古くはドラクエシリーズを中心にランダムエンカウントが主流だったが、時代の変化と共に、この部分にも様々な工夫が加えられるようになった。
そこで既存のRPGが、どの様な工夫を凝らしているのかをまとめてみた。
以下に、大雑把な分類を行うが、その分類の中であっても、作品によって様々な特徴付けがなされている。
具体的には『戦闘を回避する手段』や『戦闘前の駆け引き』といった要素で差別化するパターンが多いようだ。
そのため、作品の例を挙げながら解説をしていきたい。
ランダムエンカウント(歩行エンカウント)
歩行時に確率等によって、戦闘に突入する古典的なエンカウントシステム。FC〜PS時代の大半のRPGはこれを採用している。固定された歩数で戦闘になる作品にまで、ランダムという呼称を使うのはおかしいのだが、同じ種類のものとして分類する。
地形によって戦闘に突入する確率を変更したり、敵の種類を変えたりといったような工夫がされることが多い。
【利点】
- 手間がかからない。
- シンプルで分かりやすい。
【欠点】
- 戦闘前の駆け引きがないので単調。
- 視覚的に地味。(ただし、落ち着いているともいえる)
【作品例】
ドラゴンクエスト1〜8
ランダムエンカウントといえば、かつてのドラクエシリーズ。
地形によってエンカウント率が変化したり、聖水によって弱い敵との戦闘を回避できる。
ワイルドアームズシリーズ
『エンカウントキャンセル』というシステムが特徴。
戦闘前にキャラクターの頭上に『!』のアイコンが表示されるので、そのタイミングでキャンセルボタンを押すと、戦闘を回避できるというもの。回避できるかどうかの条件は作品によってまちまち。
シンボルエンカウント
マップ上を動きまわる敵シンボルと接触することで、戦闘画面に切り替わる。
FC〜PS時代は少数派だったが、PS2以降の作品では採用例も多くなっている。
【利点】
- 敵に『当たるか』『避けるか』というように、プレイヤーが必要に応じて戦闘を行う事ができる。ランダムエンカウントでは、課題となる部分をある程度プレイヤー側で吸収してくれるので、ある意味では難易度調整がしやすいかも。
- 「好みの敵種族を狙い撃ちする」「手強い敵を避ける」というように、プレイヤーが戦略を立てることも可能となる。
- 敵シンボルによって、視覚的にマップを彩る効果がある。
- その時点では倒せない巨大モンスターが歩いているといった設定も可能。
【欠点】
- シンボルのグラフィックを用意したり、配置したり、行動パターンをプログラムしたりと手間がかかる。
- プレイヤーがシンボルを回避できるよう、マップにある程度の幅が必要となる。
- プレイスタイルの幅が広いため、制作者が予期しないことをするプレイヤーが出現しやすい。
- 避けやすいシンボルや、倒しても旨みのないシンボル等、全くプレイヤーに相手にされない敵が出てしまう場合も。等々……ランダムエンカウントとは別視点でのバランス調整術が要求される。
筆者自身、シンボルエンカウントで長編を作成したけれど、特にマップの幅の問題は非常に大きい。
細い道を軽々しく作れないため、マップ全体を大きめに作る必要がある。
システム面の実装と合わせて、ゲーム全体の工数が馬鹿にならない規模でふくらむ可能性がある。
【作品例】
リンクの冒険(ディスクシステム)
ゼルダの伝説シリーズの第2作で、横スクロールアクション型の戦闘が特徴。名作だがわりと存在を忘れられがちなゲーム。
- 道の上は安全だが、道を外れると敵シンボルが出現し、近寄ってくる。
- 敵に触れた際の地形によって、戦闘内容が大きく変化する。
- 敵シンボルの色によって、敵の構成が変化する。
- ダンジョン内部に付いては、普通の横スクロール型アクションとなる。
というように、1987年発売の作品ながら凝った構成。僕の知る限りでは、シンボルエンカウントの作品としては最も古い。
サガシリーズ(ロマンシングサガ以降)
シンボルエンカウントといえばこのシリーズ。
「敵の背後を取ると先制できる」
「ダッシュ中、敵に触れると陣形が崩れる」
というように戦闘開始時の状況によって、有利不利が変化する。
初代ロマンシングサガにおいて、草原を動きまわる恐竜(序盤に戦うと瞬殺)の姿が印象深い。
マザー2
接触時、近くにいるシンボルも巻き込んで戦闘になる。それにより一度に戦う敵の数が決まる。弱い敵は戦闘画面に切り替わるまでもなく瞬殺できる便利な仕様もある。
エストポリス伝記2
不思議のダンジョンシリーズのように、こちらが一歩動く度に敵シンボルも動く。弓矢で敵を射って動きを止めるといった駆け引きも可能。
他作品のいいとこ取りと言われる作品だが、何気にRPGでこれを採用している作品は希少。
ちなみに、フィールド上のみランダムエンカウントだったりする。
固定エンカウント
特定の地点に必ず敵が存在する。シンボルエンカウントとは異なり避けられない相手も多い。正直、手間がかかる割にゲーム的な旨みは薄い気がするので、これを基本とするのは余りお勧めし辛い。
【利点】
- プレイヤーの戦闘回数や得られる経験値を予想しやすい。
【欠点】
- シンボルエンカウント同様に手間が掛かる。
- 特定の場所で必ず戦闘になるという仕組みはプレイヤーに取って面倒かも。
【作品例】
クロノトリガー
シンボルエンカウントとの複合型だが、進行上の強制戦闘も多い。戦闘突入前の敵のアクションがいちいち凝っている。見かけ上はシームレスに戦闘に切り替わるが、移動時と戦闘時は明確に分かれている。
ミスティッククエスト(FFUSA)
敵シンボルの場所が完全に固定されており、先に進むためには必ず敵と戦わなければならない。
何というか分かりやすいゲームシステムではあるが、プレイの幅は狭い。
任意エンカウント
戦闘を行うかどうかを任意に決めることができる。ライブアライブの幕末編のように、仕掛けが豊富な作品に組み込むのもよいかも。
なお、シンボルエンカウントについて回避を容易にした場合、実質的に任意エンカウントに近いものになる。
【利点・欠点】
基本的にはシンボルエンカウントと同じだが、利点も欠点も更に極端になる。バランス調整をやりやすくするために強制エンカウントを挟む方法もあるが、持ち味も削れるので調整が難しい。
【作品例】
すばらしきこのせかい
敵を『スキャン』することで、戦闘する敵を選ぶ方式。基本的には自分から仕掛けなければ敵は襲ってこない。
ただし、このゲームの場合、シナリオ進行上で倒さなければならない敵もそれなりに存在する。また、後半はマップ切替時に強制戦闘が入っていたりしてちょっと面倒だったりする。
ライブアライブ・幕末編
主人公は忍者で『隠れ蓑』によって、姿を消す能力を持つ。というように、戦闘を避けることがゲームシステムとして組み込まれている。ボスを除いて、倒す必要がある敵は存在しないし、固定された場所にいる敵もギミックを駆使したり、別の道を通ることで無視できる。
ドラゴンクエストシリーズの銀の竪琴や&口笛
魔物を呼び出す効果を持つ。
自由に戦闘を行えるので、任意エンカウントの一種と考えることができる。
シームレス
画面の切り替わりなしで、その場でリアルタイム型の戦闘を行う。移動時と戦闘時の境界が薄い。
【利点】
- 画面切り替えがないのでスムーズ。
- 戦闘前の駆け引き要素を入れやすい。
【欠点】
- やはり手間が掛かる。特にプログラム的な難易度が高い。
- 移動に操作を取られるため、複数キャラクターに命令できるようなシステムとの共存は難しい。返って戦闘が単調になることも。
【作品例】
ファイナルファンタジー12
マップ上を動きまわる敵に対して、攻撃を仕掛けたり仕掛けられたりする事で、戦闘になる。「一度に多くの敵を相手にしない」「強い敵に喧嘩を売らない」といった戦闘前の駆け引きがある。ゼノブレイドなども同様。
キングダムハーツシリーズ
自由自在にマップを動きまわり敵と戦う。ここまで来ると限りなくアクション戦闘に近い。聖剣伝説シリーズ等も同様。
複合型
複数のエンカウント方式を同時に採用する作品もある。可能ならば、いいとこ取りを狙ってみても良いだろう。
【作品例】
ポケモンシリーズ
フィールド上では、草むら等の特定の地形でのみポケモンが出現するランダムエンカウント。(ダンジョン内ではどこでもランダムエンカウント)。敵トレーナーに付いては、正面を通りかかると戦闘になる固定エンカウントになっている。
ドラゴンクエスト8
普段はランダムエンカウントだが、スカウトモンスター(ミニゲーム等で使用する)のみシンボルエンカウントとして登場する。
ライブアライブ
順序自由の章形式という体裁を取っているが、章によってエンカウント方式が異なる。『原始編』『幕末編』など、世界設定に合わせたエンカウント方式を採用している事も特徴。
- 原始編:透明なシンボルエンカウント。臭いによって、大まかな場所を知ることができる。
- 幕末編:上述した通りの任意エンカウント。
- 現代編:ボス戦のみ。順序自由の固定エンカウント。
- 近未来編:シンボルエンカウント。
- 功夫編、西部編、SF編:主にイベント戦闘のみ。
- 中世編、最終編:ランダムエンカウント。
まとめ
最初に書いた通り、古くはランダムエンカウントが主流だったが、時代の流れと共に、シンボルエンカウントやシームレスの作品が非常に多くなっている。
あのDQですら9作目(正確にはモンスターズジョーカーから)に至ってシンボルエンカウントへと転換した程だ。
個人的にも、ランダムエンカウントよりも、シンボルエンカウント等を採用したほうが、プレイヤーが試行錯誤する余地が生まれるように思う。
ただし、上述した通り、シンボルエンカウントの実装にかかる工数は馬鹿にならない。技術や手間の都合もあるので、他の要素との兼ね合いも含めて検討しよう。
また、ランダムエンカウントであっても、工夫次第で化ける可能性もある……かも。
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