【RPG制作講座】面白いイベントを作るには?

2012年07月21日

 RPGを構成する『イベント』について考察したい。

 ここでいうイベントとは、全体のストーリーの中で一部分(小規模な目的の達成)を抽出した物を指す。そのイベントを研究し、どうすれば面白くできるのかを中心に考えてみた。

目次


お使いイベントとは?

つまらないイベントとは?

面白いイベントとは?

まとめ


お使いイベントとは?


 つまらないイベントを評する上で、よく使われる『お使いイベント』という言葉。まずは、これについて考えてみたい。

 お使いイベントとは、一般的に「誰かから依頼を受ける→達成する」という形式のイベントを指す蔑称として、使われることが多い。もっとも、誰かに定められた用語というわけではないので、明確な定義は存在しない。

 だがしかし、依頼形式のイベントをお使いと称するならば、RPGのイベントは大半がお使いになってしまう。
 そもそもRPGのストーリーとは、そういったイベントの積み重ねであって、それなしでは物語を繋ぐことも難しい。究極的にはRPGのストーリーにおいて、最も大きな目的である「ラスボスを倒して世界を救う」ですら、お使いイベントとみなせてしまう。

 けれど実際には、そういった依頼形式のイベントであっても、何もかもがお使いイベントと呼ばれているわけではない。これは『依頼形式のイベントの中でもつまらない物』が、一般的に『お使いイベント』と言われているのだ――と考えられる。

 要するに、問題は『お使い』にあるのではない。『つまらない』ことが問題なのだ。結局は『お使い』かどうかよりも『つまらない』か『面白い』かを考えた方が、より建設的だと言える。

つまらないイベントとは?


 では『つまらないイベント』とは何かを考察していきたい。
 以下の様な要素を多く満たすとプレイヤーは不満を感じやすい。

大元の目的から離れて、盥回しされる

 例えば、主人公の目的が「北の町に行ってある人物と出会うこと」だとする。
 それに対して……

  1. 北の町に行くには、洞窟を通らなければならない。
  2. 洞窟の入口は塞がれており、爆弾が必要である。
  3. 爆弾は東の塔にある。

 というように当初の目的から、かけ離れたことを延々とやらされるというパターン。まさにお使いイベントの典型。ストーリーが中々進まないので、テンポが悪く感じられる。また、旅の目的が何であったのか、不明瞭になりやすいのも問題だ。

 例えば、ブレスオブファイア2では序盤『濡れ衣を着せられた仲間を助ける』という目的のために、6ダンジョン程度(全シナリオの1/3程度)を経なければならない。
 もっとも、ブレスオブファイア2は色々と面白くするための工夫もされているけれど。

目的の軽さに対して難易度が高い。面倒・長い

 例えば、魔王や敵幹部の城など、ストーリー上で重要なダンジョンやボス戦が難しかったり、時間がかかったりするのなら、まだ納得がいく。
 しかし、ストーリー上で重要でも何でもないダンジョンが難しかったり、ボスが強かったり、時間がかかったりすると、プレイヤーのストレスになりやすい。

 例えば、DQ6のホルス王子のイベント。
 王子に洗礼の儀式を受けさせるため、護衛を引き受けるのだが、3体もいるボスが強い上に、戦闘後に一々、ホルス王子が逃げ出す。その度に探さないとならないので、プレイヤーをイラつかせてくれる。

 FF12では物語中盤「帝国に行こう!」というだけの展開に、10時間以上(5ダンジョン&フィールド)を消費する。ひたすら通過するだけのマップが続くわけだが、道中めぼしいイベントがないので、とても退屈してしまった。

ありきたり

 例えば、以下のような展開をどこかで見たことがないだろうか?

  1. お金や大事な物が盗まれる。
  2. 盗んだ犯人を追いかける。
  3. 盗んだ犯人を捕まえるが、犯人にも事情があると判明する。
    母が病気で……等。
  4. その事情を解決するために、協力してあげる。

 筆者はこの流れを異なる作品で立て続けに見て、うんざりした経験があったりする。
 ちなみに『鬼神降臨伝ONI』『幻想水滸伝2』『シャドウハーツ』で見ました。RPGに限らず、探せばもっとありそう。

 このように、どこかで見たような展開を見ると「またかよ」と言いたくもなる。
 特に上記のようにある程度、複雑な展開がカブっていると強く感じる。「誰かが病気→薬を探す」のように、ありきたりでも単純な展開なら、そこまで強く感じないような気がする。
 (筆者の主観が入っているかも……)

 とはいえ、たくさんイベントを考える必要がある長編RPGにおいて、ありきたりな展開を排除することは極めて困難。ありきたりなのは仕方ないので、少しでも自分なりの味を出していきたい。

似たりよったり

 『ありきたり』とはまた別に、1作品中で同じようなイベントが多い状態を指す。やはり「またかよ」となってしまう。例えば「誰かが敵にさらわれる→助けに行く」というような展開は便利なのだが、それだけに多用し過ぎないように注意。

 あえてそれを逆手に取って、意外な展開にする方法もある。
 例えば「誰かが敵にさらわれる→助けに行く→さらわれた当人が敵をやっつけていた」とか。

スケールが小さい(2024/06/12)

 例えば「買い物をしてきてくれ」「薬草を取ってきてくれ」「ペットを探してくれ」「山賊を退治してくれ」といったようなスケールの小さいイベントはRPGではありがちなものだ。

 もちろん、多少はあってもよいし、序盤はこういった小さなイベントから話を広げていくのも一般的だろう。
 当初は山賊にも苦戦していた主人公が、やがては巨悪を倒すまでに成長する――という流れは王道と言ってもよい。

 しかしながら、いつまで経ってもこういったイベントが続くようでは困りものだ。プレイヤーも退屈してしまうだろう。
 あるいは、中盤で魔王軍の大幹部を倒した主人公が、その後のイベントでショボいお使いを何度もさせられてしまうようでは落差でガックリしてしまう。

 物語が進行するに従い、イベントは徐々にスケールの大きなものになるよう意識すればよいだろう。
 具体的には「敵の大幹部との戦い」「ライバルとの死闘」「伝説的な魔物との戦い」「神や精霊のような人知を超えた存在との戦い」「重要な伏線の回収」「未踏の地の探検」「伝説の宝の捜索」などなど……。
 もちろん、ダンジョンも物語の進行に応じたふさわしいものにしたい。

面白いイベントとは?


 『つまらないイベント』の条件を挙げてみたが、これを是正しただけでは、まだ面白いとは言えない。イベントを面白くするために必要な技法を考えてみる。

褒美で釣る

 これはゲームとしては基本中の基本。やはりイベントを達成したならば、ご褒美が欲しいところ。
 褒美としては、以下のものが挙げられる。

  • 新しい仲間。
  • 職業など、システムの追加・開放。
  • 移動範囲が広がる。あるいは楽になる乗物・道具・技能。
  • 強力な道具・技能。

 以上のような、ご褒美を適度に織り交ぜることで、プレイヤーのモチベーションを維持していきたい。
 ゲーム序盤を新しい仲間の加入イベントで引っ張るのは、多くのRPGで定番。
 ゲーム中盤は船などの乗物で、行き先が広がると嬉しい。
 FF5で新しいジョブ(職業)が手に入った時は、どんな性能なのかでワクワクしたことだと思う。

 とはいえ、仲間や乗物、職業などをいくつも作るのは難しいし、後半に配置されても活躍の場が短くて悲しい。『強力な道具・技能』を安易に配置すると、ゲームバランスを壊してしまう。ゲーム全体を通して、上手な配分が要求される。

魅力的なキャラクター

 褒美としての『新しい仲間』については前述したが、ストーリーとしても魅力的な仲間の存在は欠かせない。
 既に仲間になった後も、そのキャラクターにスポットを当てるイベントを積極的に作りたい。

 もちろん、サブキャラクターも忘れてはならない。
 しかしながら、1イベント限りのサブキャラはプレイヤーの印象に残りにくいので工夫が必要だ。出会ってすぐ別れるだけの相手は、プレイヤーにとってしょせんは他人である。

 そこで、サブキャラを複数のイベントにまたいで登場させてみよう。
 定番の手法としては、仲間キャラクターの家族などの関係性を設定することである。これならば、自然と登場回数を増やしやすい。
 なによりも、このような関係性があれば、プレイヤーだってサブキャラを他人とは思いづらくなる。なんせ『赤の他人の家族』よりは『仲間の家族』に感情移入してしまうのが人情なのだ。

世界観を深める

 例えば、ダンジョンを作るにしても、世界観を深めるようなものを作れれば効果的だ。
 代表的な物としては『遺跡』が挙げられる。遺跡の探索によって世界に隠された謎が明らかになる――なんていうのは恒例だろう。
 世界や国に歴史を設定することで、厚みのある物語を目指そう。

物語的に強い動機を作る

 例えば、「誰かが病気→薬を探す」のようなありがちな展開で説明してみよう。
 病気の『誰か』が『初対面の村人(おっさん)』ならば、プレイヤーのモチベーションには成り得ない。赤の他人が困っていても、強い動機にならないのがやはり人情である。
 しかし『誰か』が『主人公の妹(超可愛い)』ならばどうだろう。「何としても助けねば!」とプレイヤーもなるに違いない。

 また、宿敵との対決など、シナリオ上の要所となるイベントは自然とプレイヤーにとっても強い動機となりうる。物語の途中にもいくつか挟めればベストだ。

複数の手順・結果を用意する

 イベントの達成に複数の手順があり、それによって結果が変化すれば面白い。ただし、手順や結果が複数あるということは、それだけイベントの作成に時間が掛かるということでもある。

 代表例は何と言ってもロマサガ1。『アイスソード』のイベントがとても有名。
 強力な武器を入手するために、特定の人物を『仲間に誘う』か『殺してでも うばいとる』の2つの選択が存在する。
 もちろん『仲間に誘う』の方が穏便に済むのだが、この選択肢はある条件を満たさないと出現しないため、殺した方が手っ取り早かったりする。
 また、殺した場合の結果として、とあるダンジョン(冥府)へ行く条件を満たすことになる。

自由な順序

 複数のイベントを用意し、その実行順序に自由を持たせることで、プレイヤーに試行錯誤する楽しさを提供する。
 「四天王を倒せ」とか「6つのオーブを集めろ」といった定番の展開がこれ。

 船を手に入れる前後など、移動範囲が大きく広がるタイミングに合わせて、イベントを用意するとよい。
 ただし「西の森に材料1」「東の山に材料2」という程度の小規模かつ単純な物では、まず面白くならない。ある程度のイベント数は欲しいところ。
 その上で、各イベントに褒美を用意することで、どこから手を付ければ良いか悩ませる。それこそ、作者ですら進行順序に悩むぐらい複雑な構成にしてみても面白い。

 この手法は活用の幅が広いが、ゲームバランスの調整は難しい。
 まだまだ書くことはある気がするので、その内に専用記事を作るかもしれない。

まとめ


 これら以外にも、イベントを面白くするための技法は色々とある。
 特に今回の記事では、ストーリー制作についての具体的な方法はほとんど記述していない。しかし、何よりもストーリーとして面白いイベントを作ることが大事なのは言うまでもない。

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posted by 砂川赳 at 08:00 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする