【RPG制作講座】主人公と仲間の構成

2012年09月29日

 シナリオ面から見た主人公と仲間の構成に付いて考察する。最初は主人公単独で書こうかと思ったけど、自然、仲間と関わってくる部分が非常に多いため、その関わりを中心にまとめてみた。基本的には仲間がある程度喋るタイプの作品を念頭に置いているので、そうでない場合はあまり役に立たないかも。

 RPGらしい冒険感を出すためには、やはり仲間の存在は不可欠。仲間との絆は物語において、当たり前のように使われるテーマである。絆を描くためにも、プレイヤー目線=主人公目線から見て、心地良くて感情移入しやすい『おいしい人間関係』を構築してみよう。

おいしい人間関係の例


活躍する主人公

 プレイヤーは自分=主人公が活躍する物語を期待して、ゲームをプレイするもの。もちろん、主人公には、ちゃんと華を持たせてあげよう。そのための見せ方は様々だが、単純な方法だと『主人公特権』を与える手がある。

 例えば、以下のようなものが挙げられる。

  • 強大な能力。極端な例だと、世界の命運を左右する様な物に。
  • 地位・血縁。国王・王子、伝説の勇者など。
  • 関係性。ヒロインやラスボス等の主要人物と強固な因縁を設定する。

 このように、他のキャラクターでは敵わないような特権を主人公に与えることで、必然的に物語の中心に置き、活躍させる事ができる。特権は最初から持っている場合と、途中で手に入れる場合の二通りがあるので、話に合わせて考えよう。

 とはいえ、こんな安直な方法は嫌だという人もいるかもしれないし、主人公特権に頼らずとも活躍させる事は可能だ。普通の人間が頑張る話を描きたい場合は、強力過ぎる特権は必要ない。ただし、その場合は主人公の影が薄くならないように配慮がより必要となる。

周りから好かれる主人公

 『愛情』『友情』『家族愛』『信頼』など色々考えられるが、周りの仲間が主人公へ対して好意を持っている描写を行う。物語開始時点から、いきなり好意を持たれているよりも、物語を進行させるに伴い、徐々に好意を持たれるという過程を描写した方がより感情移入しやすい。

 時々、主人公の相手となるヒロインを戦闘可能な仲間ではなく外に置く作品(DQ8、ワイルドアームズ2など)があるけれど、基本的には、パーティ内に組み込んだ方がプレイヤーからの好感度は高くなりやすい。そのほうが、イベントでの出番が増えるし、戦闘などのゲーム部分を通じても、プレイヤーがヒロインに対して、愛着を持つ効果が期待できる。
 これはゲームという双方性を持った媒体ならではの効果といえる。ゲーム的には、戦闘メンバーの一枠を占めてしまう問題もあるけれど……。

 また「周りから好かれる」と書いたけれど、主に重要なのは仲間からの好意であって、それ以外の人物については、この限りではない。
 例えば、主人公はわけあって、町の人間から忌み嫌われているが、「それでも、主人公の事を信じ、頼りにしてくれる仲間がいる」というシチュエーションも中々ポイントが高い。もちろん、様々な問題を解決する中で、町人からの信頼を得ていくという王道スタイルも悪くない。

良好な人間関係

 主人公以外の仲間に関しても、同じようにして良好な人間関係を構成させよう。感動的なエンディングを迎えるためにも麗しい仲間関係を築きたい。人間関係の具体的な構成方法に付いては、詳細を後述する。

まずい人間関係の例


主人公が空気

 『活躍する主人公』『周りから好かれる主人公』の正反対。主人公に感情移入していたプレイヤーは、むなしくなること請け合い。特に無口主人公の作品で、仲間同士の会話が多い作品では注意が必要となる。
 これを書いてる当人も若干空気主人公をやらかしている気がしないでもないです。まずってたら反面教師だと思ってください。

ぎこちない人間関係

 序盤〜中盤に、後の展開への布石としてやるのは問題ないと思う。しかし、物語終盤になっても、人間関係がぎこちないのは勘弁。

パーティ内でカップル成立。しかし主人公は一人孤独

 言うまでもなく心理的にかなり嫌な状況。リア充爆発しろ。
 このように仲間同士に強すぎる絆を設定すると、主人公が空気化する懸念も。主人公にも何らかの絆を設定して上げたいところ。

物語当初から成立している相思相愛の恋愛関係

 主人公とヒロイン等の恋愛関係が、物語開始時点で既に成立していた場合の問題点。これは、主人公視点で考えれば「モテモテでいいじゃないか」と思えるかもしれないけど、プレイヤー視点ではそうはいかない。感情移入を妨げる結構な危険性を持っている。

 長い物語を進める中で、主人公とヒロインは仲を深めていくのが正道。その過程を見ることで、プレイヤーは主人公やヒロインに感情移入をしたり、好意を持ったりする。ここの部分の描写は結構難しく、「ヒロインが嫌い」なんて理由で、作品自体が叩かれていることも珍しくない。

 ただでさえ、恋愛関係の描写は扱いが難しいのだが、当初から、主人公とヒロインの関係が成立していた場合は問題がさらに深い。なんせ、大事な部分の過程を無視することになる。当然、プレイヤーは主人公程にはヒロインのことを好きになれない可能性が高くなるし、そのヒロインを好きな主人公に対して、プレイヤーが感情移入することも難しくなる。

 開始時点での主人公とヒロインの関係は、仲が良い幼馴染ぐらいが無難と思う。……そもそも、無理に恋愛を絡めなくてよいけど。

物語当初からのリア充

 同様の理由で、主人公が物語開始時点で既に多くの仲間キャラと親しい、といったリア充的な設定も止したほうがよさげ。やはり、過程を飛ばした人間関係はプレイヤー目線では感情移入し辛い。それに、余りにも最初から数が多いとプレイヤーがキャラを把握するのにも疲れる。兄弟・幼馴染など、最初から仲の良い仲間キャラもいてよいけれど、2〜3人程度で十分だろう。

 余談だけど、RPGの主人公に10〜20代が多いのは、対象プレイヤーの年齢を考慮しているというのも、もちろんあるが、同時に若くて真っさらな人間の方が「感情移入しやすい」「前提情報が少なく導入がスムーズ」という理由が大きいと思う。
 もっとも、30代以降の主人公を全否定するわけでもない。少し表現が難しくなるかもしれないが、人がやらないことをやるのは差別化にもなる。影のある歴戦の剣士が主人公で、物語の進行と共に徐々にその過去が明らかになるといった設定も十分可能だろう。

仲間キャラクターには明確な個性付けを


 仲間キャラクターには明確な個性付けをした上で、それぞれの個性は分散させよう。色々なキャラクターがいた方が物語の幅が広がるし、華が出る。作者にとっても引き出しを増やす効果がある。

 また、性格に特徴の無いキャラクターや、似たような性格のキャラクターが集まると、単純に区別が付きにくい。セリフも各自の口調や一人称(俺、僕、私、あたし……)を分散させた方が、すぐに見分けが付くので読みやすい。小説でもゲームでも、各セリフを誰が発したか解読に時間を要するような作品は苦痛なもの。

 各キャラクターの個性付けは、基本的には『熱血』『冷静』『お転婆』『温厚』『博識』『へたれ』『天然』『寡黙』といった単純な分類で構わない。その上で、性格に深みを出せるかどうかは、作者の腕次第。

 「単純な分類」=「安直なキャラ付け」というわけではないので注意したい。例えば、いくら熱血キャラだからといっても「敵に真正面から突っ込んで、事態を悪化させる」といった行動を学習なく、何度も取られると、さすがにゲンナリしてしまう。ギャグキャラとしてならアリかもしれないけれど……。

 あくまでも人間として、自然な思考や行動をさせることが原則。各キャラが取る言動は「自分ならどうする?」を基準にすればよいと思う。そこから、余りにも掛け離れた言動は、いくら創作上のキャラだからといっても、安易に取らせないほうが無難だろう。

 物語を動かすために、時には強引な行動をさせる必要もあるかもしれないが、そのポイントは絞るようにしよう。例えば序盤、キャラクターの未熟さを表現するために、あえてプレイヤーの反感を買うような言動を取らせる手法もある。
 また、別にプレイヤーに嫌われてもよいキャラクターならば、割りきって、ストーリーの都合に合わせて、好き勝手するのもよいかもしれない。

パーティの人間関係の構成


 具体的に、どのようにパーティの人間関係を構成していくかを考える。大事なのは各キャラクターの役割を分散させて被らないようにする事。二通りの方法を考えてみた。

家族に例えて構成する

 パーティメンバーの年齢がバラバラの場合は、それぞれを家族に当てはめると、バランスの取れた構成になる。主人公とヒロインを中心に見て、各仲間が以下の様なポジションに当てはまる様に構成すると、役割が被り辛くなる。

【主人公】パーティの中心として、皆を主導する。
【ヒロイン】メインヒロイン。パートナーとして、主人公を立てる。
【父】パーティで年長の男性。物語のキーマンとして、パーティを監督する率が高い気がする。
【母】パーティで年長の女性。あんまり出てこない。
【兄】主人公より年上の男性。父に近い役割を果たすこともあれば、親友格だったりする場合も。
【姉】ヒロインより年上の女性。冷静な知恵役だったり、姉御肌だったり。
【弟】主人公より年下の男性。ヤンチャだったり、いじられ役だったり。
【妹】ヒロインより年下の女性。ムードメーカー。割りと美味しいポジション。
【ペット】人外。マスコット。色々と自由に設定できる。

 以上は目安だが、最終的なパーティ人数によっても、構成は変わってくるので柔軟に考えよう。「父と兄」「母と姉」など、役割が被っている箇所は統合しやすい。主人公やヒロイン自身を兄姉弟妹のいずれかに当てはめても構わない。

役割を元に構成する

 次に役割を元にパーティ構成を考えてみる。とりあえずは、下のような感じで分類してみた。分類名の一部は良い言葉がなかったので適当に考えた。家族による構成と併せて、うまくキャラに役割を持たせていこう。

主観者

 プレイヤーの視点となる人物。基本は主人公だがDQ4のように進行に応じて変化する場合も。シャーロック・ホームズにおけるワトスンのように、物語の中心から外れた人物に固定する場合もあるが、性質上RPGには不向き。

目的役

 物語の目的に最も強く関わる人物。主人公あるいはヒロイン。西遊記では三蔵法師に当たる。

主導者

 物語の目的を果たすために、実際にパーティを主導しながら活躍する人物。RPGにおいては、プレイヤーが操作するキャラクター(=主観者)に等しい場合が普通。これは当然、主人公にやって貰わないと困る。『目的役』のヒロインが持つ目的を達成するために、主人公が頑張るという構図は鉄板。

保護者

 直接パーティを主導しないが、主人公を初めとしたパーティメンバーを指導・補佐する役割。基本的に主人公より年上。

感想役

 物事に対して感想を述べる役割。それによって、プレイヤーが話に付いて行きやすいようにする。思ったことを、そのまま口にするような率直なキャラのほうがよいかも。

知恵袋

 問題を整理・解決するために知恵を出す役目。冷静な分析をするタイプもいれば、科学等の技術によって物事を解決するタイプも。『感想役』とのやり取りによって、プレイヤーへ状況を分かりやすく伝えることが多い。

トリックスター

 「故意にイタズラする」「うかつな行動を取る」等して物語を引っ掻き回す。高い行動力で、既存の秩序を破壊し、新たな局面を導き出すという主人公属性的な側面も併せ持つ。

にぎやかし

 物語の進行には関わらないところで、物語・会話を盛り上げる役目を持つ。明るいキャラの見せ場。『いじられ役』等もこれに含んでよいかも。

 一つのキャラクターが複数の役割を持つ場合もあれば、複数のキャラクターが一つの役目を持つ場合もある。ただし、余り多くのキャラで役割が被るのはよくない。
 また、物語が進むに連れて役割が移っていくことも多い。例えば、最初は未熟で『主観者』に過ぎなかった主人公が成長するに伴い『主導者』として、仲間を導くようになる等。

 「うまく役割を与えられなかったキャラ」や「仲の良い相手がいないキャラ」「戦闘で使われないキャラ」は空気になりやすいので注意。特に登場が遅いキャラクターは『役割』『仲の良さ』『戦闘』のどの面でも先行キャラに負けて、不遇になりやすい。

会話システム


 DQ7〜8の『話す』やテイルズオブの『チャット』等、本筋を進めるには必要でない仲間との会話をシステムとして、組み込んでいる作品もある。このようにして、キャラクターの個性を強調する方法もある。一応、知らない人のために説明すると……

話す

 主人公が仲間から話を聞き出すという一対一の会話。無口主人公ならば、選択肢を除いて、仲間からの一方通行の会話となる。無口主人公は『チャット』に参加できないので、必然的にこちらを推奨。

チャット

 複数の仲間同士でのワイワイした会話。パーティ内での関係性・仲の良さなどを強調することができる。

 いずれにせよ、作業量は半端無いので注意。長編RPGでこんなシステムを導入すると、テキスト量は、本編と合わせて、まず確実に小説一冊分(15万字〜)を越えることになる。

まとめ


 漫画などは連載が続く中で、無闇にキャラが増加する傾向がある。結果、存在感のないキャラが増えたり、無理に全員に見せ場を作って、テンポが悪くなるといった状況が見られる。ゲームの場合は連載ではないので、こういった心配はない。全体の構成を考えて必要なメンバーを考えよう。

>RPG制作講座目次に戻る
posted by 砂川赳 at 06:00 | Comment(4) | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. しばしば少女マンガなんかでは「もどかしい関係」を楽しむなどといった傾向もないわけではないですが、やはり徐々に仲良くしていくのが一番無難なのでしょうか。

    増えすぎたキャラはしばしば殺されたり別れを切り出したりして「処理」されるケースも(特にマンガでは)多いように思うのですが、それだと局面の打破は図れる代わりに、それまでそのキャラに愛着を持っていた読者(ゲームならプレイヤー)を裏切ることになり、やはりこれも難しい気がします。
    特に某麻雀(もどき)マンガはひどいもんです、主人公チーム1試合につき大体5人×3チームのキャラが登場して「敗退」という形で「処理」されるわけですから。・・・逆にここまで潔く「処理」してしまうと主人公格以外のキャラはモブ扱いという見方もできなくもないか。

    「まずい例」とはありますが、個人的にはそういったゲームもそこそこ出回ってる気がします。ただ、それでも私が楽しめたのは感情移入とかそういうのを全く考えずに純粋にシステムを楽しめたからなのでしょうか。「空気主人公」「パーティー内でカップル成立」「最初からリア充」といえばFE列火の赤毛・・・イケメンリア充だけで弱いというあの赤毛だと思っています。0戦0勝0敗の伝説の主人公は今となっては良き思い出です。

    「最後までぎくしゃくした人間関係」は個人的にありだと思ってます。ただしバッドエンドルートとしての採用として。・・・尤もバッドエンドシステムを採用すると「どこで失敗したのか?」をプレイヤーに追及させることを強要する、即ちこまめなセーブを要求するためテンポが悪くなりがちなので難しいのですが。

    今回も考えさせられながら読ませていただきました。次回も楽しみに待っています。
    Posted by 中性洗剤 at 2012年10月01日 05:21

  2. >増えすぎたキャラはしばしば殺されたり別れを切り出したり
    殺したり、別れたりしなくとも、DBのピッコロ(ライバル→知恵袋)みたいに、うまく役割をスライドできればいいんですけどね。できないとヤムチャや天津飯状態に・・・。

    >FE列火の赤毛
    封印の剣はクリア。烈火の剣は途中までしかやってないのですが、エリウッドは普通にやればそこそこ使えた様な気がします。肝心の『烈火の剣』が重くて使えないとは聞きますが・・・。物語上、相手のヒロインにも恵まれてますし、前作プレイヤーなら、最初から各人物に愛着補正が掛かるのがおいしいです。むしろ軍師の方がここで言う条件を満たしている気がします。余りに空気過ぎて不満にすらならないレベルですが・・・。

    ちなみに「主人公が空気」「ぎこちない人間関係」とかは主にFF12のイメージです。「実質メインヒロインの王女がパーティの主導者」「メインヒロインのパートナーは別の男性キャラ」「主人公とメインヒロインとは微妙な距離感」「全体的にコミュニケーション不足」という具合に人間関係がアンバランスなゲームでした。
    Posted by 砂川赳 at 2012年10月01日 19:59

  3. 目的型のヒロインって無口型の主人公だとよく見かける気がしますけど、その場合はプレイヤー自身が力を貸したいと思えるくらい魅力的なキャラがいいですねー。
    なんで言うことを聞く必要があるんだ? と冷めちゃったら、ちょっと虚しいですからね。

    喋るタイプの主人公でも、ヒロインにちょっと甘すぎるんじゃないか? なんて思うゲームもありますけど。
    Posted by ロングソード at 2012年10月03日 04:45

  4. >>3
    特に「守られるヒロインタイプ」がその性質上、見せ場もなく、魅力を発揮できないまま進んでしまうパターンが多い気がします。普通は主人公が果たすべき役目まで、ヒロインが持っていくFF12(また出た!)みたいなのもありますが・・・。

    今、自分が作っている作品も、無口主人公ゆえに、ヒロインが話を進行する場面が多いので、気を付けねばです・・・。
    Posted by 砂川赳 at 2012年10月03日 20:21