【RPG制作講座】快適性に関わる意外な落とし穴

2012年07月14日

 制作者が良かれと思い導入した仕様がプレイヤーにとっても、最善で快適とは限らない。むしろ、面倒だったり不快だったりすることもあり得る。
 ここでは、制作者が陥りやすい意外な落とし穴について、例を挙げていきたい。

目次


盗む

限定的なレベルアップボーナス

快適性や育成面を向上させる装備・スキル

ダッシュ機能

速過ぎる移動速度

セーブ+確率要素によるリセットプレイ

まとめ


盗む


 戦闘において、敵からアイテムを盗むことができるというシステム。
 プレイヤーからすれば、アイテムが手に入って嬉しいという反面、面倒な部分もある。特にボス敵からレアアイテムを盗めるような設定をしている場合は要注意。

 代表的な例はやはり、主人公からして盗賊のFF9だろう。
 ボス戦で敵から強力なアイテムを盗むことができるのだが、成功確率が低くて時間がかかる。よって、プレイヤーはボスの攻撃を耐え忍びながら、延々『盗む』を繰り返すハメになる。ボス戦という山場において、プレイヤーが興冷めしてしまう可能性がある。
 FF9のボス戦に限らず、敵を倒す前にアイテムを盗むというプレイ自体、あまりテンポが良いものではない。特に戦闘重視のゲームとは相性が悪い。

 また、特定のキャラクターしか『盗む』を使えない設定だった場合、アイテム収集重視のプレイヤーは事実上、そのキャラクターの使用を強制されるという問題もある。

 アイテムの入手手段というのは『盗む』以外にも色々とある。『店』『宝箱』『戦利品』等々だ。
 上記の手段を駆使するだけでも、十分に面白いアイテム収集を実現できるはず。ゲームテンポを阻害しやすい『盗む』を採用するかどうかは、他の要素との兼ね合いを考慮して決めたい。

 もし、採用する場合でも「ボスにはアイテムを設定しない」「ボスからは100%アイテムを盗める」「FFの『ぶんどる』のように攻撃と盗むを共存させる」といった工夫で上述の問題は緩和することができる。

 ※ちなみに、FF9は『ぶんどる』の性能が弱いことも、問題を悪化させている。

限定的なレベルアップボーナス


 特定の装備品やスキルを身に着けるなど限定的な条件でレベルアップすると、普段より多くの能力が上がるシステムのことを指す。一見、プレイヤーにとって嬉しい要素と感じるが、そこに落とし穴がある。

 1.プレイヤーが効率を求めた場合、レベルアップ直前のキャラクターに対して装備の付け替えを行うことが最善手となる。これは面倒な作業になる。

 2.後半に強力なレベルアップボーナス装備が手に入るような設定だった場合、序盤から愛着を持って育てていたキャラよりも、「後半加入のキャラ」及び「前半から低レベルのまま、温存しておいたキャラ」のほうが強くなってしまう。
 間接的に「育てたいキャラを序盤の戦闘に参加させない」など、いびつなプレイを推奨してしまうことになる。
 (例:タクティクスオウガ、ペルソナ2、ヴァルキリープロファイルの装備品、FF6の魔石、FF8のアビリティ、テイルズシリーズの称号など)

 単にレベルアップ時に成長するパラメータを選べるようにしたいならば、そのようなシステムを作ればよい。装備などに依存させる必要はないはず。
(例:メガテンシリーズやDQ8のスキルマスターなど)

快適性や育成面を向上させる装備・スキル


 FF5における移動速度アップの『ダッシュ』、FF6における経験値アップの『グロウエッグ』、移動速度アップの『ダッシューズ』、FFTの『取得JPアップ』など、装備することで快適性や育成面を向上させる装備・スキルを指す。

 とても便利ではあるけれど、それゆえにプレイ効率を考えた場合、優先して付けざるを得ない。そして、これらの装備は戦闘では役に立たないのに枠を占有してしまう。
 結果的に、これはプレイヤーの戦術の幅を狭めてしまう。もしくは、強敵との戦闘時のみ装備を付け替えるといった作業を要求してしまう。

 こういう装備品やスキルは装備欄を占有しない形のシステムを考えるか、最初から一切作らないのも手だ。
 経験値稼ぎの手段を作りたいならば、DQのメタル系モンスターのような物を作るなどの方法もある。
 ※ただし、メタルはメタルで一般モンスターの価値を落とす問題も……。
 また、移動速度は最初から快適なものにしておくことが望ましい。

 類似した問題として、スーパーロボット大戦シリーズにおける精神コマンド『努力』『幸運』がある。
 敵を倒した時の経験値・金が二倍になる効果があるが、プレイ効率を考えた場合、ボスにトドメを刺す際は該当の精神コマンドを持つキャラで行うことが定例作業となってしまう。
 結果的に手順を増やし、プレイの幅を狭めかねない。

ダッシュ機能


 マリオのBダッシュの如くボタンを押しながら移動すると、歩行速度が速くなるという機能。
 アクションならばともかく、ボタンを押す手間が増えるので、RPGでは基本的に不要。やはり、デフォルトで快適な速度で移動できるようにしたい。

 この仕様はSFC中期〜PS中期ぐらいまで、なぜか流行っていたが、FF8がデフォルトでダッシュする仕様を採用した頃から廃れていった。今となっては時代遅れな仕様だと思うが、ツクールVXはこれがデフォのようなので困る。

 なお、ロマサガ2・3では「ダッシュ中に敵にぶつかると陣形が崩れる」という仕様があるが、こういうゲームシステム的な仕掛けがあるなら悪くはない。

速過ぎる移動速度


 では、移動速度は速ければ速いほどよいか――と言うとそうでもない。

 移動速度が速いことは一見快適だが、ここにも落とし穴がある。移動が速過ぎると、画面スクロールが速過ぎて落ち着かないし、風景をよく見てもらえない懸念もある。移動の速さは程々で十分かと思う。
 (具体的にはSFCのDQ3・6、RPGツクール2000の標準速ぐらい。)

 結局のところ、快適かどうかは移動速度とマップの大きさの比率で決まる。
 ならば、最初からマップをほどほどの大きさにしたほうが無難だろう。そのほうが丁寧にマップを作れるし、何より製作時間も短くなる。

 また、歩数で判定を行うランダムエンカウント形式の作品で、移動速度を速くすると、体感エンカウント率も跳ね上がる。これはプレイヤーのストレスになりやすいので注意したい。

 もっとも、アクションRPGなどで、スピード感を出したいなら速い移動速度も選択肢に入ってくるだろう。

セーブ+確率要素によるリセットプレイ


 多くのSRPGでは、味方の攻撃が敵に当たるかどうかは確率に依存する。
 その中でもスパロボシリーズには、戦闘中ならばいつでもセーブできる仕様がある。そのため、攻撃前にセーブを行い、攻撃が敵に当たるまで、ロードを繰り返すというテクニックが存在する。

 また、確率で成否が決まるアイテム合成などの要素が存在するRPGにおいても、成功するまでロードを繰り返すテクニックが存在する。
 (例:アンリミテッドサガ、タクティクオウガ運命の輪)

 これらはかなり面倒な作業となる。
 当然、テンポは悪くなるし緊張感もなくなる。それでも、効率良くゲームを進めようとすると、自然とこの種の『リセットプレイ』に頼ってしまうプレイヤーが多いと思う。
 しかし、こういった作業を楽しいと感じる人はあまり多くないはず。ならば、やはりリセットプレイの乱用を推奨するようなシステムは避けたい。

 ※個人的にリセットプレイを100%否定する気はない。ボスに勝てるまで、試行錯誤しながら、戦闘を繰り返すことは楽しい部分も多い。ただ、上記の例は単なる運頼みに偏りすぎている。

 対処法としては、セーブできるタイミングを限定することが、まず挙げられる。SRPGならば、ターン終了時にセーブできるぐらいが調度良いのではないだろうか。
 アイテム合成ならば、合成自体は必ず成功するようにしておき、確率を絡ませるのは他の場面にすればよい。例えば、ザコ敵を倒した時に確率で合成素材を落とすようにするなど。

 ※逆に戦闘機会が限られる固定敵に対して、確率で落とすレアアイテムを設定するのはリセットプレイを強く推奨してしまうので注意!

まとめ


 往々にして、制作者視点の「〜すれば〜できる」はプレイヤー視点だと「〜しなければ〜できない」になって、不快感を与えてしまう可能性があるので注意したい。
 例えば、FF10のミニゲームを例に挙げれば……

【制作者視点】
「ミニゲームをクリアすれば、最強の武器が手に入る。最強武器が無くともゲーム本編のクリアは十分できるので、ミニゲームが嫌いなプレイヤーにも配慮した」


 と、それなりに理解できる理屈だけど、これがプレイヤー視点になると……

【プレイヤー視点】
「ミニゲームをクリアしなければ、最強の武器が手に入らない。最強武器は欲しいが、ミニゲームは面倒。何となく不愉快だ」


 となったりする。

 このように、プレイヤーは制作者の都合の良いように、物事を解釈してくれるとは限らない。自分がプレイヤー視点に立った場合に「どう動き」「どう感じる」か、ということは常に意識していきたい。

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posted by 砂川赳 at 08:00 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする