タイトル | 機種 | 質量 | 物語 | システム | バランス | 快適性 | 美術 | 音楽 | 平均 | クリア日 |
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ロマンシングサガ ミンストレルソング | PS2 | 90 | 70 | 90 | 100 | 80 | 80 | 100 | 87 | 2005/05頃 |
本作品はSFCで発売された初代ロマンシングサガをPS2にてリメイクしたもの。ストーリーやキャラクターはほぼ同じであるが、グラフィック・システム・音楽・ボイスの追加など、至るところで大きく変更されており、別物と言って良いレベルで変更されている。
質量/物語
SFC時代からの特徴だったフリーシナリオは健在。一度のプレイではやりきれない程、イベントが豊富なのも同じ。追加のイベントもあり、SFCで消化不良だった設定の数々が補完された。特に手に入れられないデスティニーストーンや、シェラハの存在などの謎は大きく解消された。イベントの中には複数周回を前提としたものもあるが、それに耐えうるだけの内容の濃さを持っている。
主人公によっては敵と戦う動機が弱いのは相変わらず。SFC版をプレイしたことが無いプレイヤーならば、何をして良いのかわからない状況に陥ることもあり得る。
例えば、ロマサガ2ならば七英雄を倒すという明確な目標が序盤から最後まであった。しかし、こちらは序盤のイベントとラスボス戦を除けばプレイヤーが必ずこなさなければならないイベントはほとんど存在しない。一応、四天王なるものも存在するが、倒す必要はない。交渉しても良いし、無視することも許される。
元々、個性的なイベントやセリフ回しが多いことで有名な作品。『アイスソード』にまつわるイベントはもはや伝説となっている感がある。今回もこれらの個性的なイベントは表現こそ、多少変わっているが健在だ。
システム
『シンボルエンカウント』『閃き』『連携』といったシリーズの人気を支えてきた要素は健在。ちなみに閃きはロマサガ2、連携はサガフロ1が初出。ロマサガ1の頃には存在しなかったが逆輸入されている。
その他の要素には色々と大きな変更がある。まず、特徴として挙げられるのはBP制による戦闘システム。技の使用にはターン毎に溜まるBPを消費する。BPは次の戦闘に持ち越すことはできないので、MP等とは概念が異なる。「消耗を気にするより、1回1回の戦闘を全力で戦え」というこのシリーズらしいシステムだ。
また、武器にはEP(耐久度)が設定されており、技を使用すると消耗する。後述するクラスの活用や武器の耐久強化によって、消耗を抑えることも可能である。耐久度は基本的に宿屋に泊まると回復するので、どちらかというと、こちらの方がMPの概念に近い。
SFC版ではゲーム開始時に主人公の両親の職業を設定することで、能力が変化するという要素があった。ミンストレルソングでは廃止になった代わりにクラス(職業)という要素が追加されており、開始時に決めることができる。
クラスはそれぞれ『特性』や『スキル』を持っており、例えば『海賊』ならば「素早く行動できる」といった特性がある。また、保有するスキルと同じ種類の武器や魔法を使用すれば消費するEPやLPを抑えることができる。
なお、クラスはイベントを攻略した際に手に入る『ジュエル』を消費することで、変更したりレベルを上げたりすることが可能だ。
もったいないと思ったのは『術合成』のクラス特性。2〜3の術を合成することで、既存の術を強化したり、新たな術を覚えたりできるのだが、『3術合成』が使えるクラスは『ローザリア術法士』だけ。
このクラスは『水術』『魔術』『気術』をスキルとして保有しているのだが『火術』などそれ以外の合成術を使おうとすると、LPの消費が大きく不利になってしまう。せっかく、合成術という要素が存在するのに実用段階で術の種類が限られてしまうのは悲しい。
『マップアビリティ』の追加によって、戦闘面以外での駆引きが行われるようになった。この辺はアンサガにあった要素を万人向けに洗練した印象。『ステルス』や『忍び足』によって、敵シンボルを避ける事ができるのは快適。ただし、宝箱を開けるのに『カギ開け』や『ワナ解除』が必要といった面倒があるのもアンサガに近い。
全体的にかなり複雑な部類だが、荒削り止まりで終わっていたアンサガ辺りと比較すると、各要素がうまく機能している印象。各町にいる『ギユウ軍』によるヘルプもそれなりに充実している。
バランス
ザコ戦・ボス戦共に手応え抜群。凝った戦闘・成長システムに加えて豊富な技・術が存在するためキャラクターを強くする楽しさがある。
SFC版は意外にも、ボス戦の少ないゲームで、むしろザコ戦に苦しまされることが多かった。今回は出番の増えたミニオン、デスティニーストーンを守る守護者など、多くのイベントで手強いボスと戦うことになる。それでいて、SFC版の様にザコ敵に1ターンで全滅させられるような理不尽もほぼ無くなった。
サガにしてはラスボスが弱めなのは少し残念。ラストダンジョン前に難易度が高いイベントがあるので、それをクリアしたプレイヤーのパーティならば、さほど苦戦せずに倒せてしまうはず。(しかし、条件を満たすと超強くなったりするが。)
今までのサガシリーズではイベント中にボスに勝てなくなって、ハマリ状態に陥ることもあったが、宿屋でのみできる『通常セーブ』とどこでもできる『クイックセーブ』を分けたため、その心配も減った。これにより、ボスに勝てなくなっても通常セーブを行った時点までは戻ることができる。
快適性
マップが少し広めで移動に時間が掛かる。マップの切替にかかるロード時間は長めだが、戦闘のロード時間は短め。
戦闘テンポは非常に良い。SFCのロマサガ2,3では、技名の表示にウェイトが掛かっていたが、当作品では技名の表示と同時に攻撃演出が行われるのでスムーズ。技自体の演出も格好良く、かつテンポ良い。戦闘テンポに関して言えばロマサガ2,3を総合的に上回っているかと思う。
SFC版ではゲンナリする程、ザコ敵シンボルがウジャウジャ出たが、今回はさすがに自重されている。それに慣れさえすれば敵は簡単に避けることも可能だ。
こういうゲームシステムが複雑な作品はプレイしていて面倒臭いことが多い。この作品については比較的、そういった面倒臭さは抑えられていることは評価できる。
美術
キャラクターデザインはSFC版から大きく変化。なぜか角の生えた『シフ』、頭が禿げた『ガラハド』など、元の面影がほとんど見られないキャラも。PS2のRPGにしては頭身が低め。個人的にはすぐ慣れたのだが、受け入れられない人もいる模様。
激しい戦闘を処理するためか、戦闘背景はアンサガと比較して非常に簡素。とはいえ、戦闘エフェクトは派手かつテンポ良い。敵味方共に様々な技が飛び交うのは見ていて楽しい。
音楽
作曲者はSFC版と同じく伊藤賢治氏。関戸剛氏も作曲・編曲に参加している。
SFC版と比較して、大きく変化している曲が多い。通常戦闘曲やラスボス曲はイントロしか共通点が無いがこれはこれでカッコいい曲。
戦闘曲は元々ザコ・ボス・ラスボスの3種類しかなかったが、今回大幅に追加されている。特にミニオン戦で流れる『熱情の律動』はなぜかフラメンコ調だったりとハイセンス。
イトケンらしくダンジョン曲のクオリティが高いのも特徴。SFCの面影を残したアレンジの『最終試練』など良曲揃い。
各キャラクターのテーマ曲も多彩だが、中でもグレイのテーマが最もお気に入り。