、武器に消費型の耐久度を設定することで欠点を緩和している。

クールタイム型

 技を使用すると、再使用までに一定の時間を空ける必要がある。ターン制ではターン数、リアルタイム制では秒数が制限の条件になる。
 戦闘開始時に技のクールタイムが必要かは作品によって個性が出る。
 蓄積型にも似ているが、管理が技毎という点で異なっている。

 様々な技を使わせたい場合に有効となる。連発されるとゲームバランスを崩しかねない強力な技も、採用しやすいため多彩な戦闘を演出しやすい。
 ネトゲやソシャゲでも流行の型。オフラインRPGではゼノブレイドなどが有名だろうか。

 欠点としては、把握の難しさが挙げられる。技毎にクールタイムを保有する仕様上、技の多い作品では管理が複雑になる。
 技を再使用できるかどうかをプレイヤーが把握する負担がある。いちいち技一覧を開いて確認するか、記憶しておく必要があるのだが、これはMP制などよりも煩雑な作業となりやすい。
 コマンド入力時に全スキルのクールタイムを表示する方法もあるが、情報量も多くなるためUIが課題となる。やはり、技の多い作品ほど大変になるだろう。

 また、それなりに工夫しないと、再使用が可能になった技を順番に使用していくだけの作業になる。この型は技を早く発動したほうが、再使用も早まるため温存する意味が薄いためだ。
 そうならないためには、技を使用するタイミングを見計らうような戦術性が欲しいところ。

 そして、雑魚戦のような短期決戦での扱いも難しい。
 開幕から大技を連発できる仕様の場合、戦闘がかえって単調化する可能性がある。
 開幕時にクールタイムを設定する場合は、逆に地味な戦いを強いられる可能性がある。

 ……というようになかなか課題が多い。
 とはいえ、個人的にも注目の型なので上手な運用を考えてみたいところである。
 例えば、MP型などを組み合わせることで、上述の欠点を補う方法もある。もっとも、複雑化も避けられないけれど……。

個数型

 要するにアイテム。所持しているアイテムの個数を減らして使用する。
 もちろんこれもリソースである。
 一般的にはお金を消費して、アイテムを購入することが多い。
 パーティ全体で共有する場合と、キャラクターが個別に所有する場合の2通り。

 基本的には攻撃よりも、回復のために使用することが多いが、何らかの制約を課さないと戦闘が長引く原因となる。
 とりあえず、僕としては99個まで所有できるアイテムで延々と回復しながら戦うようなバランスはご遠慮願いたい。

 アイテムは誰でも使える場合が多いが、これが便利過ぎるとキャラクターの個性は薄れやすい。
 FFシリーズの『投げる』など、特定のキャラクターしか使用できない設定にすれば多少の個性化も可能となる。あるいは特定のキャラクターのみ威力アップといった方法もある。

耐久度型

 攻撃を行う度に使用した武器の耐久度が減少する。
 何かとお金がかかるシステムで、ややヘビーユーザ向けだが、逆にお金や武器の有り難みが増すという利点も。
 耐久度の回復手段をどうするかも重要。もちろん、防具や他の物に耐久度があっても良い。

魔界塔士Sa・Ga

 攻撃する度に使用した武器の耐久度が1ずつ減少する。
 減った耐久度の回復手段はなく、武器は使い捨てである。
 ただし、エスパーやモンスターの特殊能力は宿屋に泊まることで全快する。

ロマンシングサガ ミンストレルソング

 強力な技ほど多く耐久度が減少する。
 武器の丈夫さやキャラクターのスキルによって、減少値を抑えたり、0にすることも可能となっている。
 耐久度の回復は鍛冶屋で素材を用いて行う。

使用回数型

 MPのような共有の消費ポイントは存在せず、各技あるいはレベル毎に使用できる回数が設定されている。
 色んな技を使わせたい場合は特に有効だ。

ファイナルファンタジー1、3

 魔法が複数のレベルに分かれており、レベル毎に使用できる回数が異なる。
 例えば、レベル1の魔法を使いきっても、レベル2の魔法は使用することができる。

 ちなみにウィザードリィの時代から同様の仕様なので、MP型よりも歴史は古いと思われる。プログラム的には管理が大変そうなのに不思議。

ポケットモンスターシリーズ

 各技毎に使用回数を保持している。
 技は一体当たり4つまで保有できないので、回数の少ない技ばかりだとすぐに燃料切れになる。

まとめ


 「HPが0になると戦闘不能になる」「MPを消費して魔法を使う」といった当たり前のシステムにも、様々な工夫ができることが分かったかと思う。
 もちろん、消費型とクールタイム型のように複数の型を組み合わせることも可能だ。複雑になるかもしれないが、工夫の余地は大きいだろう。

 また、戦闘に勝つことによって、プレイヤーは経験値やお金、アイテムといった新たなリソースを手に入れることができる。それらを活用してどうパーティを強化するかというのもRPGの大きな楽しみだ。
 なお、そちらについては『強化システム(成長システム)』で既に記述している。

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posted by 砂川赳 at 06:00 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする