【RPGレビュー】英雄伝説6 空の軌跡

2012年02月18日

タイトル機種質量物語システムバランス快適性美術音楽平均クリア日
英雄伝説6 空の軌跡PC909070706070100792008年

 本作はFC、SC、3rdの3作品に分かれて販売されていることが特徴。3作品で一作品としてレビューする。

物語


 ストーリーは王道で上質。小さな町から旅立った主人公達が国家規模の大騒動に巻き込まれていく。物語の内容には複数の国家・組織が関わってくるが、舞台となるのは1つの王国に限られる。
 物語としては、FCとSCの二作品で完結。ただし、回収しない伏線も多いので『零の奇跡』など後の続編への展開をうかがわせる。
 ていうか、RPG史上稀に見る凄まじい大風呂敷ぶりで、3作品を掛けてなお、敵組織の全貌が見えない。後のシリーズでもちゃんと伏線回収できるのかと心配になる。

 一般兵などモブキャラとの会話までもが作りこまれているのが作品の特徴。丁寧とも言えるし、反面冗長とも言えなくもない。
 例えば、門番との会話の例。

●このゲームの場合
主人公「すみません。この先の○○○○に行きたいんですけど。
門番「ごめんね。実は××××な事情で通れないんです。
主人公「えっ! そうなんですか?
門番「もし○○○○に行きたいなら、△△△△を通って行くといいですよ。
主人公「△△△△ですね。どうもありがとうございます。

●参考:サガシリーズの場合(これが書きたかっただけ。)
門番「かえれ!

 3rdはなぜか一転ダンジョンRPGになっていて、ストーリー性は薄い。いかにも低予算。
 かといって、その乏しいストーリーを無視すると後の作品へ繋がらないのは困りもの。FC・SCでは必要以上に丁寧な部分が多かったのに、ここで手を抜くなんて……。

システム・バランス


 強化システムであるオーブメントは複雑な作り。まず、このゲームにはクオーツと呼ばれる能力アップなどの効果を持った装備品(複数装備可能)がある。さらにそれは属性値と呼ばれる7属性分の値を持っており、装備したクオーツの属性値の合計が一定になれば魔法が使えるようになるという難解な仕組みである。
 ただクオーツと魔法のどちらも役立つ物、役立たない物の差が極端なため「精神」「HP」「駆動」「行動力」……のように決まりきった組み合わせになりがち。

 クオーツの作成にはセピスという7属性の石が必要となっている。倒す敵によって、手に入るセピスの属性が異なるため、シンボルエンカウントであることを利用して、狙ったセピス・クオーツを手に入れることができる。
 ……とそこだけ見ると優れたシステムの様に思えるけど、イベント進行に伴い必要なクオーツは宝箱などから普通に手に入る。そこがちょっと物足りない。

 ※ごちゃごちゃ言ってますが、発想自体はかなり好きです。筆者も自作品で真似してます。

 また、上級の攻撃魔法を覚えても威力がほとんど変わらない。にも関わらず消費EP(MPに相当)は大幅増加し、詠唱時間は長くなるため、本当にダメージ効率が上がっているか疑問が生じる。確実に意味があるのは効果範囲が広くなる魔法についてのみ。

 回復補助魔法が非常に強力であるため、難易度は低め。というか、敵の攻撃を1回完全に防ぐ複数・全体掛け魔法がほとんどデメリットもなく使えてしまうとか、何たるヌルゲー。
 装備品も適当にやっていればその時点で売っている最強装備が整う。丁寧に誘導されているがゆえに快適だけど、試行錯誤する楽しみも薄れているのは、ゲームバランスの難しいところ……。

快適性


 戦闘テンポはやや遅めでもっさりだけど、致命的なレベルではない。ただなんというか、ぬるいゲームバランスに、心地よいBGMと合わさって、眠たくなってくるのは僕だけ?

 「宝箱モンスター」「ストーリー進行上での敵兵との戦い」などザコ相手の強制戦闘が多め。個人的には、宝箱モンスターはDQ3のピラミッドの人喰い箱のようにプレイヤーをアッと驚かせてこそ価値があると思っているけれど、ちょっと多すぎじゃないかな〜と。

 エンカウント方式はシンボルエンカウントを採用している。ただ、歩行時にパーティメンバー4人全員が常に表示されており、後ろのメンバーに敵が触れた場合でも戦闘になってしまう仕様のため、敵に追跡された場合の回避はシビア。
 もっとも、中盤以降は敵シンボルがこちらを追尾しないようにするクオーツがあるため、問題なくなる。

美術


 グラフィックは独特。美麗3DCGとも2Dドット絵とも異なるので、何となく家庭用ゲーム機のRPGばかりやっている人間にとっては違和感あるかもしれない。
 戦闘演出はそれなりに頑張っているが、やっぱり同時代の有名作品と比べると見劣りするかも。ただ、3rdでは味方・敵合わせて登場キャラクター数が多く、必殺技演出も多彩になる。

音楽


 あまりPCゲームをやらない僕だけど、ファルコム作品の音楽評価の高さは良く耳にするところ。もちろん、この作品も例外ではなし。本作では特に一部ボス戦などで流れる「銀の意志」や3rdのラスボス戦曲の評価が高い。
 あえてケチを付ければ、通常ボス戦曲が地味なのと、ダンジョン曲などに同じモチーフを使いすぎている点。でも、さすがに贅沢言い過ぎかも。

その他


 筆者はPC版でプレイしたが、今はPSPにも移植されている模様。内容に多少の差異もあるようなので、興味がある人はご確認を。
posted by 砂川赳 at 08:00 | RPGレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする