【アイデア】CTBとターン制の夢の融合

2017年10月06日

 前回の記事で予告した通り、新しい行動順序システムを閃きました。アイデアだけですが、書くだけ書いてみます。

 参考:戦闘システム@ 行動順序システム

 以前も書きましたが、新しい行動順序システムを作るのは難しいのが現実です。
 そのため、『リアルタイム制』を除いたコマンド式RPGの戦闘システムとしては、『ターン制』『CTB』のどちらかに類するものを使うのが、一般的でした。
 世に出回るフリゲも市販RPGも、大半がこのどちらかを採用している状況です。
 しかしながら、それだけでは戦闘システムの幅は狭まってしまいます。RPGの歴史の中では『プレスターン』などの新しい試みがされてきましたが、もっと色々とあっていいはず。

 そこで『ターン制』と『CTB』のいいとこ取りができないかと考えました。

  • 同時に多人数の行動を決める緊張感あるターン制
  • 素早さの重要性が高いCTB

 このような特徴を融合できないか――というわけです。

 素早さの価値を高めたターン制といえば、ブレスオブファイア3のEXターンが挙げられます。
 これは『素早さが敵平均より二倍高いキャラ』に限り二回行動できるというものです。ただ極端過ぎる嫌いはありますし、逆に条件を満たさない限りはシステムとして空気です。
 あれよりも明確にシステムとして組み込みたいところです。

試案


 ではどうするのか――というと、具体的にはCTBを『何らかの行動回数』で区切って、ターン制のような挙動にします。
 ※CTBの実装については、前回の記事を参照

 まず思いついたのは『戦闘に参加している人数』で区切ることです。

20171006.png

 画像は既存のCTBをいじったイメージです。緑の矢印から上がそのターン内での行動者です。
 味方3人、敵3体なので1ターンの行動回数は全員合わせて6回となります。
 遅い敵はそのターン中は行動できなくなる代わりに、2回行動できる味方が発生します。遅いキャラの出番を速いキャラが奪い取るようなイメージですね。

 これで一応の形ができました。
 ターン制とCTBの特徴を併せ持った行動順序システムが設計できたような気がしないでもありません。

 ……が、問題もありました。
 遅いキャラの行動を速いキャラが乗っ取るという仕様上、遅いキャラが想定以上に足を引っ張ることになります。

 例を挙げると、CTB(4人参加)で以下の順番であった場合……

 A→B→C→AD→B→C→A
 ※アルファベットがキャラクターに該当します。

 新システムでは……

  • 1ターン目:A→B→C→A
  • 2ターン目:D→B→C→A

 という行動ターンになります。
 素早さの低いDの1ターン目が、Aによって奪われていることが分かります。
 Aが敵でB〜Dが味方ならば、1ターン目に2回の攻撃をされてしまうわけです。

  • 1ターン目:A→B→C
  • 2ターン目:A→B→C

 上記のように、Dを除いた3人の戦いならば、2回攻撃は発生しません。下手すれば、鈍足のDを戦闘不能にしておくような戦術が有利になってしまいます。
 遅いキャラが不利なのはCTBの宿命とはいえ、これはやり過ぎでしょう。何だかいびつなシステムに思えてしまいます。

改良案


「1ターンの行動を限定する」という方向性は悪くないように思いますが、どうにもしっくりきません。
 ならば、その条件を変えてはどうでしょうか?
 思いついたのは、『最も速いキャラ』を基準にすることです。
 具体的には『同じキャラ』の順番が2回来たら、その手前でターンを区切ります。
 ※大抵は『最も速いキャラ』が対象になりますが、補助・異常などで複雑に変化することもありえます。そのため『同じキャラの順番が2回』を条件にしたほうが汎用的です。

 A→B→CA→D→B→C

  • 1ターン目:A→B→C
  • 2ターン目:A→D→B→C

 というようにAを基準に区切ります。
 1ターン目だけ最も遅いキャラ――すなわちDが脱落していることが分かるでしょう。
 ターン毎に参加人数が可変になるという点が特徴的ですね。

 他の例も考えてみます。
 A→B→CA→D→B→CA→B→C→D

  • 1ターン目:A→B→C
  • 2ターン目:A→D→B→C
  • 3ターン目:
  • 4ターン目:A→B→C→D

 見ての通り、毎ターン行動するキャラと順序が流動的に変わっていきます。
 順序については、ターン内で再び素早さで並び替えるのもよいかもしれません。かなり雰囲気がターン制に近づくと思います。
 CTBにおけるキャラの連続行動は、そのキャラ単独のターンとなります。この場合では3ターン目のAが該当します。単独ターンではなく、前後のターンと合併して2回行動にするのも面白そうです。

 このルールならば、鈍足のDが大きく足を引っ張ることもないので、不公平感はなさそうですね。

 A→B→CA→D→BA→CA→B→D

  • 1ターン目:A→B→C
  • 2ターン目:A→D→B
  • 3ターン目:A→C
  • 4ターン目:A→B→D

 一つ気になるとすれば、このパターンです。
 2ターン目に『鈍足のD』は動けるのに『Dより速いC』が動けない逆転現象が発生しています。3ターン目も同様で、Bは動けないのに『Bより遅いC』は動ける状況になっています。
 もっとも、場合によっては遅いキャラが有利なのは、ターン制時点からの伝統です。あまり気にする必要はないかもしれませんが。

 ……というわけで、ここに新しい行動順序システムが完成しました。プログラムとして実装したわけではありませんが、ここまで設計できれば十分だと思います。
 特に調べてはいませんが、アイデアとしては自分が初めてのはず。
 というか、CTBだけでもわりと面倒なのに、その上で細工しようと考える人はあまりないと思います。

 命名はカウントターンバトル――にしようかと思いましたが、略称がかぶるので思い留まりました。
 カウントタイムターンバトル――略してCTTBとしておきます。

CTTBまとめ


利点

  • 素早さの価値が高い。
  • ターン制独自の緊張感や戦術性を持ち込める。
  • サガシリーズの連携など、ターン制向きのシステムも使える。
  • ターン毎に状況が流動的に変わっていくので刺激的。
  • 今までにないシステムなので新鮮さがある。
  • それでいて感覚はターン制に近いので馴染みやすい。

 まんま、いいとこ取りですね。まさに夢の融合!

 欠点としては、実装がCTBよりもさらに大変なことです。プログラミングの問題もありますし、ターンの区切りを明確にしたUIも考える必要があります。
 何より、最大の強敵は「別にCTBでよくね?」というツッコミかもしれません。
 ターン制に関しては『素早さ』という明確な差別化ができるので心配いりませんが、問題はCTBを相手にした場合でしょう。
 ターン制的な面白さを持ち込めないなら、わざわざCTBを余計な劣化させただけになりかねません。夢の融合どころか下手すりゃ中途半端の誕生です。

 これを書いた当人も、CTBより面白いかと言われると確信はありません。面白いかどうかは、実際には調理次第といったところでしょう。
 とはいえ、新システムというのはゲームデザイナーのロマンです。機会があれば挑戦してみたいと思います。
 ※絶対にやるとは断言しません。やってみてつまらなかったら意味がないので。

 そんなわけで、ターン制とCTBの両方が好きで、プログラミング技能に自信があるという方は、CTTBに挑戦してみてはいかがでしょうか?
 ※微妙にハードル高くてすみません……。
posted by 砂川赳 at 22:41 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【プログラミング】CTBの実装方法

2017年09月19日

 微妙に需要がありそうなので、経験者としてCTB(カウントタイムバトル)の実装方法を解説してみます。

20140705_1.png

 参考:戦闘システム@ 行動順序システム

 内容はもろにプログラマ向けです。プログラムを組んだり、ツクールで自作システムを組んだりした人以外はピンとこないかもしれませんので、あらかじめお断りしておきます。

 なお、拙作ミスティックスターのCTBは、ツクール2000で実装していますが、アルゴリズム(処理手順)自体は汎用的に使えるはずです。ある程度の自由度がある開発環境ならば、流用可能です。

 作り方はいくつかありますが、まずは最も簡単な『素早さ加算方式』の実装方法から紹介します。

素早さ加算方式


 イメージとしては、FF7〜9のATBを思い浮かべてみれば、分かりやすいと思います。
 ATBゲージが満タンになったキャラが行動できるようになるアレですね。素早いキャラほど、ゲージが溜まる速度が上昇します。あれのリアルタイム性をなくしたものと思って頂ければ。
 ※FF4〜6は仕様が異なるので除外しています。興味がある人は調べてみてください。

  • 素早さ40のキャラ1
  • 素早さ50のキャラ2

 の二人がいた場合を想定すると……

  • キャラ1:40→ 80→120→160→……→ 800
  • キャラ2:50→100→150→200→……→1000

 というように、時間が立つごとに素早さ分だけゲージが増えていきます。
 ゲージ値が1000以上になったキャラがいれば、ターンが回ってきます。この場合はキャラ2の行動ターンが先に来ますね。
 ※もちろん、条件となるゲージ値は1000でも10000でも何でもいいです。ただし、あまり小さすぎると計算誤差が出るので注意です。

 キャラ2の行動が終われば、ゲージ値を−1000します。0にリセットしないのは、1000を超えた値が無駄にならないようにするため。毎回、ピッタリ1000になるわけではありませんので。

  • キャラ1:800→840→880→920→960→1000
  • キャラ2:  0→ 50→100→150→200→ 250

 後はこれの繰り返しです。
 その内に、素早さで勝るキャラ2が連続で行動するターンが発生します。それこそが、CTBの特色です。

 走る速さがバラバラな選手達が、何度もゴールを目指し、到達する度に最初から走り直すようなイメージでしょうか。
 ここで終わるなら、実のところCTBの実装は簡単です。一人ずつキャラの順番を処理すればよいという点では、ターン制よりも容易だと言えます。

 ところが、この『素早さ加算方式』には欠点があります。それは行動順序の予想が難しいことです。
 先程は計算が簡単な例で挙げましたが、これはどうでしょう?

  • 素早さ32のキャラ1 現在のゲージ値は300
  • 素早さ41のキャラ2 現在のゲージ値は150

  • キャラ1:300→332→364→……
  • キャラ2:150→191→232→……

 どちらが先にターンが回るか、即答できる人は少ないはずです。
 これが5人10人と増えていくと、もっと大変になります。
 CTBの実装に挫折する第一の関門はここでしょう。

 そんなわけで、『素早さ加算方式』では行動順序の表示が困難となります。
 そもそも、CTBとはFF10が呼称した方式であり、それに則れば順序表示がないものは厳密にCTBとは言えません。
 真のCTBを実装するためには、行動順序を把握できるような処理を考える必要があります。

WT減算方式


 ではどうするか――というと、もっと計算の簡単な形に変えてしまいます。
 『ゲージが溜まる速度』を比較するのではなく、『ゲージが溜まる時間』を比較すればよいのです。
 これは小学校レベルの知識で十分可能ですが、すんなりと思いつく人は意外と少ないと思います。自分も当初はここで詰まっていて、ある日ふと解決法を思いつきました。

 距離÷速さ=時間

 つまり……

 ゲージの長さ÷ゲージが溜まる速さ=ゲージが溜まる待ち時間(WT)

 となります。

  • 素早さ32のキャラ1: 1000÷32=31WTでゲージ満タン
  • 素早さ41のキャラ2: 1000÷41=24WTでゲージ満タン
  • 素早さ50のキャラ3: 1000÷50=20WTでゲージ満タン

 待ち時間(WT)が0になる度にターンが回ります。行動が終われば、再び元の待ち時間にリセットします。
 ※以降、待ち時間をWTと表記します。

 次の表は下に向かって時間が経過していくイメージです。

  キャラ1 キャラ2 キャラ3
↓ 31   24   20
↓ 11   04   00
↓ 07   00   16
↓ 00   17   09
↓ 22   08   00

 上記のように、各キャラのWTが遷移していきます。
 当然ながら、次に動くのはWTが最も小さなキャラです。どこを切り取っても、次に誰が行動するかは一目瞭然ですね。

 ※実際にCTBを実装する際には、『ゲージの長さ=1000』の部分にはもっと大きな値を設定することを勧めます。やはり小さすぎると計算誤差が出るためです。

 何のことはありません。既にタクティクスオウガなどでやっている手法です。
 タクティクスオウガではターンが回るまでの待ち時間(WT)をキャラが保有しており、レベルが上がる度に減少するようになっています。
 つまり、この方式は従来の素早さ方式をWT方式に変換しているだけとも言えます。

 ※タクティクスオウガのように最初からWTを使う方法でもよいのですが、プレイヤーには分かりにくいのが難点となります。また、ツールによっては実装自体が困難です。なんせ、レベルと共に減少するステータスなんてあまり見ませんので。

 ここで終わりたいところですが、そうはいきません。
 CTBの実装には第二の関門があります。

 今までの方法では、キャラ1とキャラ2のどちらが次に動くかが分かるようになりました。ですが、これではまだ二人の行動回数の差を表現することはできません。

20170919.png

 例:上の画像では、素早いキャラの順番が何度も表示されるようになっています。

  • キャラ1の素早さは25
  • キャラ2の素早さは20

 キャラ1が4回行動する間に、キャラ2は5回行動できる――ということは、何となく予想がつくと思います。
 しかしながら、その行動回数の差を画面上へ表示するにはどうすればよいでしょうか?

 例によって、まずは素早さをWTに変換します。

  • キャラ1:100 ÷ 25 = 4WT
  • キャラ2:100 ÷ 20 = 5WT

 これらが各キャラの基本WTとなります。
 これが減って0になれば行動。
 行動が終われば、またこの値にWTが戻ります。

 試しに、まずは人力で計算してみましょう。

  • 4WT後 → キャラ1のターン

 まずは最も早いキャラ1が動きます。これは簡単ですね。
 次に来るのはキャラ2か、あるいはキャラ1の二回目の行動か?
 人間なら直感的にキャラ2だと判断できますが、コンピュータはそうではありません。

  1. キャラ1の2回目の行動WT8 > キャラ2の1回目の行動WT5
  2. 従って、キャラ2の1回目の行動のほうが早い。

 というように、きちんと比較するよう指示せねばなりません。
 人数が増えてくると、それだけ手間も増えていきます。頭が痛くなるので考えたくもありません。

 もう少し、簡単な方法はないものか。
 というわけで、まずはキャラ1のターンだけを考えてみましょう。 
 10回まで行動順序を表示するシステムならば、10回分の行動を計算します。

  •  4WT後 → キャラ1のターン
  •  8WT後 → キャラ1のターン
  • 12WT後 → キャラ1のターン
  • 16WT後 → キャラ1のターン
  • 20WT後 → キャラ1のターン
  • 24WT後 → キャラ1のターン
  • 28WT後 → キャラ1のターン
  • 32WT後 → キャラ1のターン
  • 36WT後 → キャラ1のターン
  • 40WT後 → キャラ1のターン

 単なる掛け算なので、難しいことは何もありません。

 次にキャラ2がキャラ1のターンにどう割り込めるかを考えていきます。
 キャラ2のターンを同じように求めると……

  •  5WT後 → キャラ2のターン
  • 10WT後 → キャラ2のターン
  • 15WT後 → キャラ2のターン
  • 20WT後 → キャラ2のターン
  • 25WT後 → キャラ2のターン
  • 30WT後 → キャラ2のターン
  • 35WT後 → キャラ2のターン

 ちなみに40WT以降はどうあっても割り込めないので計算不要です。

 ここまでやれば後一歩。
 キャラ1のターンの隙間に、キャラ2のターンを挟んでいきます。
 具体的には、この二つをWT順でソート(並び替え)して合体させればよいでしょう。ソート後は表示に必要な10件までを保持します。

 より正確に書けば、
 『キャラクターID』と『WT』の組を構造体として保持し、『WT』をキーとして昇順でソートを行う。
 という感じになります。

 プログラム経験者以外にはわけわからんことを書いてる感じがしますが、そこはすみません。
 ただソート処理というのは、非常にありふれたものです。どの言語にせよ、ググればやり方はすぐに見つかるので、適当にパクってください。
 ツクールXP以降ではRuby、ツクールMVではJavaScriptなども使えるらしいので、問題ないかと思います。
 なお、ツクール2000でやるのは、それなりに大変でした。なんせ構造体も配列も何もない直接番地指定です。作者的にはもう二度と見たくないスパゲッティです。

 以下がソート結果です。

  •  4WT後 → キャラ1のターン
  •  5WT後 → キャラ2のターン
  •  8WT後 → キャラ1のターン
  • 10WT後 → キャラ2のターン
  • 12WT後 → キャラ1のターン
  • 15WT後 → キャラ2のターン
  • 16WT後 → キャラ1のターン
  • 20WT後 → キャラ1のターン
  • 20WT後 → キャラ2のターン
  • 24WT後 → キャラ1のターン

 ※20WTの時に、二人の行動がかぶっていますが、適当に優先順位をつけてください。普通にソートすれば、番号が若いキャラが優先されるはずです。

 これにて完了です。後はこの順番でキャラのアイコンなり名前なりを画面に出力するだけ。
 キャラ3以降が増えた場合も、同じように合体ソートすればよいだけなので問題ないでしょう。

 以上で解説終わりです。
 次はCTBを改造した新しい行動順序システムを発表したいと考えています。できれば、もう少し一般的に分かる内容で……。
posted by 砂川赳 at 09:47 | RPG制作講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【RPGレビュー】ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて

2017年08月08日


発売元スクウェア・エニックス(公式)
機種PS4
発売日2017/07/29
質量物語システムバランス快適性美術音楽平均クリア日
1009080807010080862017/08/07

 3DS版との同時発売だが、筆者はPS4版でプレイ。ちなみに、前作に当たるオンラインのDQ10は未プレイで書いているので、前提として注意を。

質量/物語


 クエストを全てこなしながら、本編クリアまで66時間。
 さらには裏ボス撃破まで90時間と、シリーズではDQ7以来のプレイ時間だった。サブイベントを全てこなせば、100時間は遊べるかもしれない。マップが広大ということもあるけれど、同系統のDQ8を凌駕する質量がある。
 本編が呆気なく終わったDQ9と比較して、その倍ぐらいの規模はあるかも。正直言って、ここまで作り込んでくるとは思わなかった。

 ストーリーとしては、久々となる主人公が勇者のドラクエ。それも今回は、序盤から主人公が勇者であることが明示されている。この種の設定は何気にファミコンのDQ4以来となる。

 DQ6以降、起伏の控えめなストーリーが続いていた本シリーズだけど、今回は印象の強いイベントが多かった。
 特に仲間達に関わるイベントが充実しており、魅力的な仲間達との冒険を演出してくれている。主人公の頼れる相棒カミュ、それぞれ重要な役割を果たすベロニカとセーニャの姉妹、ちょっとキモいが芯の強いところを見せるシルビア。
 ……などなど、キャラクター性は過去のドラクエのどれよりも高い。王道のドラクエにしては珍しく、先が気になるストーリーになっている。

 ネタバレを徹底的に避けていた甲斐もあって、本編後半の展開には驚かされた。本作ではこの辺りのストーリーが最も強く印象に残った。

 クリア後の裏面も相当な量がある。物語的に大きな伏線回収がなされるため、クリア後も実質的な本編と言えるかもしれない。
 ただし、そこからは急激に水で薄めたような内容になるのが難点。一度クリアしたダンジョンを再度もぐらせるようなものが多く、イベント内容も急に味気なくなる。
 ネタバレになるので詳しく書けないけれど、充実した本編との落差で少しばかり寂しい気分になった。裏面突入時は展開の壮大さもあって、ワクワクしたのだけど……。

 何はともあれ、真エンドの演出はシリーズファンをうならせるものがある。性質上、今回は裏ボスまで倒さない限りストーリーを終えたことにはならない。

システム/バランス/快適性


戦闘

 進化してはいるけれど、いつものドラクエ。昔ながらのコマンド式。
 古臭いという意見もあるけれど、ドラクエはこれでよいと思う。

 例えば、アクション式だと主人公一人しか操作できないことが多い。
 対して、コマンド式は仲間全員へ指示できるため、細かい戦術も可能となる。仲間を操作するために、愛着が湧きやすいことも利点となる。
 また、リアルタイム性がないため、気を抜いて気楽にできることも大きい。作戦を指示してAIに任せるも、自分で操作するも、プレイスタイルは自由。
 そう考えてみれば、古典的でありながら、意外と今の時代に合っているような気もしないでもない。
 ……というように、コマンド式を愛好する側から擁護してみた。

 変わったところでは、コマンド入力と行動がターンでまとめてではなく、一人ずつ実行されるようになった。
 どうやらPS4版だけの仕様らしく、最初はこれにとまどった。
「まさか、CTBか何かになって、ターン制ではなくなったのか?」
 と、疑って検証してみたけれど、やっぱり行動順序はターン制のままだった。
 相変わらず行動順序にランダム性があるため、運が悪いと連続でボスの攻撃を喰らってしまうことも。この辺りのルールは少し分かりにくいと感じた。

 また、ダメージを受けてターンが回ってくると、確率でキャラが『ゾーン』という強化状態になる。
 さらに複数人がゾーン状態になれば『れんけい』が使える。……が、これらはランダム性が高く戦術に組み込みにくい。ボス戦のような過酷な場面で狙って発動するのは至難の業。戦術に組み込めるとしても、かなり終盤になるのではないだろうか。

 今回からは、レベルアップ時にHPMPが全快する仕様になっている。
 また、フィールドやダンジョンの要所にはキャンプ地点があり、そこでも回復が可能になっている。キャンプではセーブなどの施設も使用できるのでとても便利。
 そのため、パーティの消耗は今までのシリーズ作品よりかなりゆるい。ありがたいといえばありがたいけれど、戦闘の度に大技をぶっ放すような大味なプレイになる傾向も。

 DQ8の錬金に代わって今作には『不思議な鍛冶』がある。それで装備を作成できることもあって、お金も不足しにくい。

 それらもあって、序盤〜中盤と難易度は低め。今回はボス戦の経験値が多めなので、レベル上げをせずとも問題なく進めた。
 もっとも、難易度は比較的低いという程度でSFC版DQ3やDQ9よりは難しいはず。
 さらには、本編後半からはボス敵の攻撃が激しくなってくる。三回攻撃や全体状態異常を当たり前に繰り出してくるためなかなか厳しい。特にドラクエの場合、異常を完全に防ぐことは難しいので運ゲーになることも。

 今作の不満点の一つとして、戦闘テンポが挙げられる。
 今時のRPGにしては戦闘がゆったりしていて、DQ8の時代から余り進歩が見られない。

  • 戦闘開始まで7秒。PS3以降のRPGとしてはやや長い。
  • 敵と距離があると、攻撃する度にノロノロと敵へ近づく。
  • 呪文や特技には微妙な溜めのモーションがある。特に『ぶんまわし』のような単純な技にまで、数秒程度の溜めモーションは過剰では?
  • 防御して次ターンが回ってきた時にいちいち「守りをといた」のメッセージ。
  • HP・MP自動回復だと毎ターンメッセージを待たされる。
  • 全体的に、いちいち行動が終わるまで待つのは時代遅れ感が否めない。

 例えば、通常攻撃の速度を比較すると、こんな感じ。

  • SFC版DQ3 :1.5秒
  • PS2版DQ5 :1.0秒
  • PS2版DQ8 :3.0秒
  • PS4版DQ11:2.5秒

 システムは古いままでよいと言ったけれど、ここは頑張って欲しかった。今はグラフィックの綺麗なRPGでも、これよりテンポの優れたものはいくらでもある。
 というか、PS2版DQ5の時点ではテンポ良すぎて気持ち悪いレベルだったのに、なんで退化してるんでしょうか……。

 余談。ここまで検証していて気づいたけれど『フリー移動バトル』モードのほうがテンポが若干早いような気がする……。なぜか「守りをといた」や「HP・MP自動回復」のメッセージが飛ばせるようになった。並行して処理を行うようにプログラムされているせいかもしれない。

 ともあれ、昨今のゲームはあれこれと複雑なシステムを組み込んだ結果、逆に面白さが迷子になっていることが多い印象がある。それと比較すれば、ドラクエの面白さはとても明快。本作ももちろん堅実に楽しめる仕上がりになっている。

 その他ゲームバランスについて細かいこと。

  • メラ・ヒャド系呪文が微妙に弱い。敵の耐性の関係もあってか、単体攻撃のメラゾーマより全体攻撃のイオナズンのほうが期待値が高い気がする。消費MPは大差ないのに……。
  • 敵の強さと経験値が釣り合ってないことが多い。基本的に少数で出現する巨大な強敵より、群れを作るザコを狙ったほうが効率がよい。これは今までのシリーズにもあったことだけど、今回は大型の強敵が多いので特に気になった。
  • 主人公の最強剣技が案外弱く、中盤で覚えられる技にすら負けているのはどうなのか。
  • ボス戦の経験値が多めなのはよいけど、死んでいるキャラは経験値が入らない。控えのキャラのほうがレベルが上がりやすい逆転現象も。

成長システム

 選んだスキルと隣接したスキルが解放されていくパネル形式。
 DQ8のスキルマスターの発展系だが、それよりもスキルの数は豊富。FF10のスフィア板などと似たものになっている。
 例えば、カミュは『片手剣』『短剣』『ブーメラン』『かみわざ』の四通りのスキルがある。

  • 単体攻撃が強力だが、全体攻撃ができない『片手剣』
  • 強力な全体攻撃が可能だが、硬い敵が苦手な『ブーメラン』

 というように選んだスキルによって、成長の方向性が変わってくる。パーティ編成とスキル次第で、DQ8よりもプレイヤーごとの個性を出しやすい。

 スキルは中盤〜後半辺りからリセットも可能。
 DQ8ではやり直しができなかったため、地雷スキルを選ぶと大きく不利になったが、今回はその心配は少ない。リセットにはわずかなお金(G)が取られるだけなのは助かる。

その他

 色々と快適にプレイさせるための工夫がされている。

  • メニューを開いて□ボタンを押すだけで、『ほぼまんたん』で自動的に回復してくれる。
  • 地図画面や仲間との会話で、行き先を逐一教えてくれる。
  • シンボルエンカウントなので敵を避けやすい。
  • メニュー画面の操作が洗練されていて動作も軽快。

 特に『ほぼまんたん』は非常に便利。既存シリーズの『まんたん』よりも賢くやってくれるので、MP消費の心配は薄い。RPGお決まりの回復作業から一気に解放してくれる。

 気になるロード時間だが、これはDQ8の時代より悪化している。ゲーム機は二世代も進化したはずなのに、いまだロード地獄からプレイヤーは解放してもらえないらしい……。

  • マップ切り替えに10〜20秒程度。
  • ルーラに25秒。
  • 空の乗り物へ乗るには25秒、降りるのに十数秒。

 ただし、マップ内へ一度入ってしまえば細かいロードは少ない。少なくとも、民家の出入りだけでロードが発生するようなことはない。数十分の町探索中、一度もロードがないこともあるので、良心的な部類かも。
 ロード回数を軽減するためか、ルーラがダンジョン内でも使用可能になっている。(PS4版限定とか)また、各地のキャンプ地点まで直接ルーラ可能になっているのは便利。

 また、マップは広めだが、DQ8よりは全体的に抑えられている。ただし、移動速度は遅めだし、町の構造は複雑なので、疲れを感じる人は多いと思う。フィールド上では乗り物も使えるのでさして問題ないが、町中はそれなりに大変。
 特に今回はメダル王に当たる施設が微妙に遠い。メダルを渡しに行くのにルーラから合算して、一分もかかったりするのは何とかして欲しかった。

 今作もDQ9から引き続きクエストが存在する。
 内容としては、DQ9のように目立って面倒なものは控えめ。攻略情報なしでも大半はどうにかなった。……が、数点面倒になって攻略に頼った。マップが広いため、捜し物を見落とすとかなり面倒なことになる。
 それ以外だと……

  • 『れんけい』によって特定の敵を倒せ
  • 同じ敵を何度も倒せば登場する転生モンスターを倒せ
  • カジノのルーレットでジャックポットを当てろ

 この三種類は特に面倒だった。いずれも運の要素が絡んでくるため、当たりを引くまで繰り返さなければならない。戦闘関連もテンポがあまりよくないため面倒になってしまう。

 その他、気になった点としては……

  • マップ上で○ボタンで魔物にアタックすると有利になるが、乗り物上からできない。
  • 魔物に対して遠距離から○ボタンを押せば、ボウガンで敵をおびき寄せることができる。……が、これがアタックの誤操作などで頻繁に暴発する。そもそも、ボウガン自体が不要な気がする。
  • 明らかに格下のザコに対しても逃走に失敗する。
  • 船だけは旧来のランダムエンカウント。しかも出現率が高め。

 後はストーリーに関しても書いたけれど、クリア後の密度の低さは如何ともしがたい。
 イベントの密度、ほどほどの敵の強さ、新しい敵とダンジョン……。そういったものが合わさって、ドラクエの面白さは構成されているのだと思う。
 本編に関してはそれらが申し分なく発揮されていた。
 ところが裏面においては……

  • イベントは呆気なく終わる
  • 急激に強くなる敵に苦しめられる
  • 見たことのある敵やダンジョンが再登場する

 というように、どうしてもモチベーションが下がってしまう。
 今回は裏面が明確にストーリーへ組み込まれているため、ストーリー重視のプレイヤーも無視はできない。
 本編と同じような勢いのまま、終われたら理想だったのに――と、個人的には思ってしまった。

美術


 事前情報の段階だと、キャラはパッとしない印象があったのだけど、実際に動いているところを見れば、思った以上に魅力的。ベロニカなんかは、とても表情豊かで細かい顔芸が楽しい。

 大ガラス、フロッガー、リップス、おばけキノコ、ドロル、ももんじゃ、マムーとモンスターのチョイスがなつかしい。
 モンスターズなどの外伝を除けば、単一作品にしか登場しない魔物の再登場が多い。
 2以来の再登場となるスモークなんかは、今の技術で表現したらこうなるんだというのを見せてくれた。
 ドラゴンやクラーゴンなど、旧作では小さなドットだったモンスターが迫力ある姿になったのは嬉しい。

 一説によると、DQ10からの流用が多いらしいけれど、初見の身にとっては大いに感激させられた。
 もっとも、本作オリジナルモンスターは乏しいし、後半は同じ魔物の使い回しが目立つのが難点なのだけど……。

 西洋風、和風、琉球風――と町の種類も様々。
 今時、これよりグラフィックの質が高い作品はいくらでもあるけれど、こちらはバリエーションの豊かさが強み。何より、温かみのあるドラクエ世界を良質なグラフィックで遊べることが嬉しい。
 以前プレイした某洋ゲ―はグラフィックは綺麗なのだけど、雰囲気は暗いし、同じような敵や地形ばかりで飽きてしまった覚えがある。こういうJRPGの強みは今後とも大事にして欲しい。

音楽


 フィールド曲、戦闘曲、町の曲、ダンジョン曲と、無難なすぎやま節といった感じ。強い印象はないのだけど安定している。
 その中では、シルビアのテーマとして流れるパレード曲だけが、悪目立ちしていてちょっとしつこいかもしれない。

 新曲で最もよかったのは、要所で流れるハープ曲。特にセーニャに関わるシーンが印象深い。中盤までは「姉妹の影が薄いほう」という印象だったけど、思ったよりヒロインしていてよかった。

 ただ、今作は音楽の使い回しが多くて、新曲の印象がとにかく薄い。集大成ということもあってか、本作は過去作からの音楽の流用がとても多いのが特徴になっている。
 なつかしさは感じられるし、場面に合っていることが多いのも確か。久しぶりに聞いた人なら感激できることも多いはず。

 そこまではいいのだけど、まさかゲームの要となる箇所までも、過去作の流用ばかりだとは思わなかった。
 一例を挙げれば、本作の船の曲『海図を広げて』は元々DQ4に使われていた曲。DQ9にも使われているので、二作連続で独自の船曲が存在しないことになる。名曲かもしれないけれど、『DQ11の船の曲』が存在しないという事実はもったいない。
 ※ちなみにDQ10はそもそも船がないらしいです。
 流用はこれに留まらず、クリア後はさらに重要な箇所を流用曲に頼ってしまっている。

 ストーリー、システム、グラフィック――と、本作には各方面で過去作を超える意気込みが感じられた。その中で音楽だけが白旗を上げているように思えて仕方なかった。
 DQ8がそうしていたように、せめて、アレンジぐらいはして欲しかったなあ……と、個人的には思った。

総評


 元々、斬新さよりも手堅い造りに定評があるシリーズで、今作はその期待に応えられる出来だと思う。
 作品の雰囲気は、グラフィックや演出力の高さもあってDQ8の正当後継といった印象を受けた。「DQ8は楽しかったけど、DQ9は物足りない」という人には間違いなくオススメできる。
 正直、安定して面白い作品になるだろうとは予想していたけど、それよりもずっと楽しめた。特に本編のストーリーがお気に入りで、今になってドラクエにこれだけ熱中できるとは予想外だった。

 ドラクエの最高傑作論争は3が優勢で、4や5がそれに追随しているのが一般的な評価だろうか。けれど、本作はそれらにも立派に肩を並べられる水準だと思う。
 個人的には『ロードや戦闘テンポの悪さ』『音楽』『クリア後のイベントの薄さ』辺りの不満がなければ、迷いなくシリーズ最高傑作と断言していた。

 話を聞く限り、おまけ要素や快適性では3DS版に軍配が上がるらしい。プレイ時間も3DS版(特に2Dモード)のほうが大幅に減るはず。
 ただPS4版のグラフィックや演出は素晴らしいものがあるので、それだけでもこちらを選んだことに満足できた。
 ……と言いながら、3DS版もやってみたいという気持ちもあったりする。長い作品なので大変かもしれないけれど。
posted by 砂川赳 at 17:04 | RPGレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする