【RPG制作講座】後半のゲームバランス

2018年11月10日

 ゲームバランスを調整するにおいて、特に難しいのはゲーム後半である。序盤からの積み重ねによって、様々な要素が集まるためバランス崩壊が起こりやすいからだ。
 長編であればあるほど要素が積み重なるため、調整も難しくなっていく。
 市販RPGの中にも、序盤〜中盤は面白かったのに、後半は……といわれる作品も珍しくない。

RPGをクリア手前で飽きる現象


 ……というものをご存知でしょうか?

 ググってみれば、クリア前にゲームを飽きてしまう人々の体験談がたくさん見つかる。巷ではゲーム終盤に飽きてしまうのは、定番の現象らしい。

 理由は色々考えられる。「話の先が見えて満足してしまう」といったストーリー面の問題も大きいのももちろん事実だけど、ここでは置いておきます。
 ここで取り上げるのはゲームバランスについて。クリア前に飽きるのは、後半のゲームバランスの調整が難しいことと無関係ではないはず。
 制作者として、この問題にも立ち向かっていきたい。

 とはいえ、これは何度か長編を完成させてみないことには、コツはつかめない。かといって、長編なんて簡単に完成できるわけもないから、経験を積むのも楽じゃない。そこで自分の経験談として注意点をまとめてみた。

ゲーム後半の落とし穴


『ゲーム後半が面白くない』という場合には、いくつかパターンがある。例を挙げてみたい。

回復の充実

 多くのゲームでは、進行するに従って回復手段が充実していく。
 全体回復、蘇生、MP回復などがゆるい制約で使えてしまうと、ちょっとやそっとの攻撃を受けても味方が全滅しなくなる。
 特に敵がしぶとい場合は、ただダラダラした戦闘が続いてしまう傾向も。
 回復手段が充実することで、緊張感がなくなってしまうわけだ。

 これについては既に細かく書いたので、別記事参照。
 →回復魔法の問題点

戦法のパターン化

 ゲームが中盤から後半へと進行する中で、プレイヤーも次第に慣れてくるもの。するとある程度、戦法も固定されていく。

 自分なりの戦法を編み出せるというのは、良いゲームの条件でもあるため、必ずしも悪いとは言えない。けれど、戦い方があまりにも変化に乏しいと、プレイヤーだって飽きてくる。

 中にはゲーム序盤〜中盤から同じ技ばかりを使用するようなゲームも見かける。DQ7の『剣の舞』『怒涛の羊』、あるいはFF5の『みだれうち』なんかが有名なところか。
 やはり、後半に手に入れる魔法や特技は、中盤までのものよりも役立つものにしたい。

 『回復の充実』と重なるけれど、補助や回復についてもパターン化を引き起こしやすい。

  • 毎ターン全体回復をかけておけばOK。
  • とりあえず攻撃力アップの魔法をかけておけばOK。

 こんな感じで、作業的な要素が強くなってきた場合は要注意。
 戦法を固定させないためには、敵のバリエーションを増やすことも重要となる。

  • 状態異常に弱い敵
  • 物理攻撃が強力な敵
  • 数で攻めてくる敵
  • 一体で登場する強敵

 このようにすれば、プレイヤーの取る戦術の幅も広がりやすい。

戦闘演出の長期化

 意外と盲点になりそうなのがこれ。
 大抵のゲームは序盤から後半にかけて、使用する技が派手になっていくもの。その結果、後半は演出の長い技ばかりになりやすい。そうなると「見てるだけ」の時間が長くなってテンポが悪化していく。
 結果、プレイが面倒になってしまいがち。

 そこで、後半の技は短くカッコいいものを意識してみよう。
 FF7以降(リミット技など)にあるような特定条件で使える大技もオススメ。毎回使えるわけではないので、多少演出が長くてもゲームテンポを壊しにくい。「通常技はテンポよく」「大技は少し長く」とメリハリを付けておけば安心。

 ちなみに、昔のドラクエのように通常攻撃が強いゲームはこれに陥りにくい。通常攻撃中心で戦うゲームは、地味で古臭いと思われがちだけど、なかなか侮れない長所だったりする。

テンポ悪化要素の相乗効果

 これこそが『RPGをクリア手前で飽きる現象』の決定的な原因だと、僕は推測している。

 ゲームというのは大抵の場合、序盤〜後半に向かって難易度が上がっていくもの。この難易度上昇への意識が落とし穴になりやすい。
 難易度上昇のための調整は色々と考えられる。『敵の強化』『ボス戦の多用』『ダンジョンの巨大化』『トラップの悪質化』『エンカウント率の増加』などなど……。

 一つ一つでは大した問題ではないかもしれない。実際、「後半のダンジョンがあっさりでは手応えがない」という人は多いと思う。
 しかし、これらが集まると……

  • 後半のダンジョンは一戦闘にかかる時間が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンはボスの数が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンは広さが序盤の二倍
  • 後半のダンジョンは謎解きにかかる時間が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンはエンカウント率が序盤の二倍
  • 後半のダンジョンは全滅率が序盤の二倍

 例えば、序盤のダンジョンについて……

  • 移動 :10分
  • 謎解き:10分
  • ザコ戦:20分
  • ボス戦:10分

 だったのが、後半のダンジョンになると……

  • 移動 :20分
  • 謎解き:20分
  • ザコ戦:160分
  • ボス戦:40分

 というように、気づいてみれば、何倍も面倒なダンジョンになっていたりする。
 これは『全滅によるやり直し』を想定していない時間なので、さらに膨れ上がる可能性もある。
 とりわけザコ戦にかかる時間が、予想以上に増えやすいので気をつけたい。『1戦闘の時間』『ダンジョンの広さ』『エンカウント率』といったほとんど全てに影響を受けるためだ。
 また、これは謎解きの途中にはザコ戦がない前提で書いている。謎解き中にザコが襲ってくるような設計ならば、さらにさらに酷くなるかもしれない。
 序盤のダンジョンは50分でクリアできたのに、後半のダンジョンは4時間かかる。……なんて、プレイヤーもうんざりしてしまうこと請け合い。

面白い後半を実現するには?


 ここまでは『ゲーム後半が面白くなくなる』要因を挙げてみた。それでは、そうならないためにはどうすればよいだろうか。
 いくつか考えてみた。

ゲームテンポを意識する

 後半のゲームテンポが悪化していないか、意識して調整を行う。
 特に戦闘はザコ・ボス共、無闇に長引かせないことを心がける。『短期決戦』を意識するといいかもしれない。

 上に挙げた『テンポ悪化要素の相乗効果』にある通り、色んな要素が戦闘テンポの悪化には関わってくる。
 短期決戦にするためには、回復手段を制限する必要があるし、戦闘アニメの長さも抑える必要がある。
 ボス戦も短期決戦ならば、同じことの繰り返しにもなりにくい。結果的に戦法のパターン化が起こりにくいという利点もある。

 また、ダンジョンの長さやエンカウント率もほどほどにして、戦闘回数が過剰にならないようにしたい。
 どんな名作でも同じことを千回も繰り返せば、いずれ飽きが来るのは避けられない。戦闘回数を抑えれば、それだけ底が知れるのは遅くなる。「同じことを繰り返している」という作業感も大きく軽減される。

 これらは机上の計算だけで予測することは難しいので、作者自身が実際にテストプレイしてみるのが肝心。うんざりなゲームテンポになっていたなら改めよう。
 特に集団での制作の場合、マップ担当や演出担当ががんばりすぎた結果、過剰になってしまうこともある。
「作ったものは使わないともったいない」という気持ちは分かるけれど、削るべきものは削ろう。後半だからといって、何でもかんでも拡大すればよいというものではない。

ラスボス戦を考える

 どんなラストバトルを作りたいかを開発途中から考えてみよう。
 ラストバトルとは、ゲームデザインの結晶とも考えられる。設計がよくできていれば、自然とよくできたラストバトルへと繋がる。

  • ゲームシステムが活かせるラストバトル
  • キャラクターの個性が活かせるラストバトル
  • 物理と魔法の両方が活かせるラストバトル
  • 色んな属性が活かせるラストバトル

 逆に設計が適当で何も考えていないと、ラストバトルに歪みが出やすい。

  • 毎ターン回復魔法を放ちながら、ただ強い攻撃を放つだけのラストバトル
  • 長い演出を延々と見せられるラストバトル
  • 今までのゲームシステムを否定するようなラストバトル
    →例:パーティバトルが基本だったのに、なぜかラストだけタイマン。
    →例:SRPG的な戦闘システムなのに、移動もなく殴り合うだけ。
    →例:アクション戦闘なのに、なぜかラストがシューティング。
    →例:アクション戦闘なのに、なぜかラストが音ゲー。

 大局観のないゲームシステム、その場しのぎのゲームバランスからはまともなラストバトルを生み出すのは難しい。

 そのためにも、大雑把でよいから早い内に理想のラストバトルのイメージを持っておきたい。それこそ、ゲームシステムやキャラクターの能力、登場する魔法・特技を決める段階で、構想を立ててしまってもよいと思う。

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posted by 砂川赳 at 06:22 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする