【RPG制作講座】ラスボスの設定

2012年08月18日

ストーリーを作成するために、できるだけ早い段階で決めておきたい事として『旅立つ理由』と『最終目的』の2つが挙げられる。その内、最終目的は大半の場合、最後の敵・・・つまりラスボスを倒すことに直結する。

今回はそんなラスボスを焦点として、ストーリー制作について考えてみたい。その過程で、既存RPGのラスボスも分析してみた。

ラスボスの役割


ラスボスは最後の壁として、ストーリー的にもゲーム的にも、作品を締める役割を持っている。ラスボスがいないRPGとは『犯人がいない推理小説』のような物であり、盛り上がりを欠くことになる。

ちなみに、筆者は『犯人がいない推理小説』を実際に読んだことがあるが、かなりガックリきた記憶がある。300〜400ページ規模の長編で、自殺と見せかけた他殺・・・と見せかけて、やっぱり自殺というオチだった。動機も宗教じみて意味不明。個人的に、こういう脱力系のオチが許されるのは、短編までだと思う。

ラスボスに必要な要素


まず、必要なのは『主人公と戦う理由』が挙げられる。多くの場合は『世界征服』『人類抹殺』といった大規模な悪事を企んでおり、主人公はそれに立ち向かうという構造になる。同情できる理由がある場合など、ラスボスは必ずしも悪役とは限らないが、それでも、主人公達がその目的を阻止するという点は変わらない。

次に必要となるのは『強大な力』。最後の敵である以上、これまでの敵を越える力を持っているべきだ。ゲームバランス上は今までのボスよりも、パラメータを高く設定するだけで済むが、物語上もその裏付けが無いと説得力を欠いてしまう。
DQ1の竜王の様に、最初から強大な力を持った敵として登場させるなら、特に説明不要だ。そうでない場合は物語の途中で力を得る描写をする必要がある。

ラスボスの登場パターン


既存RPGのラスボスがどうやってシナリオ上に姿を表し、どのようにラスボスとして君臨するのかを、適当にまとめてみた。大抵のRPGのラスボスは以下のいずれかに該当するはず。中には複数のパターンを兼ね備えている場合もある。

なお、例としてDQ、FF、サガの各シリーズ作品を例に挙げてみた。それ以外でも、自分がプレイしたことがある作品がどれに該当するのかを考えてみるのも面白い。

初期型

序盤から強大な敵として示された相手が、そのままラスボスとなるタイプ。どのようにして主人公は強大な敵と立ち向かうのかがポイントとなる。最も単純なパターンだが、濃いストーリーを練る余地も十分にある。例えば、FF7や10ではラスボスの正体や目的について、物語が進む中で徐々に明らかにされていくという構成になっている。

例:DQ1、FF2、FF7、FF10、ロマサガ2

復活型(召喚型)

過去に封印されたはずの魔王や邪神が復活、あるいは召喚されてラスボスに、というパターン。「どういう経緯で復活するか、召喚されるか」がシナリオ上の見せ所。主人公達は阻止しようと努力をするが、結局・・・というパターンが読めてしまうのが難点。そのラスボスは「過去に何をして、誰にどうやって封印されたのか」といった歴史も欲しい。

登場時期が遅いので、インパクトも意外性も無い場合は影が薄くなりがち。

例:DQ2、DQ7、DQ8、FF3、FF5、FFT、ロマサガ1、サガフロ2

大ボス型

倒したボスを裏で操っていた、さらなる大ボスの存在が明かされる。あるいは、「魔王を倒したが、宇宙人が襲って来た」という様に、戦っていた当面の敵とは全く別の第3勢力が現れる場合も。DQ3のようにインパクトのある登場が有効・・・とは言っても、あれは過去作を活用した上での補正&当時だから受けた演出であって、今同じ事をやって、評価を得るのは難しいかも。

登場時期が遅いので、インパクトも意外性も無い場合は影が薄くなりがち、というのは『復活型』と一緒。例に挙げた作品は、伏線も何もなく登場するというパターンが多い。作品の世界・歴史設定に関わる様な遠大な伏線を張ると良いかも。

例:DQ3、DQ5、DQ6、FF4、FF8

黒幕型

「倒したボスを裏で操っていた」というのは『大ボス型』と同じだが、ストーリーの傾向がかなり変わるので、別枠に分類してみた。既存の登場人物が黒幕だったという衝撃的なパターンを指す。特に今まで味方だと思っていたキャラクターが実は・・・というのも定番。

定番と言ったが、意外にもDQやFFには該当が少なく、他の作品を見てもRPGでは珍しかったりする。ミステリ小説的なドンデン返しのセンスが必要だが、インパクトは強いので是非。これは英雄伝説シリーズ辺りが上手だと思う。

例:FF1、サガ1

成り上がり型

序盤から登場するライバル格の敵キャラクターが成り上がって敵の頂点に。『どうやって』成り上がるかがポイント。『黒幕型』とも近いが、こちらは序盤から敵として認識されている所が差異。

FF6のケフカの様に下克上したり、DQ4のデスピサロの様に倒れた大ボスの後を引継いだりする。このタイプのキャラクターは最初から強大な力を持っているわけではなく、大抵は物語の途中に、何らかの方法で力を得る描写がある。

例:DQ4、FF6、FF12

その他

数は少なくなるが、上記以外のパターンも存在する。FF9、サガ2、タクティクスオウガ、ヘラクレスの栄光3など。ただし、ラスボスの印象付けとしては、うまくいっていないかも。例に挙げた4作品とも、ストーリーの評価は高い部類だが、ラスボスのインパクトは弱め。

例えば、タクティクスオウガやヘラクレスの栄光3のラスボスは、物語において主人公が持つ最終目的とは関係性が薄い。別の目的で来たラストダンジョンにて、襲って来たから倒すという流れ。実はヘラクレスの栄光3の場合は、主人公との明確な対立点があるのだが、セリフ回しのせいで、そうは見えない。

ていうか、FF9のラスボスは出現が唐突で意味不明過ぎて、分類できなかった。『復活型(召喚型)』でいいのだろうか・・・。

上記4作品のボスは意外ではあるかもしれないが、それはそれまでのストーリーから乖離していて、プレイヤーに予想が付かないからでもある。意外だからといって、プレイヤーの期待に応えているとも言い難い。やはり、印象に残るラスボスを作りたいならば、上記5パターンの要素を含める方が無難だと思われる。

ラスボス行動パターン


次にそれらラスボスに取ってありがちな行動・展開をまとめてみた。以下は色んな作品で多用される展開だが、それだけにラスボスを印象付ける効果があるとも言える。

悪事

『世界征服』や『人類抹殺』を目指して、様々な行動を繰り広げる。直接的な破壊活動もあれば、政治的な謀略もあったりと様々。組織的に部下へ指示したり、自ら手を汚したりする。これによって、ラスボスが如何に倒すべき相手であるかを強調するわけである。

動機付け

DQの魔王の様に最初から、人類と敵対しているような設定なら、特に深く考えることは無い。それ以外の場合は、ラスボスがラスボスへと至るまでの動機付けを行うイベントを用意する。
例えば、DQ4のデスピサロは当初から、人間に敵対する存在であるが、物語後半のイベントで人間を滅ぼすという動機を強くする。FF7では物語開始地点より前に、そのイベントがあるため、主人公の回想という形で挿入される。

対決(戦闘)

ラスボスが最終的に主人公と対決するのは当たり前だが、ここで言う『対決』とは物語途中での対決イベントのこと。これによって、主人公と敵との因縁を強調する効果がある。

今後の展開をどうしたいか、によって勝敗は変わる。

  • 主人公が敗北する(強制敗北戦闘)ならば、「勝つためにはどうしたらいいのか?」という様に物語を繋げることができる。
  • 主人公が勝つならば、その時点では、まだラスボスとして不足ということ。今後のパワーアップイベントが期待される。

直接対決を後半まで焦らしたいという場合は、部下に戦わせるというパターンも存在する。

強化

ラスボスキャラのパワーアップイベントのこと。『成り上がり型』の様に物語開始時点では十分な力を備えていない敵がラスボスとして昇格を果たすために行われることが多い。『黒幕型』の場合は自らのパワーアップの為、色々と陰謀を巡らしたりすることも。

【パワーアップイベントの例】

  • パワースポットから力を手に入れる。
  • パワーアイテムを手に入れる。
  • 魔法や科学の力で自らを改造する。
  • 他者からエネルギーを吸収する。
  • 神など強大な存在から力を得る。

復活

復活型(召喚型)ラスボスが復活するまでの工程のこと。大抵の場合、ラスボスを復活させるために何らかの条件が課せられており、それを満たすために誰かが頑張ることになる。候補としては『ラスボスの部下』『ラスボスに操られた誰か』『力を失ったラスボス当人』『ラスボスの力を利用しようとする誰か』等である。
DQ8やFF5では、物語上で長い時間を割いて、その様子を描写している。

【復活条件の例】

  • 封印に使用されている『何か』を破壊する。
  • 生贄を捧げる。特定の人物だったり、大量の人間だったり。
  • 『何か』を集める。
  • 依代(人間あるいは物)を見つける。

まとめ


魅力あるラスボスの存在はそれだけで、物語を引き締める効果がある。『悪のカリスマ』を目指すも良し、『悲劇の宿敵』を目指すも良し。どのようなラスボスを目指すかで、ストーリーの方向性も変わってくる。

作品によっては、物語の多くの部分をラスボスに関するイベントで占めることもある。その場合、ラスボスの設定を決定すれば、物語の枠組みも決まってくるというわけだ。ストーリーが思い付かない場合はラスボスを起点に物語を考えてみるのも手だろう。

>RPG制作講座目次に戻る
posted by 砂川赳 at 06:00 | Comment(8) | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

  1.  確かにラスボスの存在は重要な位置を締めてますね。
     ラスボスの無いRPGは、犯人の無い推理小説に等しい……同じRPG開発者として(私の方が駆け出しですが^^;)、その格言は、是が非でも座右の銘にさせて頂きたい次第でございますm(_)m

     ラスボスにも様々な型分けが存在するのですね。
     主人公の設定も重要で、いくつかの型分けが必要ならば、対極の存在であるラスボスも然り……いやはや、感服致しました^^;

     RPGのストーリーが思い浮かばないのであれば、先にラスボスの設定を考えると宜しい、という助言も賢明だと思われます。 私は最近ようやくウディタで作る予定のRPGのストーリーを考案したのですが、これから主人公とラスボスの設定を細部まで煮詰めてみようと思いますv

     貴重な論文を有難うございました、参考にさせて頂きますm(_)m
     例の長編RPGの方にも期待させて頂きますv
    Posted by キャロル・アイスマン at 2012年08月19日 02:44

  2. 初期型と別型は複合させやすいのかもしれません。最初に旅の目的として初期型を伝えさせておいて、別型に持ってゆくケースは十分ありうると思います。
    ほか、特に復活+黒幕の複合はとても多い気がします。

    終わり良ければすべてよしなんて言葉がありますが(実際は終わりが悪ければ全て悪いといった解釈が正しいと思われますが)、ラスボスからストーリーを決めていけば確実に終わりが良くなる方向に持って行けますからに理にかなっていると思います。
    Posted by 中性洗剤 at 2012年08月19日 10:29

  3. >>1
    ラスボスの分類については、同じような事を考えている人もたまに見かけますが、記事として、きちんとまとめたものは見なかったので、自分がやってみました。順序的に世界観とか主人公の設定を先にやるべきな気がしますが、とりあえず思い付いた方から書いていきます。

    >>2
    DQ7やFF13みたいに強い目的が無い状態を、長々と引っ張られるとダレてくるので、序盤から明確な目的があるといいですね。DQ3みたいにスパっと目的の切替ができれば、理想的な感じです。
    Posted by 砂川赳 at 2012年08月19日 22:32

  4. FF9のラスボスも一応主人公たちと因縁はあるものではあると思います。
    FF9のテーマが命であり、死の恐怖に打ち勝つことがストーリーの最終目的となっています。その死の恐怖の象徴としてのラスボスかと思われます。
    あのラスボスがいなければクジャが悪者となってしまいます。
    そういう意味でもストーリーに必要ですね。死の恐怖を克服して生命の素晴らしさを理解する。そのための存在と言うわけです。

    …ただ、「死の恐怖」がラスボスであるといってもあまりに抽象的ですし、さらにそのことについて あまりに作中で説明が無さ過ぎたのが、あの印象の原因でしょうね。
    Posted by at 2013年12月14日 19:03

  5. >>4
    色々と解説を読んで、僕もあのラスボスも作品テーマに沿ったものなんだということは、何となく理解しました。ただやっぱりそれがプレイヤーに伝わるか?それで面白いか?と言われると難しいでしょうね。
    FF9に限らず、小説などでも物語の重要部分を抽象表現でぼかされると読後感がすっきりしないことが多いです。やはり娯楽たるもの分かりやすいほうが好きです。
    Posted by 砂川赳 at 2013年12月15日 09:43

  6. ラスボスの登場パターンについて、もうひとつ型を加えたいと思います。
    それは

    「ミステリー型」

    です。
    つまり、最後の方まで誰がラスボスだか明かされないまま、とりあえず目の前の敵と戦い続けるというパターンです。
    「大ボス型」の偽ラスボスの様な表向きの大目標さえ提示されずに。
    一応敵らしきものは提示されていても、敵の組織体系が不明だったり、そもそも物語当初は組織だっていなかったり、色んな勢力の思惑が錯綜していたりで、本当に倒すべき敵は誰なのかわからないままという事です。
    この場合、宙ぶらりん状態から誰が真の敵かという真実を解き明かしていく過程がストーリーの肝になります。
    で、ラスボスの正体は、全くの新キャラの事もありますが、大抵何度も出ていたキャラの中にいたりします。
    Dante98時代のRPGにはDARK FORCEシリーズを初め結構ありましたし、フリーゲームの金字塔セラフィックブルーもこれに近かったはず。
    拙作「Proof」も一応これです。
    版権のものにはなかなか見当たらないのが難ですが…

    いかがでしょうか。
    Posted by アリヒコット at 2015年07月03日 16:19

  7. [追記]あ、版権ではゼノギアスが該当しますね。
    Posted by アリヒコット at 2015年07月03日 18:44

  8. >>6
    一応、黒幕型がそれに近いものとして書いたつもりだったりします。
    呼称は何にせよ、ミステリー要素はハリーポッターみたいに他ジャンルでも使えますね。
    受け手も大抵、推理小説の読者ほど疑ってこないので、どんでん返しを決めやすいというメリットもありますし、いずれはRPGでもやってみたいところです。
    Posted by 砂川赳 at 2015年07月03日 20:48